第217話


 サリーに言われて、2人はフラージュとラウラと共に紙に書かれていた住所の所まで来ていた。そこはリングの家よりも広く、立派で、豪華な家だった。


「こ、こんなに豪華な屋敷にサリーさんって住んでるんですか!?」

「体裁のため」

「体裁?副学園長としてのですか?」

「まぁー、ちょっと違うけど、だいだいそんな感じ」


 何か知ってそうなフラージュとラウラは大きな門を開けて入っていく。


「ちょ、ちょと守衛とかいるんじゃないの!?」

「そんなのいない。いても意味無い」

「そうね。いても意味無いね。守るべき人が守衛よりも強いからねー」


 入っていく2人に焦りながらカイとミカはついて行く。

 そして整われた庭を横目に見ながら屋敷にたどり着く。


 屋敷の扉を開けると、普段と変わりない服装でシャリアが立っていた。


「え、なんでシャリアさんがいるんですか?!」

「ん?なんじゃ。そりゃあ私の家だからの。いるに決まっとろう」

「え!?」

「サリーがお主らを呼んだと知った時は驚いたぞ。ほれ来なはれ」


 シャリアに通されて客間に着くと、既に紅茶が入れられており、未だに湯気が出ていたため入れたてだと言うことが分かった。


「今の内に休んどくんじゃな。サリーはかなり手強いぞ?」

「前に窓から飛び降りたの見たことはありましたけど、戦う所は見たこと無いですね」

「サリーさんは普段戦えないからね。でもかなり強いよ。初めて戦った時なんてボコボコにされたな」

「私も手こずった」

「よく言うの。ラウラには余裕があったじゃろ」


 皆が強い強い言うために2人は戦うことが楽しみになっていく。


「お待たせしました。少し話してから始めましょうか」


 そう言って入って来たサリーは普段の正装の姿とほとんど変わっていないが、明らかな違いとして背中に魔人特有の翼がついていた。


「それって…」

「私は人間と魔人のハーフなんです。赤子の頃に捨てられていたところをシャリア様に拾われたんです」

「家なんじゃぞ。お母さんで良いじゃろ」


 不貞腐れかけるシャリアといつもよりも表情が豊かなサリーにカイとミカは少しだけ困惑する。


「さて、お2人とも、私には魔人の血が流れていることもあり、人よりも頑丈な上に魔力も多いです。なので遠慮はしないでください。私も本気で行きますから」


 サリーが普段つけてる指輪を取ると、以前と同じ様なサリーから大量の魔力を感じ取る。それにカイとミカは丁度いい緊張感を感じる。


 用意されていた演習場は学園の訓練場よりは小さい物だったが、しっかりと結界が張られていた。


「お気づきだと思いますが、結界が張られています。しかもこの結界は学園にある物よりも強力でちょっとやそっとでは壊れません。なので安心してください」


 サリーは背中の翼を羽ばたかせると、素早く飛び立つ。そして高い所で浮かび続ける。


「以前の様子を聞く限り、お2人は高く遠い所を狙うのが苦手なように感じました。なので、私を的にして当ててください」

「わ、わかりました」

「当たっても安心してください。フラージュ様もいらっしゃいますし、私も攻撃しますからお2人もしっかり避けてくださいね。では始めましょう!」


 サリーはそう言ってカイとミカの間に水の塊を撃ちこむ。それは絶対に2人に当たらないように調節された物で、開始の合図だとすぐに気づいた。


 最初の一撃はお互いが出せる最速の一撃を出したが、サリーには簡単に避けられてしまう。飛んでいるサリーはとても早く、カイが飛ばしている炎と氷はもちろんのこと、ミカが撃つ雷ですら避け続ける。それはまさに先読みが出来ているようだった。

 すぐに2人で協力して当てようとするが、全く当たらない。そのためカイは青い炎の手を作り、その手を伸ばし始める。

 この技に関しては聞いていなかったのかサリーは一瞬驚いた顔になったが、より高くに飛んで避ける。追うようにしてミカが雷を飛ばすがそれも避けられてしまう。カイは片手でサリーのことを追いかける形で、残った手で進路を妨害する様に手を伸ばすが、紙一重の所で避けられてしまう。

 しばらく撃ち続けていると、カイとミカは小声で話し出す。


「全く当たらないんだけど。なんか先読みされてる感じじゃない?」

「それは感じてた。ちょっとこういうのはどう?」


 カイはミカに小声で考えた作戦を伝えると、ミカは笑顔を浮かべる。


「良いね。それで行こう!」


 作戦に移ってもカイとミカはサリーに向かって魔法を撃ち続ける。カイは両手を伸ばしていたが、片手の炎を消して、空いた片手で魔法をサリーに向かって撃つ。

 妨害するのを止めて撃ち始めたことにサリーは疑問に思ったが、避け続ける。

 カイは伸ばしている手をサリーに向け、手から氷の塊を飛ばす。それと同時にミカが魔法を撃つのを止める。カイが撃った氷はサリーに当たる寸前で横にそれ始め、サリーには紙一重で当たらなかった。普通の人はもちろんのこと、カイとミカのレベルの魔力感知でも避けることを選択するはずの物だった。


「やっぱりだよ。これ当てるには…」

「そうだね」



 サリーが自分達よりも魔力感知の能力が高いのだと分かったためカイとミカは威力を捨てて、魔法の範囲を広くしようとした。


「いったん終わりじゃ」

「え!?シャリアさん!ここからがいいところだったのに」

「お主ら魔法の範囲を広げて当てようとしたの。じゃが、魔人にはそれじゃ効かんぞ」


 自分達がしようとしたことを予想されて、カイ達は何も言えなくなる。話し終わるとシャリアの隣にサリーが下りてくる。


「お2人ともかなり強いですね。弱いのはもちろんのこと、普通の魔人なら魔法だけで倒せますよ」

「サリーさんはどのくらいの強さ何ですか?」

「私は…そうですね。聞いた話しなので詳しくは分かりませんが、この前逃げた魔人よりも少し強い程度です。実は以前、魔国に行ったことがあるんですよ。このことを話したいのはやまやまですが、それはまた今度に話しましょう。今は、お2人が気づいたであろう魔人の特徴についてです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る