第220話


 王都近郊まで来た帝国に騎士達は中に入ってはもう休めないと予想し、最後の休息を取っていた。たびたび休息を取っていたが、そのたびにカイとフラージュが持っている魔法道具マジックアイテムがとても役に立ったため、最初はカイとミカのことを恐れていた騎士達も打ち解けて行った。


 そして夜中、カイ達は王都に入ろうと検問所が目視できる場所に来ていたのだが、その検問所には未だにカイの張った赤い氷があった。


「まだあるんだね」

「壊せないんでしょ。でも、全然溶けてないね」

「あれ自体が熱を発してるから。水かけても氷をぶつけても蒸発するからお手上げだろうね」

「じゃあ、消せるのはカイだけってこと?」

「そう言うこと」


 そう言うと、カイは同じ赤色の氷を右手に纏い走る準備をする。他の騎士達も走る準備を始める。


「じゃあ、中に入ったら別行動。皆は私が指示出すまで待機ね。3日で帰ってこなかったら今中にいる人達と帰還して」


 騎士達が頷いたのを見たフラージュは前にいるカイのことを見る。


「カイ君も準備はいい?」

「大丈夫ですよ。いつでも行けます」


 カイとミカ、ラウラは事前にローブを着ており、カイとミカはフラージュから貰った仮面をつけていた。フラージュも仮面をつけており、ラウラだけはローブに着いたフードを深く被っていた。


「よし。なら、突撃!」


 フラージュが指示を出すとカイを筆頭に全員が走り始める。カイの真後ろはミカとラウラ、フラージュが待機しており、その後ろを騎士達が走っていた。

 カイが氷の手を伸ばして検問所の赤い氷に触れると、今まで張られていた全ての赤い氷が一瞬にして無くなる。そしてカイ達は王都に潜入する。

 検問所と言うことでもちろん監視をする兵士達がいたが、赤い氷で熱くなっていたせいか数が少なく、ミカの高速移動からの不意打ちと、ラウラの風の魔法で簡単にバレずに制圧出来た。そして、そんな様子を横目にカイとフラージュは話し出す。その横を騎士達が走って通り抜ける


「カイ君が張った氷のおかげでここら辺は人がほとんどいないね。あの家も人いないもんね」

「これならここで戦っても安心ですね。俺はミカ達の手伝いをしてきます」


 ラウラとミカは空き家になっている1つの家に先程倒した騎士達を運んでおり、カイもその手伝いをし始める。フラージュは騎士達が無事に隠れることができたか確認するために屋根に跳び乗り様子を見る。


 騎士達が全員無事に隠れることが出来たためフラージュが検問所に戻ると、カイ達も兵士を運ぶのが終わっており、戦う準備に入っていた。


「あの人達が逃げきれたらいいだけだから無理はダメだよ」

「分かってます。集合場所も覚えてますから、誰かがラウラと一緒に行けばいいですよね。まぁ、言っても俺かフラージュさんだと思いますけど」

「ちょっと、私は!?」

「ミカは高速移動使って撤退すればいい」

「そうですけど…」

「話してないでもうやるよ」


 検問所は途中で燃えるのを止められたためか、未だに骨組みの木が残っていた上に、氷を除去するために周りに仮設の足場があり、それも木で作られていた。フラージュはそこに迷いなく火が出る魔法道具マジックアイテムで火を放つ。カイ達が脱出した時同様に、突然検問所が明るくなったため兵士達が集まり出す。


「でも、こんな作戦が思い浮かぶなんてフラージュさんも恐ろしいですね」

「それが役に立つんだから良いでしょ?」

「お母さんって昔から人の嫌な所つく癖がたまに出るよね」

「ちょっと!?」

「もう来た。やる」


 ラウラの言葉で全員しっかりと戦闘体勢に入る。ミカとフラージュの手には槍が握られており、ラウラも杖を持っていた。


 兵士達は燃えている検問所の前に人影が4つ確認できたと言っていると、ラウラがその兵士達を風で吹く飛ばす。後ろの兵士も巻き添えにしたため、かなりの数の兵士がやられる。


「ちょ、ちょっと!?ここまで来させないと!」

「…来るのが遅いのが悪い。それにあっちにはいないから大丈夫」

「それは分かってるけど…」

「まぁまぁ、被害が大きくなればなるほど後が楽になるかもなんだから」

「それに横からも来てるよ。私やってくるね!」

「私も行くよ。様子を見て退避してね」


 ミカが飛び出したため、それにフラージュもついて行く。検問所の前にカイとラウラが残ったが、ラウラは先程よりも威力を落とした魔法で兵士を倒している。目的を忘れているのではないかとカイは一瞬不安になったが、3人ともそんなヘマをしないと思い出し、自分の戦いに集中し始める。


 ラウラの風の魔法は加減をすれば殺すことは無いが、カイの魔法では加減しても殺してしまう危険があったため、カイは腕だけに赤い氷を纏わせて、十分に接近して来た兵士の集団の中に1回の跳躍で入っていく。


「な!?向こうから来たぞ!!殺せぇ!」


 全員がカイに向けて武器を振り下ろしてきたため、カイは腕を頭の上で交差させて全て受け止める。驚いて力が抜けた隙にカイがはね返すと、ほとんどの兵士の体勢が崩れたためカイはその兵士を蹴り飛ばしていく。そして体勢が崩れていない兵士が再度攻撃して来た所で、また腕で受け止めて空いている手で殴り飛ばす。


 数十の兵士を倒してひと段落着いたため、カイは魔力感知で探ってみると、騎士達と同じ数の反応がかなり離れた場所にいた。そして、検問所の近くから2つの反応がものすごく速い速度で離れていることも確認できたためラウラの所に戻る。


「分かってる。行く」


 カイが戻って来ただけで状況が分かったラウラは今日一番の威力の魔法を地面に打ち込んで砂埃を上げる。その隙にカイとラウラは脱出する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る