第187話
6階層に下りて、カイ達が一番初めに感じたのは異様なまでの悪臭だった。
悪臭がすることを知っていたとはいえ、ここまでキツイ物だとは予想出来ていなかったカイ達3人はカイは眉間に皺をよせ、ミカとルナの2人は鼻をつまむ。
「お前ら大丈夫か?まぁ直になれるだろ。それまで我慢だな」
「なんでアルは大丈夫なの…」
「まぁ俺らは昔こんくらい臭いダンジョンに入ってたからな。初めて入った時は涙目になったもんだ」
「あそこの方が臭いわよ。もう二度と行かないわ…」
セレスが心底嫌なそうな顔をしている中、カイ達はここよりも臭い所があるのだと分かり、ほんの少しだけ不快感が抜け、アルドレッド達の言うダンジョンには行きたくないと思う。
ここに出てくるモンスターはカイの炎が一番有効になってくる。だが今のカイの炎は青色で凍らせる物だ。そのため確実に効くか分からない。それを調べるためにカイが一番初めに戦うことになった。
カイを先頭にして進むと、ズルズルと引きずる音が聞こえる。それが何を引きずっているのか、事前にモンスターを知っているカイ達のには分かる。
この階層にいるのはゾンビで、グールと似ているがグールと違い死体を食したとしてもゾンビになることはない。その変わりグールよりも動きが早い。そして見た目もグールよりは腐敗していないと、それなりに違う所があった。
ゾンビは片足を引きずるようにしてカイ達に近づいてくる。グールよりも早いとは言え、やはり遅いためカイは簡単に炎を当てることが出来た。当たるとグールの体は青い炎に包まれる。壁にぶつかったり地面をのたうち回って炎を消そうとしているが、炎は消えず逆に勢いを増す。
しばらくすると、ゾンビが動かなくなったためカイが炎の手を伸ばして触れて消すと、ゾンビは氷漬けになっていた。カイは念のために砕く。
「しっかり効くみたいだな。にしてもあれで消えねぇとは…カイが敵じゃなくて良かったぜ」
「もっと勢いよく動けば消えると思いますよ?ただ水かけたら終わりですけどね」
「ゾンビはあれ以上早く動くのは無理よ。それよりなんで水はダメなのかしら?」
「実際に見た方が分かりやすいですよ」
カイは手のひらに青い炎を出してルナに視線を送る。すると、ルナは小さな水の塊を作り青い炎にゆっくりと近づける。すると、あと少しで当たると言ったところで水の塊が氷に変わる。
「かけたらすぐに氷になって鎮火なんてできないんですよ。それに解除した時に氷の部分が増えますしね。俺としてはありがたいんですけど」
カイは炎を消し、先程出来た氷の塊を握って砕く。
カイの魔法が有効的だと分かったため、今度はミカとルナも戦っていく。ミカの場合は雷を高威力で撃ち込むと簡単に倒すことが出来た。ルナの場合、闇をぶつけ動きが鈍くなったところで首をはねて倒していった。
そうこうしている間に7階層に着き、集団でゾンビが襲ってくるが、カイ達にとってはそれほど脅威では無かった。
ミカとルナは先程までと同じ方法で倒していき、カイは今度は氷を纏い倒していく。氷の手で数秒触れているだけでゾンビは燃えて行ったため、カイは触れて燃えたら次のゾンビに手を伸ばす、それを繰り返すだけだった。
8階層に着き、ようやく話題になっていたグールのいる8階層に着くことが出来た。
だが、グールの対処法はゾンビとさほど変わらないためそこまで苦労することは無かった。ルナだけは剣で倒さないといけなかったため核を見つけるのに苦労したが、動きはゾンビよりも遅いため、危なげなく倒していった。
淡々と倒していくと、早くも10階層に着くことが出来た。休憩スペースの為か先程まで感じていた腐臭は無くなり、全員の顔が緩まる。
十分に休憩出来たため扉を開けて中に入ると、9階層までは腐臭がしていたというのに、全くしない。
ボスとして奥にいるのは杖を持ったスケルトンだった。だが、普通のスケルトンと違い魔法使いが着るようなローブを着ていた。そして手に持った杖はスケルトン達が持っていたような簡易な杖では無く、先に骨が取り付けられていた。
扉が閉まり、そのスケルトンが杖を高く掲げると前に闇の渦が出来、中からアンデッドナイトが2体出てくる。
「もう呼んだよ…。俺がアンデッドナイトをやるよ。2人はリッチをお願い」
2人は頷いて杖を持ったスケルトン、リッチに向かって走り出す。途中アンデッドナイトが邪魔をするが、カイが氷を撃ちこんで止める。
スケルトンナイト2体と戦うことになったカイだが、先程まででたくさん戦ってきた多め、そこまで大変な相手ではない。カイは1体のアンデッドナイトに向かいながら、残った片方のアンデッドナイトの胸目掛けて氷を3発撃ち込む。
撃たれたアンデッドナイトは1発は防ぐことが出来たが、残り2発は防ぐことが出来ず、氷が胸を貫通して倒れる。
そして近づいたアンデッドナイトも薙ぎ払いで攻撃するが、カイはその剣を氷を纏った手で受け止め、残った手を胸に突き刺し貫通させる。
素早く倒し終わったためカイも2人に続いてリッチに向かって走り出す。
カイに道を作って貰った2人に向かってリッチは闇の塊を撃って近づけさせないようにする。ミカとルナはそれを避けるか、それぞれ雷か水で相殺させるようにする。そして互いに狙われていない間はリッチに向けて魔法を撃ちこんでいく。
リッチの魔法だが人が扱う物と違い、武器で叩き落とそうとうすると武器にまとわりついて、握っている手に触れてくるのだ。もしもその闇に触れてしまった場、一定時間目の前が暗くなって何も見えなくなってしまう。
そのため2人は武器で撃ち落とさずに魔法で落とすか避けていた。
そんなリッチだが、さすがボスと言うべきか、2人から魔法を撃ち込まれているというのに、ローブは傷ついているが体には魔法が当たっていない。
ミカ達が魔法の応酬をしていると、カイが魔法を撃ちこみながらリッチに突進を仕掛ける。
リッチもカイに向かって闇を飛ばすが、それはミカとルナが協力して相殺させていく。
カイは青い炎を纏いリッチに接近戦を仕掛けると、リッチは反撃をせず避けることしかしない。
カイが一方的に攻撃していると、リッチの背中にミカとルナの魔法が当たる。
リッチの体勢が崩れ、カイの方向に倒れてきたためカイはリッチの顔面に拳を打ちこむ。すると、ゾンビの時と同じ様に青い炎に飲まれながらリッチが壁まで跳んで行く。壁にリッチがぶつかると同時に先に進むための扉が開き始めた。
カイが近づき、炎を解除させるとリッチは綺麗に氷漬けになっていた。
袋の中にリッチを入れて、カイ達は休むこともなく奥の階段を下りて行く。
「踏破おめでとさん。カイ達は少ししか見えねぇが。あんなに小さかったルナがダンジョンを踏破するなんてなぁ」
「3人ともよく頑張った。おめでとう」
「アルは何言ってるのよ、まったく。ともかく、3人とも踏破おめでとう」
3人が言ってる通り、この『アンデッド』のダンジョンはここまでで、これより先の階層は無い。
一番下の階段を降りると、そこには地面いっぱいに描かれた魔法陣があった。
「どうする?私達が流した方が良いかしら?」
「ん-ん。私達がやるよ!初の踏破だもん」
ルナの言葉を聞き、セレスは頷く。
全員で魔法陣の上に乗ると、3人が魔法陣に魔力を流し始める。すると魔法陣が輝きだし、カイ達は目を瞑る。光が収まり目を開けると、そこは地上につながる階段の前だった。
先程の魔法陣は一定の場所に送る物になっており、これは全てのダンジョンの一番最後にあるとされていた。
事前に知っていたカイ達は特に焦るようなことはせず、地上に戻った。
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