第222話
カイとラウラが敵を倒している間に潜入したミカとフラージュは中枢近くに集まっている魔力の反応に向かっていた。カイ達が騒ぎを起こしたことで、施設内にいたほとんどの魔力反応がカイ達の元に向かっているのだが、ミカ達が向かっている場所にいる反応達だけは動かずにじっとしているのだ。そのことに違和感を覚えたミカ達は調べながらそこに向かうことにした。
道中、融合していない人をミカ達は隠れて見ることが出来た。その人達は問題があったと言うことで、慌てふためいていた。
「どこで襲撃を受けてるんだ?!」
「正面玄関です!襲撃者の数はまだ確認できていません!」
「非常口は開けてるのか!!」
「今開けてる所です!」
「よし!実験成果は全て捨てていけ!今は逃げることを優先するんだ。なんだ?どうした?」
「ここで死ねぇ!」
研究者だと思われる者達はリーダーの指示の通り逃げようとしていたが、1人の研究者がそのリーダーをナイフで一刺しして絶命させる。それを見ていた他の研究者は驚きのあまり立ち止まる。
「ずっとこの時を待ってた!お前達は生きてるに値しない!」
「クソッ!お前が裏切るかよ!おい、お前ら!」
1人が文句を言って声をかけると、他の研究者もそこらへんにあった物を手に取って戦闘体勢に入る。フラージュは透明化し、ミカは高速移動で研究者達を倒す。突然仲間が倒れて行くことに研究者達が騒いだが、それも一瞬で静まった。
殲滅を終えたミカとフラージュは裏切った研究所の前に槍を構えた状態で現れる。裏切った研究者は何が起きてるか分かっていないが、ナイフを地面に捨てて両手を見えるところに出す。
「あなたはなんで自分の上司を殺したのかな?」
「お、俺は反国家団体の一員だ。長い間潜入してたんだ」
「機を伺ってたと?」
「そう言うことだ。それで?あんた達は何もんなんだ?」
「そっちは質問できないよ。こっちの質問だけ答えて」
2人とも槍を喉元により近づけると、潜入者がつばを飲み込む音がする。
「この中には後どれだけの研究者がいるの」
「あとはあいつらの親玉だけだ。そいつはこいつらとは違う研究をしてたみたいだ。だが、誰も内容を知らないがな」
潜入者がそう言った瞬間に、ミカとラウラは背中側にある魔力が動いたことを感知したため、潜入者の腕を無理やり引っ張りながらをつれて逃げる。その動いた魔力は、1つは人間の物で、もう片方がこの施設に感じた大きな魔力の内の1つで、魔人に匹敵する程の量だった。
「たぶん多いほうがウォッシュだと思う」
「あんたらウォッシュを知ってるのか!?」
「彼は何者なの」
「あれはさっき言ってた親玉の用心棒だ。聞いた話しだと失敗した人達の処理をしてるとか」
「普通の人では無いってことだね」
ミカとフラージュは潜入者をつれながら、当初の目的である施設内の構造把握と魔力反応が集まって動かない所に走って向かう。
「こっちは…」
「こっちは何があるの」
「こっちは拉致された人たtいが監禁されてる。だが、もう人として生活してくことは…」
「そう…。そう言えば、ここでしてる研究はモンスターと人の融合だよね?」
「あぁ、そうだ。モンスターと混ぜることで、強靭な肉体と膨大な魔力を持った戦闘員を作るんだ」
「助ける方法はあるの?」
「…ない。そうなったらもう殺すしかない。それが一番の救いになる」
「そっか。…ちょっと最後に聞きたいんだけど、あなたもその実験をされた人だよね」
「…は?」
潜入者は驚きその場で止まると、頭を抱えてその場でうずくまる。ミカとフラージュは槍を侵入者に向ける。この潜入者も人より異様に魔力が多かったのだ。魔力感知が使えるミカとフラージュにとっては簡単に分かることだった。
「な、なんだこの記憶。し、知らない。なんだよこれ!」
「ミカ、ウォッシュは確か洗脳が使えるんだよね?」
「うん、この様子だとたぶん長い間受けてたんだと思う」
先程のフラージュの発言で何かが外れたのか、潜入者の頭の中に記憶にない情報が入ってくる。その情報とは今までウォッシュによって消されたり改ざんされた記憶だった。
「お、俺はここに潜入する様に言われて…違う。博士に作られて、ウォッシュ様に命令されて、反国家団体に…」
苦しむだけではなく、どんどんと過呼吸になり悲鳴も上げ始める。
「ど、どれが本当なんだ?!なぁどれなんだ!」
潜入者が涙を流しながら何かに縋るようにミカとフラージュのことを見るが、2人は何も言わない。
「は、はは。俺もあいつらと一緒だったんだ。なぁあんたら、俺を殺してくれ。あいつらのお人形のまま辛すぎる。今の俺がいる内が良い。頼む」
先程までと変わって静かに喋る男にミカは何とも言えない感情が浮かぶが、フラージュは男の首元に槍を近づける。
「頼みを聞いてくれて感謝する。博士がしてる実験は魔人と人間の融合だ。これ以上は知らない。あいつらを殺してくれ」
「…そう。ありがと」
フラージュは素早く、少しでも苦しくないように首を斬る。斬り落とされた男の顔はどこか嬉しそうで、笑顔になっていた。
ミカ達は男の遺体を回収してから、魔力の反応がたくさんある所に来た。そこには大量の人が複数の檻の中に入れられていた。そして全員が全員、自我ない状態だった。それを見た2人は実験の非道さにこみあげてくる物があったが、何とか飲み込む。
「ねぇお母さん、あの奥にいるのって…」
「ミカ、見ないの」
その檻中に入り、1人1人無事な人がいないか2人は確認したが、全員が全員虚ろな目をしており、自我が無かった。そして、その何個目かの檻の一番奥にミカ達が見知った顔の者がいた。それはミカとフラージュがいたアルゲーノス家の当主であるミカの伯父だった。伯父も例外では無く、虚ろな目で開いた口から涎を流し続けていた。
ミカ達が無事な人を探している間にも、ウォッシュの反応は一歩一歩こちらに近づいて来ており、そろそろ脱出しないと遭遇する状態だった。
「いったん退くよ。これだけ人がいるんだから私達だけじゃ無理」
「分かった」
まだモンスターと混ぜられていないため、救える可能性があるかもしれない。そのため、ここを破壊するわけにはいかなくなったと言うことで2人は退くことにした。この人数を2人では運び出すことが出来ないからだ。4人でも運び出せないため、一度騎士達と合流する必要があると考えたのだ。
少し納得できていないミカだったが、フラージュの指示の通りこの場から退く。
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