第223話
モンスターと融合した人達をほとんど倒し終わったカイとラウラは次に来る物に対して警戒していた。それはこの研究所内で感じた大きい魔力の内の2つで、とてもゆっくりだが確実にカイ達のいる場所を目指していた。その2つが来るまでの足止めにたくさん送って来たのかもしれないが、カイ達は来る前に倒し切っていた。そのため2人ともそれ相応の体力や魔力を消耗していたが、まだ十分に戦えるほどだった。
「遅すぎない?それに魔力多いのがフラージュさん達の方を追っかけてるのいるし。たぶんウォッシュだと思うけど」
「あっちはあっちでどうにかするはず。今はこっち」
「分かってる」
疲れていた体をほんの少し休めることが出来た2人は反応のある方を向く。そしてその2つは来るのを今か今かと待つ。
近づいてきたと思うと、だんだんと何かを引きずる音とペタンペタンと歩く音か聞こえてくる。その音が聞こえた2人は警戒度を上げる。そして、まず足が見えて来た。片方には足が無く、もう片方は異様に発達していることにカイ達はここまで実験でいじられたのかと嫌悪感が顔に出る。そしてだんだんと全貌が見えてきたことでその嫌悪感を強めて行くが、片方の物の胸が見えた時点でカイの顔が驚愕に染まる。
「なっ!?パ、パピット…」
「カイ、知ってるの?」
「元家族だった奴。っ!もう片方もそう」
目の前にいたのは容姿はかなり変わっていたが、元家族と言うこともありカイは分かってしまった。それは自分のことを嫌っていたグイとパピットだった。
グイは腕と足以外はやせ細り、骨しかない状態で、髪に関しては全て抜け落ちている。そしてパピットはありえないくらいに太りきり、腕と足が肉に覆われたせいで無いも等しい状態だった。
そんな2人の表情だが、今までの融合された人と違い憤怒一色だった。先程のラウラの”カイ”の言葉に反応したのだ。
「ガイ゛、ガイ゛ィ゛ィ゛ィ゛イ゛イ゛イ゛!」
「ゴロズ!ゴロジテヤルゥ゛!!!」
2人から放たれる言葉にカイだけでなくラウラも驚く。そして今までの人達とは違うのだと理解する。
怒り狂ったグイが地団駄を踏むと地面が揺れ始める。それはグイの異様に発達した足だけが原因ではなく、魔法による攻撃も含まれていた。地面が異様に動き始め、カイに向かって棘の様に先が鋭くなった岩が無数に地面から伸びる形で向かって行く。カイはそれを全て腕に纏っている氷で砕いて行く。グイの魔法よりもカイの腕に纏っている氷の方が強度が高いために棘を真正面から殴ってもカイにダメージは無かった。そしてカイは魔力感知を持っているためどこから棘が来るかが分かる。正直グイは手も足も出ない状態だった。それでも知能が低下しているため魔法を撃ち続ける。
カイが砕いて動けない隙にパピットが光の球を放つ。それは通常の人間の時よりも大きく威力もあったが、戦闘に向かない上に帝国にいる生徒達よりも粗末な魔力操作だったため、カイは簡単に叩き落とせる。だが、威力があったため叩き落すと、辺り一面は光に包まれる。それを事前に読めていたカイとラウラは目を閉じており、どうにかなったが、しっかりと見ていたグイとパピットは悶える。グイの関しては手で顔を抑えるが、手の無いパピットはただただ奇声を上げるしかなかった。
2人が悶え始めたため攻撃の手が緩まる。
「やるよ?」
「待って。俺がやるよ。俺がやらないといけないと思うんだ」
カイは腕に纏っている氷を一度解き、手を手刀の形にしてから再度氷を纏う。その時に纏って氷は、そこらへんに撃っている剣よりも鋭くなっていた。
そしてその手でカイは素早く首を斬り落とす。赤い氷だったため、すぐに傷口は焼かれ血は出ない。だが、肉が焼ける臭いがし、カイはその臭いが過去一番で臭いと感じていた。首を落とされた2人は地面に倒れ、2度と動くことは無かった。
グイとパピットを倒して数分、ミカとフラージュが合流しようと動いていることにカイとラウラは違和感を感じていた。
「魔力が集まってる所に行った後ですぐにくるってことは、その人達は捕らわれてるだけってことかな?」
「それならここを壊すことは出来ない。一度戻る必要がある」
「とにかく2人に来て貰わないと。ただその2人を追って動いてるのがいるんだよね…」
先程からずっとミカ達を追って動いているウォッシュ達はずっとミカ達のことを追っていた。そして、そんなウォッシュの隣に感じられる人と同じくらいの量の魔力を持った存在にカイは覚えがあった。
「たぶん近くにいるのが、博士って言われてた奴だと思う」
「行く?」
いつの間にか顔がこわばっていたカイを見てラウラは行くかと声をかける。
「…ここで捕まえる」
カイはそう言うと、ミカ達の方に向かって走り始めた。その心は、元とは言え家族を実験台されたと言う少しの怒りと、レイはどうなったのかという心配で埋め尽くされていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます