5章 至高の存在に至るため
第210話
学園祭の出来事があってから1週間が経ち、学園は普段通りの授業を再開となった。その間、カイとラウラはリングの家に引っ越しとなった。今回の魔人騒動を受け、カイも戦ったことで狙われるかもしれないのと、死んだ魔人は魔力を見ただけで属性を判別していたため、他の魔人も判別が出来る可能性がある。唯一無二の魔力を持っているカイが狙われる可能性が高いと考えたのだ。そのため、ラウラだけではもしもの時に危険だと考え、フラージュとナキャブがおり警備もしっかりしているリングの家に引っ越しとなった。
幸いリングの家は豪邸だったため部屋には全く困らなかった。そして引っ越しが完了すると、カイとミカは何かしていないとアディが暴れていたことを思い出してしまうため組手をしたり模擬戦をしたりして過ごした。
学園が再開するまでの間にカイ達はルナの所に行きたいと思っていたが、シャリアから外出禁止を言い渡されていたため会いに行くことが出来なかった。
学園が再開となった今日、カイ達は普段よりも早く学園に向かい教室に来ていた。ちらほらと生徒がいる中で既にルナは教室に来ていた。そして教室の後ろにはカイ達は見慣れたアルドレッドとセレスがいた。他の生徒達は2人がどう言う人達か知らないためにチラチラと見ていたがカイ達は話しかけに行こうとした。だが、アルドレッドと視線が合うと首をゆっくりと振られたため歩みを止める。するとアルドレッドはカイ達に分かるようにルナ方向を見る。カイ達はそれがすぐにルナの元に行けと言ってるのだと理解し、駆け足でルナの元に行く。
「ルナ、おはよう」
「あ、2人ともおはよう」
化粧がされているためじっくり見ないと分からなかったが、ルナの目の下にはクマが出来ていた。アディのことがあって寝れていないのだ。それを隠すためにルナは笑顔で答えるが、騒動のことを知っているカイ達にとっては無理に笑顔を作ってる様にしか見えなかった。
「ルナ、ついて来て!カイ、一限目はたぶんいないから先生に言っといてね」
ミカはルナの腕を引いて無理やり立たせると、教室の後ろの扉から出て行く。それに続いてアルドレッドとセレスも教室から出て行く。1人取り残されたカイは大人しく自分の席に座る。
「よっ!大変だったな」
カイが席に座ってボーっとしていると、後ろから話しかけられたため振り返る。するとそこには以前に模擬戦をしてから仲良くなった男子生徒とトランが並んでいた。
「ミカさんとルナ様はいらっしゃらないんですね。やはりアディさんのことが…」
「俺はあんまり話してなかったからどんな奴か詳しく知らねえけど、クラスメイトが殺されるのはちょっと来るもんがあるな…。でもよ、アディもついてねえよな。侵入者と会っちまうなんてな」
学園が今回のことを表立って本当のことを言えるはずもないため、魔人のことは侵入者とし、アディはたまたま侵入者と遭遇し、目撃されたために殺されたと発表された。そのため誰もアディが魔人に利用されていたことを知らないのだ。
「そうだね…」
カイはそれ以上言葉を発することが出来なかった。
帝国で魔人騒動が起きたころ、王国の方でも動きがあった。
「これは、不可解ですね。しっかり働いているのでしょうか?それとも国が意図的に起こしているのでしょうか…」
王国でカイ達の変わりに調査をしているラクダレスは現在、兵士達の詰所に潜入していた。
相変わらずローブ男達と勝手に名付けたウォッシュ達の動向はつかめていないため、ラクダレスは王家などの国のことを調べていた。
今いる詰所にも資料はそれなりにあるため、潜入して同行を調べていたのだが、その中で最初は要らないと捨てていたのだが、あまりにも同じ様な事が多いため調べることにした物があった。それは兵士への行方不明者の捜索願いだ。最初はありきたりな行方不明だと思い、要らない情報だと思い捨てていたが、あまりにもたくさんの人がいなくなっているのだ。そしてそのすべての人が未だに発見されていないのだ。
「未だに発見されていない人の捜索願いが出されたのは…約1ヵ月前からですかね。徐々にですが、捜索願いもここら辺から増えてますね。これは調べる必要があるでしょう、一旦戻ってこのことを伝えましょうか」
ラクダレスは広げていた資料をしっかりと元通りにして、音も立てずに部屋からいなくなる。そして詰所から抜け出した彼は、今王国に潜入している帝国の騎士の元に異様な量の捜索願いが出ていることを伝えるため、夜闇に紛れる。
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