第235話
突然の歓迎と、紹介に驚いている中でオムニはそんなカイ達を無視して話し続ける。
「まずは、これをどうにかしないとね」
先程使った袋をまた取り出すと、少年は1枚の紙を取り出して地面に置く。その紙には魔法陣が刻み込まれており、その紙に魔力を通しだすと白色に輝きだす。あまりの眩しさにカイ達が目を瞑り、光が収まって目を開けてみると、そこにはメイド服を来た、少年と同じ白髪の女性がいた。
「鎮火させて。あと救助もね。あと少しで兵士とか来るみたいだから瓦礫退かすだけでいいよ」
「わかったわ。にしても酷いわね。あなたがいてこんなになるなんて。また寝てたんじゃないでしょうね?」
メイドの言ったことが図星だったのか、少年は空笑いをしてなんとかやり過ごそうとする。いつものことなのかメイドは小さくため息をついてから大きく跳躍していなくなる。
「じゃあ、さっそく公国に行こうか」
「待つんじゃ。私が助けると言った者がおる。その者を置いて行くことは出来ん。私達は私達で行くからお主は先に戻ると良いじゃろ」
先程の魔法陣のこともあり、シャリアはとても警戒していた。あれは確実に転移系の物で、それが魔法陣1つで出来るなど警戒するなと言うのが無理だった。もしもこれが複製されてしまえば闇討ちなどやりたい放題になってしまう。シャリアはそのことを危惧していた。
「そっか~…。じゃあ先にその人を助けに行こう。バラバラに行くなんて面倒でしかないから」
そう言うとオムニは救助者がどこにいるのか知らないと言うのに、先程シャリアが話した女性の元へと正確に歩き出す。
「…なんでそっちにいると分かっとるんじゃ」
「感知してたから」
その言葉で納得したため全員がオムニについて行く形で歩き出した。
「そこにいるの?さっき話しかけたシャリアじゃ」
全員で移動している中で、民家を燃やしていた火はどんどんなくなってきており、先程のメイドが鎮火しているのだとリ理解している中で、急にシャリアが瓦礫に向かって話し始めた。
「は、はい。ど、どうでしたか?」
しっかりと返事が返って来たことに安心しながら、何も無かったことを伝え、女性の負担にならないように瓦礫を撤去していく。
出ていた女性は外の惨状に驚いていたが、お礼を言ってから立ち上がろうとしたが出来なかった。知らない内に足を怪我していたのだ。フラージュが近づいて直そうとした所で先に少年が近づく。
「ちょっとごめんね」
また、少年が袋から魔法陣が書かれた紙を取り出すと、今度は地面ではなく女性の傷跡に直で張り、魔力を流していく。流し終えて紙を剥がしてみると傷跡が綺麗に治っていた。この間僅か5秒程だった。
「な!?」
「これで大丈夫でしょ?町の入り口に兵士が来るみたいだよ。行ってきな」
「は、はい。ありがとうございました」
女性は地面に転がっている瓦礫などに気を付けながら町の入り口に向かって走っていく。
「…転移も治療も、そんなことが出来る魔法陣を私達は知らない。貴方何者なの」
「この世界に魔法陣って物を劣化させて広めた人。それ以上でも以下でもないよ」
「…嘘。それなら数百、下手たら数千年前から生きてることになる。そんな人いるはずが…」
あまりに変な事言ったため、ラウラが否定する。だが、自分達が数百年生きていると言う事実もあるため完璧には否定できなかった。
「それがいるんだよ。貴方達と一緒だよ。ラウラさん、シャリアさん」
その言葉が耳に聞こえた瞬間に、ラウラは杖を向け、シャリアの拳がオムニの顔面に当たる寸前で止められる。
「なぜ知っとる。いくら侵入できたとしても知る術はないじゃろ」
「見てたから。一か八かできるか試してみたら出来たことも知ってる。あと、これはちょっとしたことなんだけど…」
オムニは優しくシャリアの拳を下ろさせると、シャリアにしか聞こえないように耳元で小声で話しかける。すると今までで一番驚いた顔でシャリアがたじろぐ。
「な、なんじゃと…!?」
「火の無い所に煙は立たないって言うでしょ?願望から生まれた物じゃなくて、君らが捜そうとした物は実在するんだよ。この世界のどこかにね」
シャリアだけでなく、ラウラも何の話しをしているか気づいたのか眉がピクリと動く。
「ただ、使い捨てだからね。もう使われてるかも。それは僕でも分からない。劣化…」
「もうよい。分かった」
少年が続きを話そうとしたのを無理やり遮ったシャリアは驚いた顔から真剣な物に替わり、オムニのことを真っすぐ見つめる。
「あるのだと知れただけで大きな一歩じゃ。そこからは自分で、自分達で探す」
「…そっか。じゃあ、助けたことだし。公国に行こうか」
少年は先程までと変わって、人が上に数人立てるくらいの大きさの紙を取り出して地面に置く。その紙にも魔法陣が書かれており、ここまでの話しで転移するための物だと理解する。少年が先に乗ったのを確認してからカイ達もその魔法陣の上に乗る。
「安心してよ。僕も一緒に乗るから。あ、それと乗ってた馬車だけど、安心して。こっちで何とかしとくから。それじゃあ~…レッツゴー!!」
全員乗ったのを確認した少年は楽しそうに掛け声をかけてから魔法陣に魔力を流す。次の瞬間、カイ達の姿と、下に敷いていた魔法陣の紙が一緒になくなった。
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