第246話


「うまいよー!おっ、坊主ー食ってくかー?」

「いかがですかー?今なら安くなってますよー!」

「今度はこっち行こう!」

「この後はどうするー?」



 そんな喧騒が大量に聞こえ、賑わっている中にカイ達もいた。

 多くの人が居り通りで、カイ達は魔力感知を使い出来るだけもみくちゃにされないよう人を避けて歩いていた。そして、普通そんな所を通るときは自然と目線は前を向く物だが、カイ達の視線は一様に空を見ていた。それは先程見た空を飛ぶ再度見るためだ。運が良いことにカイ達は全員魔力感知が使える。そのため見ないで人を読めるなど朝飯前だった。


「皆さま、そんなに上を見られては不審者に見られてしまいますよ」


 前にいるリオはカイ達とは違い前だけを見ていた。不思議な事に、後ろにいるカイ達のことを見ないで空を見ていると言うことがバレているのだ。


「初めて見た方は大体同じになりますから。予想できます」


 カイ達が疑問の思っているのも分かっていたのか、独り言の様に言う。


「そこまで気になるようでしたら、まずはあれを見に行きましょうか」


 人混みに紛れながらもカイ達はリオと別れないようにしながら目的地まで進んでいく。




「あれが先程まで皆さまが見ていた空飛ぶ乗り物『フライヤー』でございます」


 そう言ってリオは指さした方向には、今まさに人が降りているフライヤーがあり、降りるのをスタッフが手伝っていた。

 今いる場所の周りにも同じ様に乗り降りする場所があり、待っている人がたくさんいた。


「こちらどうぞー」


 通されたカイ達は少し緊張した面持ちでフライヤーの乗っていく。

 そして、全員が乗り終わるのを確認したスタッフが扉を閉めると、フライヤーはゆっくりと動き出した。


「ところで皆さまはこれがどうやって動いてると思いますか?」


 唐突な質問に外の様子を見ていたカイ達は、視線をリオに集中させる。


「空を飛ぶって考えたらやっぱり風を使って、とかですか?それとも別に魔法道具マジックアイテムがあるとか?」

魔法道具マジックアイテムじゃこんなにたくさん作るのは無理じゃない?」

「確かに。他に飛んでるもんね」


 カイ達が外を見渡してみると、カイ達同様にフライヤーに乗ってい人達がいた。


「でもさ風だけじゃこんな大きいの飛ばせないでしょ。ね、ラウラ?」

「言った通り魔力が足りない。それにこれだけの物を飛ばしたら絶対に下に影響がある。下にいたときに風が吹いてる様には感じなかった」

「じゃあ、魔法道具マジックアイテムかの?」


 フライヤーが飛んでいるのは魔法道具マジックアイテムのおかげだと結論付けたカイ達は再度リオのことを見る。するとリオはとても楽しそうに微笑んでいた。


「残念ですがハズレです。フライヤーは全て風で浮かし、動いているんですよ」


 驚きながらも、魔力量が足らないと出していたラウラが問いかける。


「少し意地悪でしたね。フライヤーなのですが、1日に決まった時間しか動かしてないのです。大体1時間を3回、計3時間動かしているのです」

「そもそも魔力はどこから回収してるの?」

「魔力は国民の皆様から吸収させていただいております。主に聞きましたが、王国に同じ様な技術があったとか」


 それを聞いてカイとフラージュは王国の城の独房に魔力を吸収する物があったことを思い出す。そして一歩間違えれば人が死にかねないほどの魔力を吸える物を使ってることに、カイは不安と危険を覚える。


「国民の皆様には『フライヤーを動かすために』と言って、決まった日、決まった人に魔力を吸収させていただいております。オムニの話しでは、カイ様は魔力を大量に吸収されたと聞きました。それはご自分から魔力を送ったからでは無いですか?」

「そ、そうだと思います」

「それはこちらで使っている物も同じです。そのため、しっかりと管理・監視する者を付けて行っていますのでご安心を」


「実は魔力を吸収しているのはフライヤーのためだけでは無いのですがね」


 軽く付け加えるように言ったため最初は聞き逃していたが、理解するとカイ達は驚いた顔になる。


「先程カイ様に聞いたことから、王国で使われていた物とさほど違いは無いように思われます」

「…つまりこの都市に結界を張ることがいつでもできるってことですか?」

「その通りでございます。そして王国の物と違い、万が一大量に魔力を流されても壊れないよう作られております」


「そして、先程ラウラ様が下で風を感じなかったと仰られましたが、それは風に耐えきれるギリギリの強度の結界が張られているからでございます。強固な結界では無いため魔力もそこまで使わないんです」


 ラウラがさらっと聞いたことにも答えたリオは全員に視線を送っていたが、ふと外を見る。


「丁度、中央の部分ですね。説明いたしますね」


「私達が入って来たのは北側。そして北は先程見ていただいたように商業、主に生活必需品や娯楽などがそろっております。次に東側、こちらは住居になっておりまして、大半の方がそこで暮らしています」

「西側は冒険者達が良くいたり、学園などがあったりします。もしもダンジョンに行く際は西門から出るのをおすすめいたします。他の門よりも近いですから。そして南側、こちらでは家具や武器、作る関係の建物がたくさんありますね。フライヤーの本体を作った所もあります」

「そして最後に、ここからはよく見えませんが、中央部。中央は基本的に北側と同じで食べ物や玩具などの娯楽商品を売っていたりします。ですが特に違うのは他とは比べ物にならないほどの大きな建物があることです」


 カイ達はフライヤーのことを見る中でチラッと見ていたが、他の建物よりも大きく目立つ建物があったのだ。そして今カイ達はその建物の真上にいた。


「色々な事に使われていますが、簡単に言いますと、今後の公国を決めるような会議をしております。大まかにはこんな所ですね」


 その後、外を見ながら気になった物をリオに聞くなどして時間が進んでいった。

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