第236話


 カイ達が瞬きをした瞬間に、周りの景色は外からどこかの室内になっており、人数分の椅子と長机があった。室内を軽く見渡してみれば、椅子と長机には小さくだが、確かに高そうな装飾が施されている上に、部屋の壁には高そうな絵などがかけられていた。


「はい、到着。座って良いよー」


 オムニは軽く言うと、複数椅子が置いてある方とは向かう合うように1つだけ置いてあった椅子に座る。カイを真ん中にしてい、言われた通り大人しく座ると、部屋にカートを押して入って来たメイドが紅茶をそれぞれに出して下がっていく。


「さっそくだけど、姫から渡されたペンダントはある?」


 カイを呼んだのも、そのペンダントがあったからだと知っていたカイはペンダントを取り出すが、オムニにすぐには渡さなかった。


「これを持って来れば魔国、魔人について話してくれると言ってました。本当に話してくれるんですか?人間のあなたが」


 ペンダントに行っていたオムニの視線がカイの目に移り変わり、真っすぐ青色の目で真顔で見つめると、不意に笑顔になって話し出す。


「僕からは魔人についてしか話せないよ。魔国のことは知ってるけど、少ししか知らないから。だからそのペンダントなんだよ。貸してみて」


 カイはゆっくりペンダントを前に出すと、オムニはペンダントを掴んで、お得意の魔法陣が書かれた紙を取り出す。その紙を机に置いてから、上にペンダントをのせる。


「解析とかしても何も分からなかったでしょ?これには情報が漏洩しないように強固なロックがかけられてるから。だけど、そんな物も僕にかかれば簡単に壊せる」


 オムニが魔力を流すと、ペンダントからホログラム化した状態の、以前あった姫と呼ばれる魔人がいた。


「ようやくつながりましたね。オムニ、また寝てたのかしら?あなたが帝国に行けばすぐに通信できたでしょう」

「すみませんでしたね。寝てたんですよ」

「またですか…。仕方無いわね」


 姫のホログラムはオムニと話して、大きくため息をつくと、今度はカイの方を見る。


「オムニの所に来たと言うことは私達のことを知ろうと思った。そう認識してよろしいですね」


 姫の問いかけにカイは黙って頷くと、姫の顔がやや軟らかい物になる。


「今、魔国は2つの勢力に分かれてます。片方は人間を滅ぼし、世界を支配すると考えている者達。そして残り1つが人間達と共存し、共に生きて行くと考えた者達です」


 予想外のことにカイ達は驚くが、黙って話しを聞き続ける。


「以前までは、魔国も人間には干渉しない。関りを持たないと考えていたのですが。その考えは魔国と人間国の間に結界が存在しているからでした。その結界は、遠い昔人間と魔人が争った時に世界が壊れるのを危惧した神が作ったと言い伝えられています。ですが、その結界も数百年前から弱まっております。最初は通るのもやっとだった結界は今では、時間制限があるとは言え、簡単に通ることが出来ます」

「待ってください。時間制限があるって言いましたが、王国まで行ける程の時間なんですか?」


『時間制限』という部分に疑問を持ったフラージュが声をかける。そのことはミカやラウラも疑問に思っており、返答は姫から返ってくると思ったがオムニから返って来た。


「そこは僕のおかげだね。僕が王国まで送ったんだよ」

「なら早くカイと会えたんじゃ…」

「まだ会うときじゃなかったんだよ。カイの存在を知られるわけにもいかないと思ってたから。それに眠かったし」

「貴方の場合は眠かったが原因ですよね?寝ていた貴方を起こすのは苦労したわ…」


 また始めの様にため息をつくと、姫は再度話し出す。


「ともかく、私達が結界の外に出て活動が出来るのはオムニのおかげですが、私達の敵、人間を滅ぼそうと考えている彼らが何故活動出来ているのか、それは現在調査中です」


「彼らの話しが出ましたので、彼らの話しをしましょうか。彼らのボスの名前はラスター。今、魔国は彼が支配しております」

「あなたが姫では無いんですか」

「…私は前王の娘です。私の力が及ばないばっかりに魔国は支配されてしましました。今は数少ない同士と共に隠れております。そして、私達の協力者こそ」

「この僕ってことだねー」


 ふざけた様子で言うオムニに毒気を抜かれながらも、全員が姫の続きの言葉を待つ。


「っ!これ以上は魔力が持ちそうにありませんね。他に聞きたいことがあればオムニに聞いてください。私以上に博識ですから、たいていのことは知っているでしょう。最後に、カイでしたか?貴方の存在がラスターに知られれば、戦うことになるでしょう。彼は魔法道具マジックアイテムを使い魔力を集めています。唯一無二の魔力を持つ貴方を見逃すとは思えません。用心してくださいね」


 そう言うとホログラムは何も無かったかのように霧散する。そして残ったペンダントをオムニが回収する。


「姫はあんなこと言っていたけど、基本的にもう話すことって無いんだよね~」


 回収したペンダントをいじりながら話す彼は本当に話すことは無いのか、ひとしきりいじり終わると手を叩く。するとすぐにメイドが入ってくる。


「聞きたいことがあるかもだけど、今日はもう休もう!案内して」

「はい!お部屋をご用意いたしました!こちらへ!」


 元気に話すメイドに案内される形でカイ達は部屋から出て、部屋に向かった。

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