第214話


 ラクダレスと帝国の騎士2人は兵士達にバレないように物陰に隠れながら尾行する。

 昼間におごれと言っていたことから、ラクダレス達が予想した通り兵士達は居酒屋に入って騒ぎ出す。その声はとても大きく、ラクダレス達は外にいると言うのに店内の会話が聞こえてくる。普段の居酒屋なら他の客も騒いでいて会話を選別することが出来ないが、行方不明者が続出していることもあり、夜に出歩く人が減り客がほとんどいなかった。


「おい、お前。昼の話しこいつらにもしてやれよ」

「あぁ?何だよー。おもしれぇんだろうな?」


 1人の兵士がそう言うと、嬉々として標的の兵士が他の兵士に話し出す。すると、兵士達は今日一番の笑い声をあげる。


「そりゃいい話だ!おい!もう一杯持ってこい!」

「は、はい!」

「にしても蹴った時のあのババアの態度よ。最高だったわ。でもな、もっとければおもろかったかもな」

「今度からよ、巡回を2人組にしてみんのも良いかもな。それで2人でボコボコにすんだよ」

「わっりぃこと考えんなぁ」


 酒もかなり入り始めたのか、どんどん兵士達の口が軽くなっていく。ラクダレス達は兵士達の話しを聞き続けるたびに気分が悪くなっていき、今にも戻したい気持ちでいっぱいだった。


「それにこんだけ捜索願いが出てると何が起きてるんだって感じだよな」

「そうだよなぁ。巡回も増えるしで、大変だから勘弁してほしいわ」


 先程まで笑いながら騒いでいた兵士達は今度は愚痴を言い始める。そこでよっぽど酔っぱらってるのか、呂律が回らなくなった標的が叫び出した。


「行方不明だがよぉ~。探しても無駄らぜぇ~」

「あ?何言ってんだよ。探さねぇと大変だろうが」

「こーーんだけ大規模で起きれんらぜ~?」

「ただの行方不明じゃねーんだよぉ!」

「こりゃーなぁ、裏で動いれんらよ!れっけぇのがなぁ!」


 飲んでいたジョッキを机に強く叩きつける音が聞こえる。とぎれとぎれで話していたことから途中途中で酒を飲んでいたことなど簡単に察することができた。そして聞き捨てならないことを言った。それを聞いてラクダレス達はこの兵士が関係している、もしくは情報を知っていることを確信する。


「なに言ってんだよ。酔いすぎだぞ」

「そうだぜ?んなもんあるわけないだろ」


 数人の兵士が呆れたよう否定したためその話はこれで終わって、その後は上官の愚痴を離し始めたため、ラクダレス達はこの後標的の兵士を捕まえるための作戦会議を隠れながら始める。




 兵士達があらかた騒ぎ終わると店からぞろぞろと出てくる。目的の兵士は酔いつぶれており、2人の仲間に肩を組まれて支えられていた。


「じゃあ、また明日だなー」

「明日って、もう今日だろ。ちげぇーね。じゃーなー」


 兵士達は最後まで大声で笑うと各々帰路につく。ラクダレス達がバレないように尾行していると、兵士達は周りを警戒することなく話し出す。大声で話しているというのに、真ん中にいる兵士は未だに寝たままだ。


「にしても、こいつが話した時は焦ったな」

「それなー、こいつも口が軽いっての。バレたら俺ら殺されるぞ」

「でも、上手い話しだよな。しっかりやれば大金が入るんだから」

「しかも相手が相手だから信用できるしな。ホント上手い仕事を見つけたわ」


 また馬鹿見たいに笑い始めたため、ラクダレス達は後ろから奇襲を仕掛ける。酔っぱらっているのと、1人寝ている人がいることもあり簡単に連れ去ることが出来、路地裏に入ると地面にうつ伏せの状態で寝かせ、上から押さえつける。起きている2人は大声を出したり抵抗をしようとしたが、口をふさがれたのと騎士の2人がしっかり拘束したため何もできなかった。


「おい、人さらいに関して何か知ってるみたいだな。吐いてもらうぞ」

「な、なんだよ。俺達は兵士だぞ!何してるか分かってるのか!?」

「安心しろ。周囲に人はいない」


 既に魔力感知で人がいないことを確認していたため、騎士達は冷静に返答する。そして、ラクダレスが学園の関係者として表で仕事をしているため、バレるとマズイということで尋問を騎士がし始める。


「そうだ。早めに話した方が良い。相棒が短気なんでな」


 騎士が1人の兵士の頭を掴み、残っている兵士の方を向かせる。すると、なにもされていなかった兵士の頭が水で覆いつくされる。兵士は苦しそうにもがくが、上から押さえつけられており、腕も使えない状態だったため意味がない。数秒するとその水が解除されたため苦しそうに息を吸い始める。


「あんな風にはなりたくないだろ?さっさと話しちまえ」

「殺すってんなら殺せよ!俺は話さねぇぞ」

「そうか」


 すると、騎士はぬいた剣で兵士の頭を落とす。そしてすぐに切断部分を氷で覆い血が出ないようにする。先程まで水で苦しめられていた兵士の顔面から血の気が抜ける。


「私達はあなた達を容赦なく殺すよ。死にたくなかったら話しな、ね?」

「お、俺も話さなかったらお前らは情報を得られねぇだろ!」

「その時は未だに酔いつぶれて寝てるこの人に聞くから大丈夫。見た感じ口軽いみたいだから、あなた達2人の死体を見えれば答えてくれると思うんだけど…どうかな?安心してって。答えてくれたらあんな風にはならないから」


 騎士が抑えつけるのを止めたため、ラクダレスが上に乗って抑える。すると騎士はその兵士に見えるように回り込み、視線を合わせる。騎士の目が本気で言っていると認識したのか、兵士は焦り、怯えながら話すと言った。


「はい、いい子だねー。じゃあ知ってること全部話してもらうよー。嘘ついても無駄だからねー」


 騎士が懐から検問などでよく使う嘘かどうかを判別する魔法道具マジックアイテムを取り出すと、兵士は諦めた顔になった。

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