第228話



 翌日にもう一度来てほしいと言われたカイ達は本部から出て、隠れ家に戻る。


「シャリアさんって元ゼーラ家の人なんだよね?今王都って『メッサー流武術』って言うがあるけど何か関係あったりするの?」


 兵士に見つからないように隠れながら移動する中で、カイは気になったことを聞いてみる。ラウラは少しだけ苦い顔をしてから周りを警戒しながら話し出した。


「ラウラと私がいたときにはもう道場があった。一応門下生みたいなのがいたけど、数人しかいなかった。その時代は自分で鍛えたり、冒険者ギルドで先輩冒険者に特訓してもらった方が安いし確実に強くなれたから。リアは教えてなかったけど、教えてた師範よりは強かった。それに目を付けた当時の当主がリアに指導する様に言って来た。シャリアが指導始めてから門下生が強くなって、そのことが噂になって広がった。今考えたら金儲けだったんだろうけど、安直に『ゼーラ流武術』っ名前を付けて宣伝してた。それがカイの言ってる『ゼーラ流武術』の始まり」


 さすがにシャリアが『ゼーラ流武術』の始祖になるとは思ってなかったカイは驚いたが、周りに兵士が近づいてきたため2人は喋るのを止めて通り過ぎるのを待つ。




 昨日と同じメンツで本部にやってきカイ達は、今日は会議が始まる前に会議室に通され、フラージュが座った椅子の後ろに待機する。先に数人が会議室におり、全員が帝国の騎士に気になっているのかチラチラ見たりする。カイ達はその視線に内心気にしながらも気づいていないふりを続ける。


「全員集まったな。会議を始める前に言うことがある」


 最後にボスが入って来て、開始だと言うとカイ達からボスに視線の先が変わる。


「今回、俺達は苦しい戦いになる。最悪俺達の負けになるかもしれないと言っていたが、そんな俺達にも希望が見えて来た。帝国の使者たちが援護してくれることが決定した」


 歓喜の声がが漏れる中、カイ達はただ静かに会議の行く末を見守る。


「そして、本格的な援軍が来るまで、こちらにいる使者の皆さんにも協力してもらうことになった。そして、お互いに交友を広げるために皆さんにはこの本部で住んでもらうことになった。よろしく頼む。言うことは行ったし、会議を始めるぞ」


 カイ達も本部に住むことになったことに困惑を覚える者がいたりしたが、ボスはその人達を無視して会議を進めて行く。


 会議が終わり、本格的に反国家団体と協力することになったカイ達は住処を隠れ家から反国家団体の本部に移していた。その時にミカとメッサーが再開することになり、驚いている2人を見てカイは内心笑いながら作業をしていた。

 引っ越しが終わったため、カイが歩いていると子供達が集まって大人に授業を受けてる部屋を見つける。


「おーい、カイー。ってここに来てたんだな」

「ここは?なんか学園の授業で受けるようなことやってるけど」

「俺達は道端で倒れてる孤児なんかも保護してんだよ。孤児の大体は世間知らずだからな。ああやって一般常識ってやつを教えてんだ。俺も教えてもらったんだぜ?」

「ってことは」

「あぁ、俺も孤児だ。小さい時に親に捨てられてたみたいでな。物心ついた時にはここにいた。前ももっと小さい組織だったんだけどな」


 メッサーが歩き出したためカイも遅れてついて行く。


「国に文句がある奴らは大体は他の国に行くからな。この組織にいた奴なんかで他国に言った奴もたくさんいるんだぜ?それが今や皆戦う意思を持ってここに来てる。本当は戦いなんて起きない方が良いのにな」


 そう言ったメッサーの顔は悲しそうでカイは何も言えなくなってしまう。


「まぁ俺達が勝たないと、国はずっと好き勝手やるからな。絶対に負けねぇよ」

「そうだね。俺も勝つためにここに来たんだし」

「カイが来てくれるなんて心づぇな~。なぁ今から暇か?」

「暇だけど」

「なら特訓だ!俺と模擬戦してから、色々教えてくれよ」


 そう言ってメッサーが立ち止まった所は、本部に設置されている訓練場で、他にも数人が組手や、魔法を撃つ訓練をしていた。


「最初からここに来る気だったでしょ」

「カイとはまた戦いたかったからな。カイも強くなってると思うが、俺も少しは強くなってるからな。頼むよ」


 両手を顔の前で合わせるメッサーを見て、カイの顔がほころび小さくため息が出る。


「わかったよ。全力でやるからね」

「おうよ!」


 カイ達は訓練場の空いている場所に行き、模擬戦をする。


 以前戦った時よりは善戦したがメッサーのナイフがカイに届くことは無く、メッサーはカイに抑え込まれてしまう。悔しがるメッサーに悪かった所を教えると、メッサーが再戦を要求してきたため、カイはそれに応じて数回もメッサーと模擬戦をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る