第206話
演習場内で黒色のローブを被った少女が暴れている時、カイとミカは反対側の入場口ついていた。そこには結界を何度も何度も殴りつけてるシャリアの姿があった。
「止めるんじゃ!!止めろ!!」
シャリアはそう叫びながらガントレットを装着した拳で殴り続ける。よく見るとグリーヴも装着されていた。
到着したカイ達も演習場内の光景を見ると、生徒の1人が少女に馬乗りにされており、生徒の捥いだ片腕を少女が持っている状況だった。その過激な光景にミカは咄嗟に口に手を当てる。
「シャリアさん!落ち着いてください!」
「落ち着けじゃと!?無理に決まっとろう!」
止められてもシャリアはずっと結界を殴り続けるため、カイは羽交い絞めにして止めようとする。
「離せ!離さんか!!」
「ラウラが本気で撃ってもビクともしなかった結界ですよ!無策に攻撃したって壊せないですよ!」
カイが説得しようと声を上げるが、シャリアは聞く耳を持たずに暴れて抜け出そうとする。
シャリアが抜け出そうとするのをカイとミカが止めていると結界が消える。それに驚いた2人は力を緩めてしまい、シャリアが抜け出して演習場に入っていく。2人も遅れて演習場に入っていく。
演習所の地面は赤くなっており、その真ん中にその光景を作った少女と、フードを取った魔人がいた。
「お前達、やってくれたな。覚悟はできておるんじゃろうの」
シャリアは赤くなった地面を歩いて行く。そんなシャリアは眼中に入っていないのか、魔人は動くことなくにやけた顔でカイのことを見続ける。少女は顔を下に下げて地面を見ている。
「おいおい、お目当てが自分から来てくれたじゃねぇかよぉ。その魔力俺にくれよぉぉおお!!」
魔人がカイに向かって跳びかかってきたためカイは迎撃体勢に入るが、魔人はシャリアによって止められた。
「これ以上、私の生徒に手を出すのは許さんぞ!」
「邪魔すんじゃねぇよ、ガキが!!」
殴り合うが、2人とも拳を拳で止めるやり取りが続く。だが、それはシャリアが押しているように見えた。
シャリアが魔人の相手をしているため、カイ達は少女の相手をしようと構える。
少女は少しだけ顔を上げてカイ達を確認すると、先程の魔人と同じ様にカイに跳びかかる。だが、それを魔人を殴り飛ばしたシャリアが横から殴り飛ばして止める。
「2体1で十分じゃ!カイ達は下がっておれ!」
「あぁ?邪魔するだけじゃなくて嘗めてんなぁ。少し本気出してやるよ!」
魔人はそう言うと体内にあった魔力を解放したのか発する魔力量が増える。その魔力量はカイ達が初めて会った時より減っていた。
「カイが言ってた通りかなり魔力が多いようじゃの。じゃが、技術はさほど高くないように思ったぞ」
「生意気なガキだなぁ!さっきの奴らみたいに殺してやるよ!」
「シャリアさん!俺達2人でもう1人の相手をします」
「ダメじゃ!お主らは…」
「喋ってていいのかよ!」
シャリアがカイ達を止めようと声を上げると、それを魔人が邪魔する。さっきまでよりも確実に強くなっており、シャリアは先程と同じ様に殴り飛ばすことが出来なかったため魔人に付きっ切りになってしまった。
演習場に壁側まで飛ばされた少女は倒れていたため、ゆっくりとした動作で四つん這いに戻る。そして、今度はミカに跳びつく。その速度はミカが高速移動を使った時よりは断然遅かったが、魔力を纏って走るよりは速かった。
高速移動よりは遅かった上に魔力感知を使っていたため、ミカは紙一重で避けて先程と同じ場所に蹴り飛ばす。
「カイ、気づいてる?」
「分かってる。こんなの見たこと無い」
カイ達が相手をしている少女が何故こんなに早く動けているか、それは魔力の使い方にあった。普通、自分の体に纏う魔力は一定量で体の周りに停滞されるはずだ。だが、目の前にいる少女は体内から無造作に魔力が出ていた。それが加速を助けているの様だった。
「それに魔力の在り方がおかしいよ。体内に留められてない」
「大量に魔力があるけど、あんなのすぐになくなっちゃうよね」
2人が思ったことを言い合ってると、蹴り飛ばした少女が再度跳びかかってくる。カイは手に赤い氷を纏い前に出す。すると、少女はその手を握って来る。カイは手に力を入れて受け止めるが、少女の握力がとても強く握りつぶされそうになるため手と氷を切り離してすぐに引く。カイは同年代と比較すると、他の人よりも鍛えてるためか筋力が強くなっていた。その上で、魔力を纏うのがほぼ完ぺきに出来ているため握力は他より断然強いはずだった。そんなカイが力負けをして引くしかなかった。
少女の手には氷だけが残り、握られている氷は握力だけで簡単に砕かれる。砕き終わった少女がカイのことを追っかけようとしたため、ミカがまた蹴り飛ばす。
「火傷してるはずなんだけど…。痛覚が無いみたい」
「それより手大丈夫なの?!」
「それは大丈夫。握りつぶされる前に引いたから」
蹴り飛ばされた少女はまた四つん這いに戻る。
「出てる魔力が何か影響して筋力は強くなってるんだと思う。それしか考えられない」
「あんな駄々洩れな状態で魔法は使えないだろうもんね」
「力が強いだけで、動きは単純だから俺達でもどうにかなるはず」
「分かってるよ!」
凝りもせず、同じ様に跳びかかってきたためミカが高速移動を使って接近する。そして今度は壁にではなく、かかと落として地面に蹴り落とす。
地面にうつ伏せに倒れた少女をミカが下半身に、カイが上半身に座って抑え込む。
魔力を解放した魔人と戦っているシャリアは、防戦一方になっていた。
魔人が繰り出してくる拳をシャリアは同じ様に拳を出して止める。だが、時々拳が間に合わず受け流すようになっていたため、魔人は自分が有利だと確信していた。
「オラオラオラオラ!どうだよ!魔力使っただけでこれかよ!」
「黙っとれ。うるさいぞ」
シャリアが心底うるさそうな顔をすると、次の瞬間、今まで以上に鋭い拳が魔人の腹に入る。鳩尾に入ったため魔人は膝をつく。
「いくら力が強くなっても元は同じじゃからの。少し戦えば分かるわ」
シャリアが視線をカイ達に送ると、少女を押さえつけている状態だったため安心してホッと息を吐く。
「まだ終わってねぇよ!」
安心して油断していると思った魔人は後ろからシャリアのことを魔法で攻撃する。だが、シャリアはガントレットでそれを吸収する。魔法が突然消えたことに驚いている魔人にシャリアは顔面に蹴りを入れる。あまりにも強い衝撃だったため、魔人は地面にうつ伏せで倒れる。
シャリアは魔人は拘束する術が無いため、背中に乗り抑え込み、カイ達に声を張って話しかける。
「2人とも大丈夫かの?」
「大丈夫です!私もカイもどこも怪我してないです」
「そうか。カイ、そやつの正体を知るためにローブを取ってくれんか?」
シャリアに指示された通り、カイは少女のローブを触る。すると少女が一層暴れ出すが、カイ達は力づくで抑え込む。カイはローブを握り、勢いよくフードを取る。カイ達は上に乗っていたため顔はしっかり見えなかったが、見えた髪と横顔を見て驚いた。シャリアからは顔をしっかりと確認できたため、シャリアは2人以上に驚いた。
黒色のローブを着て暴れていたのは、カイ達のクラスメイトのアディだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます