第190話
カイ達と別行動をし始めたラウラは、既に分かれてから6日経っていた。その間ずっと情報を集めるために街中を巡回していたが、少ししか情報が集まらなかった。
ラウラが参加してから最初の3日程は兵士達もまだ元気が良く活力があった。だが、普段よりも多い事務仕事、街の巡回、逮捕者の続出、さらには捕まえた者の尋問、牢屋に収監できなくなった逮捕者の見張りと、たくさんの業務を過ごしている内に何人も体調を崩したり倒れたりなど起きていた。普段なら非番となっている者達も呼び出して常に警戒態勢を保っていた。
そしてラウラは巡回だけしていた。事務作業などはさすがに兵士がやらないと問題だということからだった。ならば牢屋や逮捕者の監視をと思ったが、もしも逃がした時に問題なために無しとなった。他の仕事も兵士で無ければ問題が起きたときに対処が出来ないような物だったため、ラウラは巡回だけをしていた。
そんな巡回中、ラウラは魔力感知で人気のない路地裏に反応があったため、行くと1人の男が緑髪の女性に殺されそうになっていた。ラウラは後ろから素早く女性を気絶させると、男の方を見る。その男は見栄えは普通の商人だった。
ラウラが見た瞬間に男が焦りながら逃げ出したため、ラウラは後ろから強風を当て気絶させた。
だが、この商人は只者では無かった。そのため兵士の安全を確保するためと、ラウラが捕まえたということで特別に尋問に同行することが許可されたため、ラウラは今尋問室にいた。
「それで?俺を捕まえた嬢ちゃんも一緒にとはなぁ。ここはいつから遊び場になったんだ?」
手錠を付けられ、椅子に座らされている商人は下品に笑いながら両手で前にある机を叩く。そんな様子でも兵士は冷静でゆっくりと口を開く。ラウラはただ静かに行く末を見守る。
「潔いですね。私も最初見たときは普通の商人かと思いましたよ。それが裏社会ではとても有名な商人さんとは…。人は見かけによらないですね」
「ハッ!よく知ってんじゃねぇか。やっぱり兵士ってのは勉強が出来んだなぁー」
「…あなたに聞きたいのは1つだ。なぜ襲われていた護衛もいただろ」
「なぁ、俺はどんくらいでシャバに出れんだ?」
「質問は受け付けてない。さっさと答えろ」
「教えてくれてもいいだろぉ~?」
商人がそう言って机に体重をかけて身を乗り出した瞬間、机が綺麗に真っ二つに割れ、商人が地面に倒れる。地面に倒れた男の頭を地面に押さえつけるようにして兵士が聞く。
「こっちは忙しいんだ。あんたが聞いてた優しい質問はしてらんない。さっさと答えろ。俺達はお前が死んでも困らんからな」
「お、おいおい冗談だろ。殺すのかよ?」
「あぁ?あー、言ってなかったな。俺はここのトップでな。いくらでももみ消すことが出来んだよ。あいにくお前を捕まえたのは人通りの少ない路地裏。連行されるところはほとんど誰も見てない。しかも捕まえて来たのは俺の姪でな」
すると、兵士は男を頭を押さえつけたまま、ラウラのことを見る。ラウラは商人が見やすいように少しだけ近づく。
「なぁ、お前は今日誰も捕まえて無いよな?」
「ん。捕まえてない。私はただ職場見学に来ただけ。もう分かったし出て行って良い、叔父さん?」
「あぁ良いぞー」
ラウラが部屋から出ようと扉に足を向け扉を開けると、男がものすごい勢いで焦り出す。
「ま、待て!話す!殺さないでくれ!」
「ご協力感謝する」
地面に倒れている商人の頭を掴んだまま、兵士は無理やり立たせ椅子に座らせる。
商人は顔いっぱいに汗を浮かべながらしゃべり始めた。
「俺は今回武器と奴隷を買いてぇって依頼を受けて持って来たんだよ。だがよ、あいつらは武器の質と値段が気に入らなかったみたいでな。殺そうとしてきたんだよ」
「最初の取引でボスのお前がか?」
「あぁ、あいつらは他の商人になめられねぇための見せしめだとか言ってた。もちろんこっちも反撃したが、護衛どもはすぐにやられちまった。瞬殺ってやつだ。腕利きをそろえたはずなのに歯が立たんかった」
商人はここまで言うと目を瞑って諦めたように上を向く。兵士も腕利きの護衛が一瞬でやられたことに少なからず驚きを感じていた。
「あ?そう言えば…あいつあの女に…。同じ金髪。あの真っ赤な目。な、なんで忘れてたんだ?!あの女ガキがいたのか!!」
「あの女?誰のことだ。知ってること全て吐いてもらうぞ!」
男が真っすぐ前を向き、顔を驚愕一色に変え、突然怒りを含んだ声で叫んだため兵士が驚くと、突然部屋の壁が破壊されて何かが商人の男に跳びかかろうとする。
兵士も商人も反応できない中、高速でこの部屋に突っ込んできている反応をラウラは感知していたため、商人の前に風の壁を作り守る。
「ア、アサシン…」
壁によって守られたため襲撃者を視認した商人はそう呟いた。その襲撃者は、先程ラウラが気絶させ捕まえたはずの緑髪の女性だった。
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