第242話


「協力に関しては主が話すはずですが…。一応、私から少しだけ話しますと…」


 カイ達が続きの言葉が気になった所で、リオが立ち上がり扉の方に移る。

 突然の行動にカイ達は警戒し始め、魔力感知で再度周りを確認する。すると部屋に一直線に向かっている反応が1つあった。

 カイ達もゆっくりと立ち上がり武器をいつでも出せるよにしておく。

 だが、次のリオの行動に驚きから固まる。


 何とリオは、何の躊躇いもなく扉を全開まで開けたのだ。そして、開けたところでお辞儀をし始める。


「急にこんなことに巻き込んでごめんねー。いやー、今までずっと来なかったから油断しちゃった」


 何と入って来たのは、この屋敷の主であり、カイ達を正体したオムニだった。




「ふーん。結構奥まで来たんだ。やるねえ」


 今までリオが座っていた椅子にオムニが座り、リオがその後ろに立ってここに来るまでのことを簡潔に話す。

 あまりにも軽い反応にカイ達はどう反応していいか困っていると、オムニに向かって伸びる手があった。その手はリオの物で、顔をよく見れば笑顔なのだが目が笑っておらず、額に青筋が浮かんでいた。そして、その手はオムニの頬をつねる。


「何が「やるねえ」よ。仕方ないとは言え、他人事すぎるわ。ちょっとは危機感を持て」

「ちょ、ちょっとリオちゃん?痛いよ。それに危機感は持ってるって。だからこそ結界を張ってるんでしょ?」

「…はあ~。これは後で話すから。それよりカイ様達にどうして呼んだかそろそろ話しなさいよ」


 突然のやり取りに呆気に取られて固まっているカイ達を見てオムニは苦笑いを浮かべる。そして、リオは先程の笑顔から真顔に戻る。


「実はね、カイ達を呼んだのは、これから起こる魔国との争いに協力してほしいからなんだ」

「そこまでは話しました」


 冷たく言うリオの言葉にオムニは、同意を求めようとしたが、冷たく刺さる視線を感じ黙る。


「…なんで俺達なんですか?オムニさんもリオさんも俺達よりも強いですよね?俺達が参戦しても足を引っ張るだけだと思いますけど」

「それに帝国の我々が協力する義理は無いからの」


 2人の意見に納得いったため全員が頷く。断られたことにオムニは焦ること無くゆっくりいつもの口調で話す。


「正直に話すならカイ達と言うよりは、カイに難だよねー」

「俺…ですか?」

「そ。君の氷炎の力が必要なんだよ」


『氷炎』その単語にカイとラウラが特に警戒し始める。


「姫がラスターは魔力を集めてるって言ってたでしょー?それはね、あいつが持ってる魔法道具マジックアイテムが原因なんだよ。それがね、持ってる魔力と同じ種類の魔法が効かないって物でねえ。ここまで言えば分かるでしょ?」

「ラスターは魔力を集めてる。全種類持ってるだろうから魔法は効かなくなってるかもしれない。だけど、俺の氷炎だったらダメージを与えられる。そう言うことですか」

「そ!正確に言うんだったら、全種類の魔力は持ってる。まぁ、無属性だったら抵抗出来るかもだけど…。俺の無属性魔法は対してダメージに出ないし、他の無属性使いも…、攻撃系はないかなあ」


 少し考える素振りをしたオムニは笑顔になってカイに「魔法が効かない」と言う。


「それだったら魔法には頼んないで、武器で戦うことは出来ないんですか?」

「もちろん武器を使って戦うことも視野に入れてるよ?でもね、あいつ魔人の中で特に強靭な体持ってるから。剣を魔力で覆っても折られちゃうかも」


「それに、これは帝国にとっても悪い話じゃないと思うけどなー?」

「何じゃと?」

「魔国のことがどうにかなったら公国は閉鎖的な体勢を止めようと考えてるから。もしも協力してくれたら、帝国に対して他の国より色々融通することも出来るけど?魔法陣は無理だけど、魔法道具マジックアイテムとか。一応言っておくと、昨日のペンダントは公国で作られた物だよ。魔法道具マジックアイテムはいい例だから出したけど、他にも色々」


 帝国の最先端技術を持ってしても解析できなかった魔法道具マジックアイテムを作った。このことから公国の技術が公国よりも高いことが伺える。そのことを考えれば、協力しべきなのだが。


「うーむ…」

「魔国をほっとけば帝国も無事じゃすまないよ」


 中々においしい話だったが、先程話したラスターのことが本当だとすれば、危険すぎると判断したシャリアは一度回答を出すのを待ってもらおうとしたが、オムニは待たなかった。

 その顔は昨日からずっと笑顔だったオムニの姿はなく、真剣そのものだった。


「リオ、どこまで話した?」

「主が結界を張ったところまで」


「あの結界は近い内に壊れる。僕も詳しい時期は分からないけど、最大1年位しかもう持たない」

「1回張ったならもう1度」

「あの結界は僕が代償を払ってまで張った物だから無理。いくら人を呼んで魔力を集めても再現することがもうできない。仮に晴れたとしたら、また数百年、魔人と人間が共生することが出来なくなる。その間にラスターはより力を付けて完璧に手を付けられなくなる。そうなれば人間は一人残らず根絶やしにされちゃうよ」


 代償がどのくらいの物か分からないが、真剣な顔からはそれが嘘ではないと伝わってくる。


「それに、カイみたいな氷炎がいなければラスターは倒せないから。カイがいるが最初で最後のチャンスなんだよ」


 オムニから伝わる熱意に全員が黙ってしまう。


「魔力を混ぜれば…。カイの他に魔力が混ざった人を作れば…!」


 ミカが必死に声を出すが、オムニはゆっくりと首を横に振る。


「それは正直キツイ話だよ。今から2属性持ちをつれてくるのはもちろん、体に馴染ませるのも時間が足らない」

「体に、馴染む?」

「カイは最初、普通炎と氷しか使えなかったでしょ?あれは体が魔力に馴染むために起きた現象なんだよ。まあ、混ぜてから2年位で馴染んでたと思うけど、魔法を使わなかったから氷炎を出すのに時間がかかったんだろうね」

「馴染むのに2年は他の者も同じなのかの?」

「多少誤差があれど、そのくらい。僕たちの方で混ぜることが出来ればよかったんだけどねー」


 魔法文化が進んでおり、自分達以上に強いオムニとリオに、混ぜることが出来ないと言うのが信じられなかったラウラが再度確かめるように聞いたが、答えは変わらなかった。


「…僕達としては協力してほしい。けど無理は言わない。じっくり考えてから返答してよ。じゃあ、僕は他に敵が侵入してないか確かめてくるよ」


 オムニは入っていた紅茶を一気に飲み干すと、部屋から出て行った。

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