2章 コンタムの発展した街
第243話
部屋を出たオムニは、最大限まで感知範囲を広げある部屋に向かっていた。
そして屋敷内に異常が無いと知ると壁に手を付ける。手を当てた所から透明のガラスのような物が現れ広がっていく。そして、徐々にヒビが入って良き、最後には割れて散る。普通のガラスならば地面に破片が残るが、地面にガラスのような物が落ちたとたんそれは消える。それは先程のガラスのような物が魔法で作られたと言うことを物語っていた。
魔法が壊れると、オムニの手を中心に人が1人入れるくらいの大きさの扉が現れる。オムニは躊躇いなく扉を開けて入っていくと、扉は無くなり壁は元通りの壁に戻る。
入った部屋は暗く、真ん中に大きな水晶と椅子が置いてあるだけだった。
オムニが椅子を軽く引いて座ると、水晶から光が出て空中に板のような物を作る。そこにはオムニと同じ様に椅子に座る姫が映っていた。
「今は起きてるんだ」
「相変わらず猫被ってるねー。カイ達にはいつもの態度で良いんじゃない?」
「…そんなことより、攻められたって聞いたけど、大丈夫なの?」
「メイド達がしっかり対処してくれたからね。それにリオもいるし」
水晶によって通信している2人は雑談もそこまでに、お互いの近況を話し始めた。
「所でそっちも大丈夫なのー?急に切っちゃってさ」
「大丈夫に決まってるでしょ。近くに寄られただけ。気づかれては無かった。まだ地下に隠れてるとは思ってないみたい。アンタの言った通りね。逆にちょっとつまらないわ」
心底つまらなそうに言う姫に、オムニはため息をつく。その様子にオムニは軽く呆れたような顔を浮かべる。
「それよりカイさん達は手伝ってくれるの?やっぱり無理だったでしょ。こっちには関係ないのに」
「関係ないとは言い切れないでしょ?カイの魔力がラスターにバレたら厄介だよ」
「厄介って…。バレたら終わりでしょ。ラスターは血眼になってカイさんのこと追うよ。取られでもしたら…。あー、考えたくない」
背もたれに深く寄りかかった姫は天井の方に視線を送る。オムニも厄介な事になると分かってるのか、ひざ掛けに膝を置き、頬杖をつく。
「俺が戦えれば良いんだけどねー」
「出来ないこと言っても仕方ないでしょ。…カイさん達が手伝ってくれることになったらどうするの?彼らはこっちで活動出来ないでしょ。こっちの空気は言うなれば毒よ?」
天井に向けてた視線を画面越しのオムニに真っすぐ向けて、真剣な顔で見つめてくる。その視線を受けてオムニも頬杖をつくのを溜める。
「それはこっちで対策済み。少し時間かかるけどどうにか出来る。ただぁ…」
「ただ?」
「それすると俺が当分起きれないと思うんだよねー。まぁ戦えない俺が寝てても問題無いと思うけど」
「…そう。あ、サーバが来たから切るわ。今度また話し合うわよ」
「そっか。じゃあねー」
今まで姫が映っていた光の板によって部屋が明るくなっていたが、それがなくなったため部屋が真っ暗になる。そんな中でもオムニは椅子に座ったまま動かない。
「お疲れね。戦った私の方がつかれてるのになあ~」
「…カイ達はどうしたの、リオ」
オムニがしばらく目を瞑ってゆっくりしていると、扉が開けられリオが入ってくる。リオは扉が閉まったのを確認すると、オムニの横に椅子を持ってきて座る。
「安全確認できたから部屋に戻って貰った。それと被害は屋敷にはほとんど無かった。庭が結構荒らされたって言ってた」
「了解。後でどうにか出来るようにする。それより、仮にも僕は主だよ?もっと敬ってよ」
「なら、敬ってもらえるような態度を取ることね」
袋から水筒を取り出すとリオはゆっくり飲み込む。オムニは姫と会話を終えてからずっと目を閉じている。
「カイ様達、だいぶ悩んでたよ。かなり意地悪に言ったねえ」
「仕方ないでしょ。これ以上力を付けられると誰も手を付けられなくなる。僕もリオも手伝いは出来るけど、あんまり戦うわけにはいかないんだから」
「それ破って戦い続けた人が何言ってるんだか」
リオのひと言に、オムニは顔は歪ませなかったが、図星をつかれたのか何も言えない雰囲気を出していた。
「…あれ以上戦ってたら人間が滅んでた。僕は止めたこと後悔してないよ」
「代償に『1日のほとんど寝てないといけない』なんてね。まだ軽い代償で良かったね」
「ホントそれね。さて、眠くなってきたし、寝ようかなあ」
だんだんとオムニの声が眠そうな物に変わっていく。
「カイ達を街中に案内しといて。あと1月は持つはずだから」
「了解」
言い終わるとオムニは完全に眠ってしまった。寝たオムニを椅子からいつの間にか出したベッドに横にすると、リオは持って来た椅子を片付けて謎の部屋から出て行った。
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