第194話
「…で、暴れた冒険者どもを捕まえたのが、フラージュじゃったと」
「たまたまですよ。本当に」
他の人からの話しもあったためフラージュは悪くないのだが、一応話を聞く必要があると言われたため詰所での尋問を受けると、シャリアと偶然会ったため今は2人で詰所から出ようとしていた。
「やっぱりすごく忙しそうですね」
「そうじゃの。だが、来た時よりも良い顔をしとるよ」
詰所の中では兵士達が数日前から忙しく動き回っていたが、今日は全員顔色が良くなっていた。それも帝都から騎士達が来たからだろう。
「私はつぶし終わったらすぐ帰ってしまうが、騎士達は当分の間残るからの。アベルトもいずれ落ち着くじゃろ」
「そうですか…。そう言えば、今日捕まえた冒険者が前に組織がどうたらって言ってましたよ。もしかしたらエビドかもしれません」
「そうか。こっちで調べてみる」
それ以上話すことはなく、フラージュは再度宿に向けて歩き出した。
翌日、シャリア率いる騎士達はある商会が持っている大きな屋敷の前に来ていた。ラウラも行くと言ったが、詰所の防衛を手薄にするわけにもいかないためラウラは詰所に待機をしていた。
保護した商人の話しによると、ここがエビドの組織本部でボスもここにいるとのことだった。
そして今日もシャリアは戦うためグリーヴとガントレットを装着していた。
「時間との勝負じゃ。速やかに捕縛して壊滅させるのじゃ」
騎士達が敬礼したため、ラウラは腕に力を込める。そして振り返って屋敷の扉に向かって跳ぶと、扉を殴り飛ばす。
「突入!」
そう叫ぶと騎士達が一斉に中に入っていく。
屋敷内は悲鳴が飛び交う。中には普通の職員もいたが、職員に扮している構成員もいるかもしれないため全員捕縛していく。
そんな中、シャリアはどんどん奥に進んでいく。進む中で魔力感知を使うと、奥に逃げる者達がいたため、それを追いかける形で進んでいく。騎士の一部もシャリアの後をついて行く。
途中で地下に入り障害物もあったが、シャリアは全て力だけで壊して進んでいく。構成員ももちろん出てくるが、どれも強くなかったため、一瞬で無力化していく。
「マジかよ。来ると思ってたが、はえぇな」
一本道の細い通路で男の声が響く。騎士達が戦闘体勢に入る中、シャリアだけはかまえずリラックスしていた。
「お主、もう戦えるようになったのかの?今日は急いどるから手加減は出来んぞ。骨折でも半殺しにでも捕まえんといけんからの」
暗く見えなかった奥から出て来たのはジャンキーだった。ジャンキーの体のあちこちには包帯が巻かれている、痛々しい姿だった。
「あれで手加減かよ…。それより昨日の強い魔法使いはいないのか?」
「それを知ってどうするのじゃ。お主には関係ないじゃろ」
「いや、関係あんだよ。今頃アサシンを救出するために詰所に大量に人が押しかけてるぞ?」
「なら安心じゃの。お主の言う強い魔法使いは詰所じゃ。その上、あれは集団を相手にする方が得意」
シャリアがそう言うと、ジャンキーはやっぱりなと言うような顔になる。そしてジャンキーの後ろから多くの足音が聞こえ始める。
「やっぱりなぁ。救出は失敗か。俺はボスに報告して来る。あんたらはこいつらの相手してくれ、報酬は弾むぞ」
ジャンキー後ろを見ると多くの冒険者が居り、その間のかき分けてジャンキーは奥に消えて行く。
「冒険者達じゃの。金で雇われたか。私はあいつを追いかける。お前達はこいつらを全員捕まえるんじゃ」
指示を出すと、シャリアは敵に突っ込んでいく。狭い道と言うことで、敵は手前の人しか魔法を撃ってこない。撃ち込まれたのは炎と水、闇の3種だったため、シャリアは闇を吸収して、残りの2つを壁を走って避ける。そして相手の前に着くと、思い切り殴り飛ばす。後ろにいた冒険者たちも巻き添えにして飛んで行くため、道が出来る。シャリアはその道を進んでいく。
