第249話
ギルドの裏側まで見せてもらったカイ達は、副ギルドマスターの部屋まで戻って来ていた。
「ざっとこんな感じだな。どうだった?」
「こんなに裏側を見せて良かったんですか?」
「あぁ、問題無い。見せちゃいけん物はしっかり隠してたからな。まぁ、姐さんが連れて来た客人だから最悪見せても悪用はしないだろ?」
言い切ると豪快に笑う副ギルドマスターにカイ達は苦笑いするしかなかった。
「そもそも機密事項は目につく所には保管していませんから見ることはありませんよ」
丁度入って来たリオは先程までの会話を聞いていたのか割って入って来た。
「リオさん!」
「皆さまギルド内はどうでしたか?」
「総本部ってこともあって王国とも帝国とも規模も作りも違いましたね」
「依頼の内容も難しいのが多かったですね」
それぞれの感想を聞いて嬉しそうにするリオは副ギルドマスターの方に向く。
「マスターと色々話してきたから後で聞いといて」
「わかりやした」
「では皆さま、これからは街中をまわってみましょう」
ギルドを出る頃には昼頃になっており、たくさんの人が行きかいしていた。その行きかいしている人達のほとんどが冒険者風の格好をしていたが、中には制服を着ている者もおり、この地区は冒険者ギルドと学園があると聞いていたため学生だと分かった。そして学生たちは全員が同じ方向に向かって歩いていた。
「学園があるって言ってましたけど、結構近くにあるんですか?」
「ありますよ。あの角を曲がれば…」
話しながら曲がって見れば、人より高い壁に囲まれている建物が目に入る。
「あれが学園になります。丁度今から始まる感じの様ですね。行ってもいいんですが、寄ると街の方はまた後日となります。どうなされますか?」
リオの言葉にカイ達は見合ってシャリアに視線を集中させる。カイ達は学園も見てみたいと思っていたが、街中を見たいと言う気持ちの方が勝っていたため、この中で一番学園を見たいと思っているであろう学園長であるシャリアに視線を集中させた。
「何じゃ?」
「皆、団長が1番見たいんじゃないかと思ってるんですよ。学園長ですから」
「そうなのか?私は街を見てみたいの。学園のことも気になるが、生活の方が興味があるの」
「では、街をまわりましょう。人が多いのではぐれないよう気を付けてください」
「丁度昼食ごろなので、ここら辺で有名な店に行きましょう」
「そのお店って特徴あったりしますか?」
「はい。とにかく使ってる食材が新鮮なんです。野菜はもちろんのこと、肉なども。なんでも食用モンスターの肉はギルドに依頼して朝の内に貰っている物だとか」
「でも有名ってことは込むんじゃ…」
「そこは大丈夫です。先程見せたカードを覚えておりますか?」
「あの真っ黒の…」
「はい。皆さまも薄々感じていると思いますが、あのカードはとても特別な物でして、この都市では色々な事に仕えます。冒険者ギルドが良い例です。普通は入れない所に職員無しで歩きまわることが出来ましたよね。それと同じ様に一部の飲食店ではVIPとして扱ってもらうことが出来、普段解放していない席を使うことが出来るのです。万が一の時はそれを使いますのでご心配なく」
リオが話し終わる頃には人混みを抜けたため、全員が横一列に並ぶことが出来た。
「そんなカードがあるんですね。そのカードって他には誰が持ってるんですか?」
「そうですね。オムニはもちろんのこと、中央区の会議場に呼ばれる貴族達が持っています。帝国などでいう所の臣下ですね。大体持ってるのは10人程です」
「そんなに強いカードほいほいと渡せる物じゃない。たくさん無いのは当たり前」
「そうですね。それに、このカードの仕様の有無関係なく、持っている者が悪さをした場合は即刻没収しますから」
「抵抗したら?」
「力づくですね」
他にもカードのことなどを話していると目的地に着いたのだが、少しおかしなことになっていた。
店の前に人だかりができていた。待っているなら列を作る物が入り口で人だかりができていると言うことに違和感を感じたカイ達は駆け足で近づく。
リオを先頭に人混みを割って入ると、店の前には頭を布で抑えている男が人に支えられながら座っていた。その布がだんだんと赤色に染まっていることから血をながしているのだと分かる。
「店主何があったのですか?」
「リオさん…。無銭飲食されてしまいまして。捕まえようとした所で反撃されてこのざまです」
「ちょっと失礼しますね」
フラージュは店主の頭の布をどかすと魔法で癒していく。
傷がふさがると、店主はフラージュにお礼を言ってから立ち上がる。
「今、冒険者の方々に追ってもらってますので直に犯人も捕まりますね。皆さまご心配おかけしました。お詫びとしまして、本日はお代を半額にさせていただきますのでぜひ食べてってください」
並んでいた人達が『半額』と言う言葉に歓声を上げている中で店主はリオに話しかける。
「毎度ありがとうございます。お席ご用意しておりましたのでどうぞどうぞ。ご予約のお客様を2階に通して。私は着替えてから行くから」
「分かりました」
店主のを支えていた女の人がカイ達を店内に言われた通り案内していく。
2階の個室に案内されたカイ達はそれぞれ席に座りリオの方を見る。
「予約なんてしてたんですか?」
「いえ、してませんよ」
「え!?でも」
「先程のはこの部屋に通すのを誤魔化すための物ですよ」
この個室まで案内した女性が、カイ達の前に水を出しながら話しかける。
「大っぴらに特定のお客様を贔屓しているとは言えませんから。リオ様は以前からよく来てくださいますから顔なじみなんです。それにカードをお持ちになられていることは知ってますから、満席の時はここで食べていただいてるんです」
数分後、現れた料理をおいしく食べつくして、食休みをしていたカイ達の所に店主が入ってきた。
「リオさん、いつもありがとうございます。他の方々もお味はどうでしたか?」
「とてもおいしかったです!」
「ここまでおいしいのは中々食べられない」
「それは良かった」
「ところで店主、無銭飲食した犯人は…」
「…まだ捕まったとは。この後、通報しようかと考えてました」
「そうですか」
その後、会計を終えたリオにカイ達は街を案内してもらった。
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