第252話
多くの者を牢屋に送らなければならないと言う状態に、大量の兵士が導入されたりなどされながら、カイ達は詰所で事情聴取を個別で受けた。
全員が事情聴取から解放される頃には外はとっくに暗くなっていた。夜中になったこと、追われていたことからクリミナルは疲れ切って馬車で寝ていた。
「ご協力ありがとうございました。ですが、今からお帰りになられるのですか?襲撃もあったことですし、こんなに暗いんです。泊って行かれては……」
「いえ、確かめることもありますので、あなた達は襲撃者たちの対応をお願いします」
事情聴取が終わり、簡単に指示を飛ばしていたリオが御者席に乗ると、ゆっくりと動き出したため、兵士は敬礼をして詰所に戻って行った。
「皆様お待たせしてしまって申し訳ありません」
「大丈夫ですよ。それより、リオさんは襲撃者達に心当たり無いですか?」
クリミナルが『狼の刺青を彫った者に襲われた』と言った時に、ほんの少しだけだが、表情が変化したことにカイは違和感を感じていた。
「……通常、狼とは群れで動く物です。その刺青を最初に入れた者は私に目を輝かせながら言ってました。「狼は絶対に1匹じゃ冒険者と戦わない。確実に勝てるように仲間と協力して相手を追い込む。賢いよね。それにとってもカッコいい」と」
「生きて行く以上、必ず敵は出来る物。小さい頃からそれが分かっていた彼は、共に戦ってくれる仲間を欲していました。なにがあっても裏切らない、信用できる仲間を」
「まぁ、こんなこと言いつつも、カッコいいと言うのが主な物だと思いますがね。そんな理由があって彼は仲間が出来た時に、信頼の証としてチーム全員に狼の刺青を入れたんです」
「リオさんの話しだと誰が敵の頭か分かってる感じですよね。じゃあ、これで捕まえられるんじゃ……」
「無理です。その刺青を最初に入れた者。それこそがクリミナルですから」
リオが険しい顔になったと言うことは、そんな簡単な話しでは無いと予想ができていたため、全員そこまで驚かなかった。だが、ここで疑問が出来た。
「最初に入れたってことは、たぶん組織のトップはクリミナルですよね。ならなんで狙われて」
「まだ、続きがあるんです」
「クリミナルが作ったのは組織と言う大きな物では無く、少数精鋭のチームでした。彼らの情報収集の能力はとても高く、敵だったらとても恐ろしい物でした。正確性、提供速度、どれを取っても一番でした。そんな彼らを良く思わない者達もいました」
「数年前、クリミナルを残して、そのチームはつぶされたんです。私達が遺体を回収したので間違いありません」
「それからクリミナルの刺青は意味が変わったんです。自分の仕事に巻き込んだから死んだ。自分は『一匹狼』でいなければいけない。いつの間にか右腕の狼は彼にとってそんな戒めとなっていたんです」
重い空気が漂う中、カイが意を決して声を出す。
「ってことは、その右腕の刺青を真似た誰かがクリミナルのことを消そうとしてるってことで良いんですかね?」
「おそらくは。ともかく今は彼を屋敷で保護して色々聞くのが先決です。私も警戒しておりますが、敵がいつ来るか分かりません。お気をつけください」
リオが無言で馬車をより早く走らせ始める。
昼間の襲撃に大量の人員を割いたためか、襲われることは無く屋敷に戻ることが出来た。
翌日、朝食を食べるために集まったカイ達、そこにはオムニの姿あった。
「皆ー、おっはよー!いやー、昨日は大変だったねー」
「主、朝からそのノリはしんどいですよ」
食堂の扉の前にはメイド姿のリオがおり、そのスカートの裾を小さな手で力強く握るクリミナルがいた。軽くしかるリオに対してカイは苦笑いを浮かべる。
リオは中々手を離さないクリミナルに悪戦苦闘しながら椅子に座らせようとする。その時のクリミナルの様子は、カイ達を見て怯えているようだった。
クリミナルを何とか座らせて、全部が座ったことで朝食が運ばれ始める。
朝食が運ばれてくる中、クリミナルの発した次の言葉で部屋が氷ついた。
「ね、ねぇリオさん。この人達……だれ?」
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