第240話



 カイ達は警戒しながらも、先程の戦闘で話していたことの詳細を聞くことにした。

 避難中だったのだが、破壊音や爆音は鳴りを潜めたこと。また、魔力感知の範囲には誰もいないことを含め、少し警戒しているだけで大丈夫だった。それが分かっているからか、リオも素直に話し始めた。


「先程の話しは公国にのみ伝わる伝承でございます」

「なんで公国だけに…」

「それは、最初に魔人になった人達が公国出身の者達だったからですよ。そして、その者達こそ、昨日、皆さまがお会いになられた姫様の先祖に当たる方だからでございます」


 薄々感じていた予感が、確信に変わったことでカイ達は納得する。


「ラウラ様とシャリア様はご存じでしょうが、昔は王国が魔法文化の最先端を行っておりました」


 信じられないと言うような顔をするカイとミカとフラージュを置いて、リオは少しだけ今までよりも楽しそうに話し出す。


「現状を見ればありえないことですよね。要因としては数々のことがあげられますが、大きく2つのことが要因だと私は聞いております」


「1つは王家が庶民にその技術を教えず、近衛兵など自分の手元にいる者だけにその技術を教えた。そして、研究者がその技術を使い魔法道具マジックアイテムを量産。それを庶民に与えていたのです。もちろん例外はありました。ラウラ様の様に魔法に特化した魔法使いもいました。ですが、過去に起きた内戦で、ほとんどの魔法道具マジックアイテムを、多くの魔法使いを亡くしました」


 当時のことを思い出したラウラとシャリアは苦い顔になるが、言っていることが正しいため何も言わない。

 そして次に、リオからは信じられない言葉が出て来た。


「もう1つは、つい最近ようやく私達も調べ切ることが出来たのですが、魔人が王国に潜入していたのですよ」


 そんな昔から魔人が王国に潜入していたのかと、カイ達は驚きを露わにする。


「カイ様、ミカ様、フラージュ様はお会いに、ラウラ様とシャリア様はお聞きになられたこともあると思います。名前は確か…」


 歩きながらもなんとか思い出そうとするリオは顎に手を当てる。

 しばらく考えて、思い出したのか顎から手を離す。


「ウォッシュと言いましたか?その者が関わってきます」

「待ってください!?あいつは魔人のはずが…」

「そうです。あれは、人間と魔人を融合させると言う実験の完成形でございます。もうお気づきでしょうが、ウォッシュと融合するために使われた魔人が重要なのですよ」


 カイの声にしっかりと返答してから話すリオは、1つの部屋の前で立ち止まる。


「話しの途中ですが、着きましたので、この中にお入りください」


 リオが大きく、頑丈で重そうな扉を開けると、そこには椅子と円卓が数個。そして、部屋の隅には木箱が多く置かれていた。

 カイ達が部屋に入ると、以前ラウラの家に張られている結界を通った時と同様の感覚を感じる。そして、全員が入ったことを確認したリオは自分も部屋に入り、扉を閉める。


「おかけになられてください。この中であれば安全ですし、いざとなれば逃げることも出来ますので。今は先程の話しの続きをしましょう」


 リオは隅に置いてある木箱を漁ると、そこには紅茶が入っていたのか、入れる準備をし始める。


「皆さまは、ウォッシュと言われた男が持っていた能力を覚えておられますか?」

「…洗脳ですよね?忘れませんよ」


 リオは合っていたんとばかりにカイに向けて頷く。


「元をたどれば、その能力は魔人の物でした。融合によって使えるようになったのですね」


「ですが、この能力には欠点があります。人々には知らない所で洗脳に対しての『抵抗』と言う物があるのです。そのため、人それぞれで効きやすい、効きづらいがある用です。主にそれは魔力が関係していると考えられていますが…実際の所は分かっていません」


「また、洗脳をかける方にもデメリットがあり、何度も何度も連続して使える物ではないと考えられています。それこそ連続で使う用でしたら命の危険があるとか。魔人の洗脳使いは、王国と言う国をつぶすため、『無理な洗脳を使い死んだ』そのような見解が出ていますから」


 不図ここで疑問が浮かんだラウラは話し腰を折って話しかける。


「何でそんなに詳しい?いくら調査出来たとしても、かなり昔のことを知るのは困難。それこそ敵の本拠地にいないと…」

「ラウラ様の仰る通りでございます。私達の中に現在、魔国の中枢部に潜入している物がおります。こちらもただ手をこまねているわけではございません」


 紅茶が準備できたリオは全員の前に出すと、自分も椅子に座る。


「近々、私達は姫様達と協力して魔国を取り戻すと考えておりますから」

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