第208話
アディが立ち上がることが出来なくなってから数分、全員が警戒して待機しているとシャリアが「やはり」と呟くと魔力感知が出来る者達は上を見る。そのため魔力感知が出来ない者も上を見る。
「皆は下手に手を出すでないぞ!身の安全を第一にしろ!さて、迎えのようじゃの。じゃが私は返すつもりはないぞ?」
「へっ、言ってろ。俺より強い奴が来てくれたはずだからな」
空に魔力の反応を感じたため全員が上を見ると、そこにはシャリアが踏みつけてる魔人と同じ姿の者が羽ばたいて飛んでいた。唯一違うのは、踏みつけてる魔人が角と翼が黒色に対して飛んでいる魔人は赤色だった。
「人間などに負けるとは、情けない」
「そんな事言うんじゃねぇよ。こいつらあんが…」
「人間ごときとは言ってくれるの」
魔人同士の会話中にシャリアは踏む力を強めて黙らせてから、飛んでいる魔人に話しかける。すると魔人の顔が冷ややかな物に変わる。
「下等生物が私に話しかけるか…。お前のせいだぞ?お前が負けたからそうなったのだ。やはり下っ端には任せられんな」
「お前!言ってくれるなぁ!下っ端だと!?どこのどいつと勘違いしてやがる!」
「お前のことだ。人間ごときに負けるなど下っ端以外の何物でもないだろう。そんな奴は生きてる価値はない」
魔人が人差し指を立てて、抑えつけてる魔人の額に向ける。その人差し指に魔力が集まると拘束で魔法が飛んでくる。シャリアが咄嗟に蹴り飛ばしたおかげで魔人の額に当たることは無かった。そして魔法が当たった地面を見ると、綺麗に穴が開いていた。
「邪魔をするな人間。お主から殺すぞ?」
「今ので殺せんかった時点でお主もそこまで強くないの。やれるならやってみぃ?」
壁に埋もれている魔人だが、拘束が無くなっては危ないため、カイとミカがいち早く近づいて拘束していく。カイは手に氷を纏い首に当てる寸前で止め、ミカはカイから渡された袋から自分の槍を取り出し刃先を首にあてがう。
魔人が先程と同じ様にシャリアに向けて指先を向けると、指先から魔法が飛んでくる。シャリアはそれをガントレットで受ける。もちろんガントレットはその魔法を吸収する。吸収すると石が赤色に染まっていく。そのため相手の魔人が炎属性だと言うことが分かった。
「その
「その程度で厄介だと言っておるのか…。案外魔人も大したことないの」
シャリアが簡単な挑発をするが魔人はその挑発には乗らず空を飛び続ける。
魔人は吸収されるのが厄介だと言いながら魔法を撃ち続ける。だが、視線は演習場や観客席を見渡していた。
「そこまで周りを見られると嫌じゃの」
魔人の意識が一番途切れたと思ったタイミングでシャリアはガントレットに溜めていた魔力を解放させる。すると魔人が撃った物と同じ物が魔人に向かって飛んで行く。
意識が反れていたこともあり咄嗟に避けた魔人はよろける。シャリアはチャンスだと言わんばかりに素早く袋からナイフを取り出し数本投げつける。その数本は全て魔人に当たり、よりよろけるが落ちることは無く飛び続ける。
「お主は少しはやるようだな。今日は引くとしよう。だがただで引くのはつまらん」
「皆!防御体勢じゃ!」
魔人は両手を広げ、先程から撃っている高速の魔法を一斉に兵士や騎士に向かって撃ち始める。
シャリアは持ち前のガントレットで防ぐことが出来るが、魔力がつきかけているラウラと戦闘が不得意のリングには防ぐ術が無いため、すぐさま2人を守るように動き出す。カイは相手が炎属性だと言うことをシャリアのガントレットを見て分かっていたため、目の前に青い炎で壁を作り炎を吸収していく。それなりに大きく作ったためミカと魔人も守っていく。他の騎士や兵士は観客席などの物陰に隠れたり縦や魔法で防いでるが、盾は貫通してしまい負傷している者がちらほら現れていた。
