第245話


 街までそれなりの時間がかかると言うことで、御者をしているリオに街に着いて聞いて行く。


「これから行く街は公国の首都となる街でございます。そのため人口、規模、どちらを取っても最大級の物です」

「それって帝国よりもですか?」

「人口は同じくらいですが、規模に関しては…そうですね。皆様でも驚かれるかと」


 後ろにいるためリオの顔を見ることが出来なかったが、その声色から自信満々なのだとうかがえた。


「そう言えば、昨日の襲撃は街に影響無かったんですか?」


 昨日の襲撃に関してカイ達は詳しい内容を聞いていないが、小規模な襲撃では無かったと思っていた。そのため街にも影響が出たのではないかと考えていた。


「街は被害どころか影響も出ておりません。昨日の襲撃は屋敷を襲うのが目的だったようなので」


 先程までの楽しそうな空気は消えて、少し冷たくなった声でリオが答えて行く。


「彼らの目的は大きく2つでした。1つは屋敷の地下に保管、もしくは封印されてる魔法道具マジックアイテムの回収。もう1つは主であるオムニの命を奪うことでした。オムニが姫の協力者だと言うことは以前から知られておりましたから狙われるのは当然ですが」


 当然のことだと言うリオの声は冷たい物から普段のような声に戻っていた。


「何で魔法道具マジックアイテムを奪うことまで目的だって分かったんですか?」

「それはですね…昨日の魔人が使ったんですよ」

「使った?」

「聞かない方がよろしいですよ。あまり気持ちの良い話ではございませんので。それでもお聞きになりますか?」

「・・・止めておきます」


 全員が背中にゾワゾワとした冷たい物が流れる感覚を感じたため、これ以上話しを聞くのは止めた。


「ともかく昨日のことなどは忘れて今日は楽しんでください。私も全力で案内いたしますので」


 そう言われてカイ達も気分を変えることにした。




「皆さま、そろそろ街に入ります。街に入りましたら、直ぐに降りるのでご準備ください」


 外を覗いてみれば、石で出来た高さ2m程の壁があった。その壁は街を守るため、囲うようにして設置されていた。


「防壁はそこまで高くないんですね」

「緊急の際には結界を張りますのでそこまで高い壁は必要ないのですよ」


 カイ達の前にも馬車に乗っている人がいたり、徒歩で並んでいる人が列を作っていたため、リオは大人しくその列に並ぶ。

 並んでいる中でも街中から楽しそうな声が大量に聞こえてくるため、賑わっているのだと伝わってくる。




 待つこと数分でカイ達は街中に通された。そして、馬車を降りたカイ達は驚き固まってしまった。


「驚きましたでしょうか?」


 楽しそうに話しかけるリオのことなど無視してカイ達は街中の様子を目に焼き付ける。


 大量の人がいるのはもちろんのこと、馬車も大量に行きかいしている。所々では大道芸なような物が行われており、歓声も上がっている。


「これが毎日ですか…?」

「はい。基本的に毎日このように賑わっております。年に一度祭りも開催されますが、その時はこれの比では無いですよ」


 驚きながらも聞くカイにリオは先程以上に楽しそうに話しかける。


 ここまでだったらカイ達も驚くことが無かった。驚いた要因は空にあった。


「…あの浮いてるのは?」

「特定の場所を行きかいする時に使われる乗り物です。空を使いますので、馬車よりも早く行きかいできますよ」


 空を飛んでいる乗り物がいくつかあったのだ。それは1つで最大6人乗れる物になっているようだった


「ここで街を見るのも良いですが、そろそろ行きましょう。もっと驚く物があると思いますよ」


 リオはカイ達のことを見ながら歩き始めた。会話により落ち着きを取り戻し始めていたカイ達はしっかり後に続いて街中に入っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る