第231話


 帝国に着いたカイ達はシャリアと一緒に解析班の所に来ていた。それは魔人の姫から渡されたペンダント型の魔法道具マジックアイテムを調べるためだった。

 効果も分からない魔法道具マジックアイテムを分からないまま持って置くのは危険だと判断して調べているのだが、何をしても調べられないでいた。


「一応、帝国の中で一番高い技術を誇る施設なんじゃがの…」


 4人で横並びになりながら、現在分析している魔法道具マジックアイテムを見ていた。この魔法道具マジックアイテムで5つ目なのだが、分析は一行に進んでいなかった。そして5つ目にしてようやくわかったのは情報漏洩防止用の結界が何十にも張られていると言うことだけだった。


「ダメじダメじゃ。これ以上分析させても無駄じゃの」


 シャリアはこれ以上は無駄だと判断して出て行こうとする。そして、ラウラは分析してる魔法道具マジックアイテムに触れて止めようとする。それをカイとミカが黙ってみる。


「ともかく、それを持って公国に行くしかないの。今、使者を送っとる。返事が来るまでは休みじゃ。フラージュも戻って来とらんからの」



 そう言ってシャリアは部屋を出て行った。




 カイ達の予想では数ヶ月は公国から返事が来ないと予想していたのだが、その予想はいい意味で裏切られた。なんと、返事は半月ほどで帰って来たのだ。しかも送った使者と共に。

 戻って来た使者も最初は混乱している様子だったが、すぐに報告を始めた。


「こ、公国の代表者によるものだと考えられます。彼にこれを渡されると同時に私は帝都郊外におりました」


 そういって使者が取り出したのは、公国からの書状だった。

 その書状には色々なことが書かれていたが、公国に行きたいと言う条件を飲むには「魔人の姫から魔法道具マジックアイテムを貰った少年が来ることが条件」と書かれていた。そのことに少なからず驚いたが、すぐに冷静になった。


「公国が魔人と繋がっておるか、王国でのやり取りを裏から見ておったかの二択じゃろう」


 書状のことをカイ達に伝えるため、リングの屋敷に来ていたシャリアは優雅に紅茶を飲みながら淡々と言う。カイ達も驚きながらも、冷静になるために紅茶を飲む。


「私が思うに公国とカイ達があった魔人は繋がっとる。それがどう影響して来るかは全く分からがの。人間と友好的で痛いのか、洗脳して繋がっとるのか」

「あの姫って言われてた魔人のことを信じるなら、友好的にしたいんだと思う」

「珍しいの、ラウラが達観視なんて。どうしたんじゃ?」

「別に。…でも、確かにそうあってほしいって思ってるだけかも」

「なんじゃ、なんじゃ。らしくないのぉ」

「こんな時もある」


 そう言うと、ラウラはシャリアから目を逸らして紅茶を飲み始める。シャリアもこれ以上は答えないと言う態度だと分かったのか何も聞かない。


「さて、カイ、お主は公国に行くか?」

「行きますよ。それに、俺が行かないと入れてくれないんですよね」

「そうじゃの。お主がいないことには話が始まらんもんな。さて、私も行く準備をするかの」

「シャリアさんも行くんですか!?」

「いかんと誰が話しを付けるんじゃ。何があるか分からんからの。陛下を行かせるわけにもいかん。明後日には出発する予定じゃから準備しとき」


 話しが終わったと言わんばかりに、シャリアは紅茶を勢いよく飲むと部屋から出て行く。それに続いてラウラも出て行く。

 予想よりもシャリアの滞在時間の短さにカイとミカは驚いて固まったが、直ぐに出発のために準備を始めた。

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