構成員と冒険者たちを鎮圧しながらシャリアは単独で進んでいく。途中闇の魔法だけは吸収をして進んだため、ガントレットについている石は黒く輝いている。
進むと豪華な扉があったため、シャリアは突入した時と同じで壊して中に入る。
部屋の中には数人の構成員。眼鏡をかけて、いかにもインテリだと見える男。膨よかで鎧を着ており、人1人が隠れるほどの大きさの大盾を持った男。そしてインテリ男の隣で豪華な椅子に座る、金髪で赤い目を持った男がいた。
「ここまで1人で来たか。あんた何もんだ?」
「お主らを捕まえにきた者じゃよ」
「ボス、この者はウィリティ学園の学園長です。この者を捕まえて人質にしましょう!」
「博識じゃの。お主がコマンドか。そして鎧を着てるのがガーディアンかの?」
「ねぇコマンドー、博識って何ー?」
「あなたは相変わらずバカですね。今はそんなこと良いんですよ。まずはあそこの侵入者を捕まえるのです」
「んー?ボス、どうすればいいー?」
「捕まえなくて良い。殺す気で行け」
「分かったー」
ガーディアンと言われた男が走り出すと、部屋が軽く揺れる。構成員たちもガーディアンに続いてシャリアに向けて走り出す。
シャリアは一番前にいるガーディアンに片手分の闇を飛ばすと、ガーディアンは大盾で防いで、その状態のまま突進して来る。シャリアがそれを真正面から殴る。すると、大盾が音を立てて砕けた。
「なんでー!?壊れちゃったー!?」
大盾が壊れて怯んでいる隙にシャリアはガーディアンの顔面に闇をぶつける。すると、目の部分に闇がへばり付く。
「ま、前が見えないよー!怖いよー!」
闇によって前が見えなくなったガーディアンはその場で手を振り回して暴れ出す。シャリアは簡単にそれを避けるが、構成員たちは避けることが出来ず、どんどんガーディアンに飛ばされていく。
「ガーディアン!何してるんですか!暴れないでください!」
「コ、コマンドー!そっちにいるのー!」
コマンドの声が聞こえた方にガーディアンは歩き出す。
「と、止まりなさい!こっちに来るなぁぁああ!」
コマンドは声が荒げるがガーディアンが止まることは無く、ついにはボスとコマンドの所に来てしまう。
ガーディアンが横に手を振り払うと、その手はコマンドにぶつかる。そして、振り払った先にはボスがいる。そのままボスもガーディアンに殴られると思ったが、ボスはコマンドの頭を掴み片手でガーディアンの手を止める。その際にコマンドの頭がつぶれボスに返り血がかかる。ボスはゆっくりと立ち上がると、ガーディアンの腕を引き、体勢が崩れたガーディアンを蹴り飛ばす。
「やっぱりこいつらは使えないか。信じられるのはアサシンだけだ」
「アサシンのことは信用しとるんじゃな。コマンドもガーディアンも同じ部下じゃろ」
「所詮こいつらは駒だ。エビド再興のな。だがアサシンは違う。あいつは俺にとって必要な存在だからな」
「だから詰所に構成員を送ったと」
「ん?なぜ知っている。…ジャンキーか、裏切ったな。あいつは相変わらず自由だ」
そう言うボスの顔は悲しそうでも嬉しそうでもあった。
だが、すぐさま真剣な顔になり拳を握り構えだす。
「構成員のほとんどが捕まったみたいだな。こうなったらエビドの再興は今すぐには無理だ。また構成員を集めるとするか。…が、その前にアサシンを返してもらう」
「そこまで惚れこんどるのか。じゃが返すわけにもいかんの。お主を捕まえて一緒の牢にいてもらうとするかの」
「俺を捕まえられたらそれで頼むよ!捕まえられねぇだろうがな!」
鼻で笑ってから答えたボスは、シャリアが拳を構えるのを見て走り出した。
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