魔人は魔法を撃っている間にカイ達が守っている魔人に向けて急降下し始める。シャリアがそれを許すはずもないが、シャリア達にだけ集中的に魔法を撃つため守るために動けなかった。
カイは作っていた炎の壁を解除し、魔人の真横に立って迎撃体勢に入る。
魔人はカイをどかすために魔法をカイにも集中的に撃つが、カイは腕に纏った青い炎で全て吸収していく。魔人はそのことに驚きながらも接近し続ける。魔法では効果が無いと踏んだのか、カイのことを飛ばすために腕を薙ぎ払って殴り飛ばそうとする。カイはその腕を真正面から殴り、逆に飛ばす。未だに飛んでいる魔人を地面に落とすためにカイは上から殴り落とすようにするが、察知した魔人は後ろに飛んで避ける。だが、カイに殴りかかったためにシャリアへの攻撃が疎かになっていたため、シャリアが後ろから接近していた。それに反応できなかった魔人は地面に殴り落とされる。勢いがかなり乗っていたため、魔人を殴っただけでは止まることが出来ずカイの隣まで滑ってくる。魔法の一斉攻撃が終わったため全員が地面に倒れている魔人を見る。
「シャリアさん、あんなのくらってたんですか?すごい手が痺れそうだったんですけど…」
「そうでもないじゃろ。それよりも2人で早く終わらせるぞ」
「わかりました」
カイは痺れそうになった腕を軽く振って元に戻し、すぐに構えだす。シャリアもなんともなかったように立ち上がる。
魔人はうつ伏せの状態からゆっくりと立ち上がる。その顔は憤怒で染まっていた。
「低俗な人間がぁ!もう容赦はせん!」
魔人は怒鳴ると、持てる全力の速度でカイ達に接近する。先程までのやり取りでシャリアの方が強いと感じたのか、カイのことを殴り飛ばす。かなり速かったためカイは防御するしかなく、飛ばされないように踏ん張ったがあまりにも強い力だったため離れた壁まで殴り飛ばされ、瓦礫の中に埋もれる。飛ばされた壁の近くにいた騎士と兵士がカイに急いで駆け寄る。
殴り飛ばした魔人は今度はシャリアのことを殴ろうとしたが、シャリアが先に魔人のことを殴る。殴り飛ばす勢いで殴ったのだが、倒れている魔人より強かったため飛ばすことは出来ず、軽く怯む程度だった。シャリアは怯むだけだったことに驚かずに、そのまま殴り続ける。魔人も魔人でその猛攻を受け流すことは出来ず、受け続けるしかなかった。
シャリアが攻撃し続けている間にカイは瓦礫を押しのけ出てくると、手に再度炎を纏わせて魔人に向けて走り出す。駆け寄って来た兵士達が大丈夫か聞いてきたが、カイは大丈夫だと言って魔人の背中目掛けて走り出した。魔人は後ろから来るカイをどうにかすることが出来ず、横腹を殴られ体勢を崩す。
シャリアが前から、カイが背中から攻撃する。カイは飛ばれたら厄介だと思い翼を氷漬けにしていく。魔人は前から来るシャリアの攻撃は防いでいるが、カイの攻撃までは防ぐことが出来ずどんどん消耗していく。
魔人はこれ以上攻撃をくらうわけにいかないと判断して、氷漬けになった翼を無理やり広げ、高く飛ぶ。
シャリアとカイは戦闘体勢のまま上にいる魔人を見る。魔人の翼はボロボロになっており、飛ぶのがやっとと言ったところだった。
「仕方ない。逃げるぞ」
魔人が誰かに言うように叫ぶと、魔人はラウラ達目掛けて魔法を撃つ。カイは急いで駆け寄り、その炎を吸収する。魔人はその隙に飛んで逃げる。カイは魔人に向かって魔法を撃つが、まるで見えてるかのように魔人は避けて逃げて行く。
「え!?」
魔法を撃ち続けていたカイだが、ミカの驚いた声が聞こえたため撃つのを止めてミカの方を見る。すると魔人の胸から剣が生えていた。その剣が消えると、魔人が吐血し始めたため自分の意思でしたわけではないと分かる。
念のため離れたり地面の下を魔力感知で探したが、誰が剣を使って魔人の胸を貫いたのかは分からなかった。
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