第213話
行方不明者のことについて疑問に思ってから調べているラクダレスは今、ある兵士を尾行していた。
まだ昼間だと言うこともあり、ラクダレスは学園の医務室で仕事をしていたのだが、必要な薬が無くなっていたことに気づき街中に買いに来ていた。普通ならば学園が準備をするものだが、初めて医務室に来た時にあまりにも質の悪い物が置いてあったため、ラクダレスは学園に言って自分でそろえるようにしたのだ。
いつものように街中を歩いていると女性の叫び声が聞こえたため、ラクダレスは軽い興味でその方向に向かって歩き出す。
最初は聞こえづらかった女性も近づけば近づく程にしっかりと聞こえてくる。
「お願いします!息子を!息子を探してください!」
内容が聞こえたラクダレスが早歩きで騒動が見える範囲まで行くと、兵士の1人に泣きながら足に抱き着いている女性が叫んでいた。
「奥さん、私達も賢明に探しております」
「昨日聞きました!捜索願いが多すぎて探すことが出来て無いって!どうか、どうか息子だけでも探してください!他の方は良いから、息子だけでも!」
「そうな事無いですから。奥さん、仕事が出来ませんので離れていただいても…」
兵士は心底困った顔をしながら優しく女性に話しかけるが、女性は聞く耳を持たない。顔を涙と鼻水で濡らしながら叫ぶ女性に兵士は話しかけるが、それでもずっと情勢は懇願し続ける。周りの人々も同情の視線で女性と兵士のことを見る。
ずっと女性は兵士の話しに聞き耳を立てず、兵士にすがり続ける。離してくれと言い続ける兵士もだんだんとイラつき始めたのか、優しそうだった顔がどんどんしかめっ面に変わっていく。
「おい、ババア離せって言ってんだろ!」
顔が完全に怒った顔になった途端、兵士は女性のことを蹴り飛ばす。突然のことに女性は驚いた顔で固まると、兵士はその女性のことを踏みつける。
「こっちはよぉ、しっかり仕事してやってんだよ!ケチつけんじゃねえよ!」
すると兵士は足を退けて、その足で女性のことを蹴りつける。かなり強めに蹴りつけたため見ていた野次馬は目を背ける。
「何だよ!こうやって巡回して仕事してんだろ!」
「や、やめ、やめて。痛っ!ウッ!いや」
蹴り続けてる兵士に対して女性は止めてもらえるように言うが、今度は兵士が聞く耳を持たない。兵士が蹴り続けるという光景をラクダレスも見ていて止めようと思ったが、自分が目立ってしまってはこれから行動に制限がかかる可能性がとても高いために動けなくなる。
しばらく女性が蹴られ続けていると、野次馬が呼んだ兵士達が走ってくる。すると、冷静さを取り戻した兵士は蹴るのを止める。やって来た兵士の1人が女性の安否を確認し、残りの兵士が蹴っていた兵士に話しを聞き始める。
野次馬達もその様子を見守っていたが、兵士達に離れるように言われたために見るのを止めて離れて行く。ラクダレスはそんな中、物陰に隠れて兵士達の動向を監視する。
兵士達は女性を担架で運ぶと、蹴っていた兵士を連行し始める。だが、連行と言っても一緒に移動するだけの物だった。人通りが少ない所になったため、ラクダレスは兵士達の会話に聞き耳を立てる。
「ついてなかったなぁ、あんな面倒なババアに捕まるなんてな」
「そうなんだよ。ったく、行方不明者を探しても無駄だってのにな。イラついて蹴りまくっちまったぜ。まぁストレス解消になったからよかったけどな」
「羨ましいな。俺も蹴りたかったぜ」
兵士達がげらげら笑っている内容にラクダレスは反吐が出そうになったが、その会話に違和感を覚える。頭を一度リセットさせて、先程の会話を脳内で再生させる。
(探しても無駄?あの兵士は確かにそう言いました。無駄だと言い切りと言うことは、何か知ってますね。絶対に。薬を購入するのは止め、ですね)
ラクダレスは買い物を止めて尾行することすぐに変えた。そして懐に仕舞った、帝国から貰っていた居場所を教える
「ここまで来ればいいだろ。お前も面倒な事すんなよ。じゃ、巡回任せた。あんまり目立たねぇところに行けよ」
「分かってるって、あれはついやっちまったんだよ。じゃあな。そうだ、この前おごったんだから今日はお前がおごれよー」
周りに追ってきている人がいないことを確認した兵士達はその場で分かれて巡回を再開する。そのことにラクダレスは驚きながらも、問題の発言をした兵士を尾行する。
問題の兵士はそのあと数時間巡回すると詰所に戻って行った。その間にラクダレスは帝国の騎士と合流していた。その騎士は魔力感知が使えるため、魔力感知をうまく使いバレないようにして動いた。
数時間詰所に張っていると、その兵士は複数の兵士達と一緒に出てきたため、ラクダレス達は尾行を再開させた。
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