第189話


「ここ2日でエビドを名乗る構成員どもが急増したんです」


 詰所に着いたカイ達はチンピラどもを捕まえたことと、帝都の騎士と言うことで話しを聞くことが出来た。

 その兵士に話では、前から集団で悪さをする者達がいたのだが、この頃まで過激では無かったのだ。それが2日程前から急に過激な事を始めたという。その中には窃盗や強盗もある中で、殺人をした者達もいた。そして2日で逮捕者は以前までの1.5倍にまで上るとのことだ。


「ここまで増えて大変ですよ。牢屋ももうそろそろでパンパンです。暴れる奴が増えたんで巡回する人も回数を増えましたし、牢屋を監視する奴も本来より増やさないといけないしで皆働きづめですよ…。まぁ昨日、帝都に応援を呼んだのでどうにかなるとは思うんですが…」

「捕まえた奴らはなんて言ってんだ?」

「どいつもこいつも名乗った奴は金で雇われただけみたいなんですよ」

「はぁ?」

「『エビドを名乗って暴れろ。そうすれば出所した時に大金をやる』って感じみたいです。中には借金をチャラにする代わりにーとかもありました。つまり名乗ってるだけですね」

「そうなのね。でも、そんなことする理由が分からないわね。そのことも報告したのかしら?」

「しました。早くても9日くらいで来ると考えてるので、それまで持ちこたえようって今朝決まったところです」


 兵士がそう言うと、アルドレッドが軽く笑う。どうしてか分からない兵士は不思議そうな、少し不快そうな顔をする。


「安心しろ。エビドの名前を聞いたんだ、もっと早く来るだろうよ。それに巡回には俺も参加する。そうすれば数人は休めるだろ」

「い、良いんですか!?何か任務があるんじゃ…」

「大丈夫だ。セレスがいるし、俺より強い奴がついててくれるからな」


 そう言ってアルドレッドはカイの頭に手を置いて荒々しくなで始める。荒々しかったが、カイにとってそれは気持ちのいい物だったため、素直に受け止めていた。


「ちょっと、勝手に決められたら困るんだけど?私だけでどうしろって言うのよ」

「大丈夫だろ?カイもミカもいる。その上ラウラさんもだ。それにこう言っちゃいかんが、こいつももう守られるほど弱くねぇ」

「そこまで弱くないのは私も分かってるわよ。でも任務は任務でしょ」

「んー…こう考えようぜ。街をこのままにしといたら危なくて観光なんてできねぇだろ?そんな街を歩かせる訳にはいかねぇ。でも観光したいだろ?」


 突然話しを振られたが、ルナもミカも街が安全だったらまだまだ観光はしたかったため頷く。


「だから俺が介入して早く解決できるようにすればいい」

「それだったら私でもいいじゃない。近接戦が出来るあなたが近くにいた方が安全でしょ」

「お前じゃダメだろ。街中で魔法撃ったら被害が出る。それじゃ元も子もねぇよ。その点俺は近接特化だし、俺がいなくてもカイがいる。だから俺なんだよ」

「2人とも、私がやる」


 2人が言い合いをしていると長かったため、間にラウラが入った。


「2人は任務があってダメだけど、私はカイ達のダンジョン探索の付き添いで来てるだけ。それも今は休み。私もリアに手ほどき受けてるから近接戦は出来る。つまり私が適任」

「確かに一理あんな…」

「でもいいのかしら?カイ達と観光できるの楽しみにしてたじゃない」

「ん。早く終わらせて帰ってくる」

「あのー、本当に手伝ってもらって良いんですか?」

「大丈夫。何すればいい」

「では俺について来てください」


 兵士に言われラウラは詰所の奥にいなくなってしまう。


 残されたカイ達は、観光するのを止め、数日は宿でおとなしくしていることに決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る