第218話
「ですが、まずは元の部屋に戻りましょうか」
サリーが戻ろうと言ったためカイ達は少しの不満を感じながら客室に戻る。
客室では戦う前と同じ席にフラージュとラウラが座っていた。そしてシャリアの横側に椅子が1個増えていた。その増えた椅子にサリーが座る。
シャリアが入れた紅茶をゆっくり一口飲むとサリーは話し出す。
「魔人が強靭な体と膨大な魔力を持っていることをお2人は知っていると思います。そして、魔人の一番厄介な所は魔力感知の質の高さです。第6感のような物で魔力を感じ取っているので分かってしまうのです。先程カイ様は私に当たる寸前でそれるように撃ちましたが、いくら紙一重だとしても魔人には当たらないと読まれてしまいます。それはどんな魔人でもです」
先程の模擬戦から予想出来ていたことだったが、魔人全員に読まれてしまうと言うことには2人はさすがに驚いた。
「魔人に魔法を当てるのはかなり難しいです。今日はそのことをお2人には特に知ってほしかったのです。以前、カイ様が魔人の背中に向かって魔法を撃っても当たらなかったのはカイ様の腕が悪いのではなく、魔人の感知能力が高かったからなんです」
「ってことは動けなくしてから魔法を当てるか、武器でしか攻撃できないってことですか?」
「そう言う手もありますが、魔人に空を飛ばせないのも大事です。空を飛ばれたら武器で攻撃することはほぼ不可能ですから。彼らは歩きよりも飛ぶことを得意としています。一部の地域では常に飛んで生活していると聞いたこともあります」
魔人について多少知れた2人は紅茶を口に含むと一息吐く。
「じゃあ飛ばれたらどうするんですか?翼を攻撃しようにもあんなに早く動かれたら当てるなんて…」
「その時は数に頼るしかありません。1人のであった時は速やかに退避して仲間を読んでください」
何とか対抗策が無いかと2人は考えるが、一向に思いつかなかったため黙る。
「そんなに落ち込まないでください。お2人の動きを見る限り、飛ばれない限りは勝てますよ。…休憩も良い感じに取れましたね。では次は武器を使った近接戦をしましょう」
サリーが2人をつれて出て行く様子を残った3人は少しだけ嬉しそうに見ていた。
薄暗い研究室で1人の研究者が何かの研究をし続けていた。
「ようやくだ。安定して融合させることが出来るようになった。それもこれもお前達が実験台になってくれたおかげだ。被検体1号、3号」
博士が視線を送った先には人間なのか疑いたくなる見た目になった物が2つあった。
片方は腕と足が肥大化しているのに対して他の部分は痩せ干せており、胴体に関してはあばら骨が浮き出ていた。頭は過度な実験によるストレスで抜けており、頬には薬品がかかったのか少し溶けていた。
もう片方には腕と足と言う物が無く、1つの大きな肉の塊になっていた。その物の胸だと思われる場所に顔が埋められるようにあり、顔は無事のままだった。顔はそのままなのだが、その顔からは生気は全く感じられず、生きているというのに死んでいるようだった。
顔が少し溶けている方はまだ思考があるのかうめき声のような物で博士に返事を送る。
「2号は失敗して自害してしまったが、お前達のおかげで魔人融合の実験を成功させることが出来た。ウォッシュ礼を言っておくんだぞ」
「分かった」
部屋の入り口にいたウォッシュは部屋に入ると博士の前で跪く。
「博士、そろそろ管理するのが困難になってきている。そろそろ報告すべきだ」
「そうだな…。モンスターと混ぜるのは簡単にできるようになったからな。そろそろ王子に報告するか。これを報告すれば念願の戦争がはじまる…ウォッシュしっかりとやれよ?」
「分かっている」
博士は今にも鼻歌を歌いそうな勢いで研究室から出て行く。
研究室に残されたウォッシュは1号と3号のことを見る。
「無様だな。最初はあれだけ騒いでいたというのに、今では意思のないただの物。お前達にも魔人の血が流れてるとは誰も思わんだろうな。だが、俺のために試作品になってくれたことは感謝しよう」
ウォッシュはそう言うと研究室から出て行く。残された1号と3号はその場にとどまり続ける。それらはもう命令が無いと動けないのだ。
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