第219話


 ラクダレスが来てから2ヵ月経った現在、城内が騒がしくなっていた。それは王国内で紛争が起きたのだ。

 その知らせは数日前に突然来た。ラクダレス達とすれ違うようにして贈られた騎士達の1人が急いで帰還してきたため話しを聞くと、王国が帝国に戦争を仕掛けようとしたタイミングで反国家団体が城に魔法を撃ちこんだのだ。そのことにより、王国は帝国に進軍するのを止め、先に反国家団体を壊すことに決めたのだ。

 そして今、王国は混乱状態にあった。国は外を歩ているだけで反国家団体だと決めつけ惨殺し、家の中から物音がしただけで兵士達が無理やり家の中に入ってくる。もちろん王都から外に出ることも簡単では無くなり、都市から都市に移動するという理由だけでは出られなくなっていた。

 そんな状況で騎士達は何とか隙を作り、1人だけ逃がして情報を持って帰って来たのだ。


「街中では頻繁に魔法が飛び交っており、危険な状態です」

「そうですか…。今から至急対策を考えます。貴方には数日の休暇を与えます。下がりなさい」

「団長、待ってください!今もあいつらは危険な状態でバレないために身を隠し続けています!それなのに俺だけ安全な場所にいるなんて…」

「言いましたね。下がりなさい」

「っ!?わ、分かりました」


 ナキャブの有無を言わせない圧に押され、騎士は大人しく部屋から出て行く。


「こんなことで人を割きたくは無いんですがね。まだ余裕があるところから彼を監視する人を見つけて来てください。勝手をされる方が困りますから」

「承知しました。まぁ勝手な事しないのが1番なんですけどね。あれは絶対に何かする顔でしたねー」


 ナキャブの後ろに待機していた副団長は少しだけ呆れたような表情で返事を返す。


「それで?もし無断で向かおうとした場合は」

「最初は説得してください。「王国に向かうときに連れて行くから」と。それでも無理でしたら力づくで構いません」


 命令を受けた副団長は部屋から出て行くと、監視をする近衛騎士を急いで見つけるため小走りになる。


「近衛騎士も暇では無いんですよ。はぁ、まずは陛下に報告に行って、その後でシャリアさんに相談しますか…」


 重い腰を椅子から無理やり持ち上げると、急ぎ足で皇帝の所まで行く。




 王国で反国家団体が攻撃を仕掛けたことを聞いたカイとミカは、ラウラに連れられる形で城に会議室に向かっていた。その理由は彼らが王国に向かうことになったからだった。


「反国家団体ってラクダレスさんが言ってた奴だよね」

「そう。でも私が王都にいたときはそんな組織なかった」

「ってことは最近できた組織なんですね。なんで急に攻めたんでしょう」

「帝国に戦争を仕掛けようとしたから。そう聞いてる」

「戦争だけは起こさせたくなかったんですね…」

「ここで組織が負けたら確実に戦争になる。だから行かないといけない」

「分かってます。もう二度と戻らないと思ってたんですけどね。こんな形で戻るとは思ってませんでした」


 軽く話していると会議室に着いたため、カイとミカは止まると思ったが、ラウラが何も言わずに扉を開けて入っていく。2人は急いで続く様にして入る。


「来たの。これで全員じゃ」


 会議室の中を見てみると、シャリアが居り、シャリアの後ろにサリーとフラージュが立っていた。フラージュは隠密や潜入する時に切る白いローブを着ていた。その3人の隣にナキャブと副団長が居り、部屋には他に私服を来た人達が10人ほどいた。全員、騎士で今回のことのために私服で来るように言われていたのだ。

 シャリアが全員来たと言ったため、ナキャブが立ち上がり全員のことを見る。


「あなた達にはこれから王国に行って、反国家団体と協力してもらいます。その間のあなた達の指揮官は前副団長のフラージュさんとなります」

「ま、待ってください!?それは国家をつぶすといことですよね?!そんなことしたら聖国も公国も黙って無いんじゃ…」


 他の人も同意するような形で動揺が広がる。するとナキャブが息を1度吸う。


「それに関しては大丈夫です。こちらで話しがついています。私達が王国に言っても問題はありません」


 問題ないと知った騎士達は静かになったため、ナキャブが王国の現状などを話しだす。


 全て話し終わり質問があるか聞くと、1人の兵士が手を上げる。


「最後に入って来た3人、学生ですよね?大丈夫なのでしょうか?」

「あなた達や私よりも彼らの方が王国のことを知っています。それに今回の作戦、彼らが必ず鍵になります。なので一緒に行ってもらいます。腕前は問題ありません。そうですよねシャリアさん」

「問題ないぞ。私のお墨付きじゃが、納得いかんかの?」

「納得いきません!学生をつれて行くんですよ?!危険すぎます」


 カイ達の参加に反対する騎士が話しかける中、シャリアはカイ達に視線を送る。


「聞いておられますか!」

「分かった。じゃあ、あ奴らを見てみぃ」

「はい?」


 わけ分からないと言う顔をしながら、騎士は言われた通りカイ達のことを見る。他の騎士もつられて3人のことを見る。

 すると、今までそこにいたはずのカイとミカが消え、反対していた騎士の目の前に現れる。一瞬の出来事に全員が驚く。その中でも反対していた騎士が驚きすぎて尻餅をつく。


「これで分かったじゃろ。どうじゃ?」

「は、はい。分かりました」


 それ以外何も言えなかった騎士は黙って立ち上がり後ろに下がる。


「他にはないですね。この後すぐに向かってもらいます。各々最終確認をしておいてください」


 そう言うと、騎士達は部屋から出て行った。カイ達も騎士達に続いて部屋から出て行こうとすると、シャリアとサリーに止められる。


「今回、おそらくですが魔人が出てくると思います。その時は私と戦ったことを思い出してください。お2人なら必ず倒せますから」

「ラウラもおるからの。気を付けて行くんじゃぞ」


 2人に言葉を貰い、カイ達は王国に向かい始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る