第185話


 バラバラになったスケルトンを回収する中、カイ達がラウラに視線を向けると、未だに嬉しそうなオーラを纏っており、そこまで嬉しかったのかと皆が思う。

 だが、いつまでもそのようにはいかないためカイがしゃっきりさせるために話しかける。


「次からは俺達3人で戦うから」

「分かってる。私が倒してたら意味無い」


 そうは言っているが、目に見えて落ち込んでいるラウラを皆が見なかったことにして素材の回収作業を続ける。




 進むと、先程と同じ様に様々な武器を持つスケルトン達が出てくる。

 言った通りラウラはアルドレッド達と後ろに居り、問題が起きたときにいつでも動けるようにしている。カイ達はそんな3人の前でそれぞれ戦闘に入る。


 カイは両手に氷を纏い、1体のスケルトンに狙いをつけると、他のスケルトンに邪魔されないように、狙いのスケルトンを囲うようにして手を伸ばす。そして一周させると、片手は前からもう片手は後ろからスケルトンの頭を掴むように伸ばす。

 大剣を持っている個体だったため、目の前から来た手を大剣で砕く。だが、カイの狙いは後頭部から掴もうとしている手のため焦らない。

 魔力感知が出来ない。後ろに目がついているわけではないスケルトンは頭をガッシリ掴まれる。掴まれたことで気づいたスケルトンは大剣を離し氷の手を剥がそうと触れる。やはり痛覚が無いのか熱そうにせずに剥がそうとする。

 その隙にカイは前から手を伸ばす。気づいたスケルトンは手で塞ごうとするが、抵抗もむなしく胴体を掴まれる。両手でつかんだカイは、スケルトンの首をもぐようにしてゆっくり動かす。じたばた暴れたり、掴んでいる手を離させようと手で氷を殴りつけるが、びくともしない。少しすると、スケルトンの頭と胴体が分かれ動かなくなる。カイはスケルトンを手放し、周りに展開していた魔法を解き、次の標的に目を向ける。


 ルナは盾で守りながら剣を構えている個体に攻撃を仕掛ける。

 勢いよく打ち込むが盾ではじかれ、逆に攻撃されそうになったルナは後ろバク転しながら避ける。

 バク転をする前に自分のことを矢で射貫こうとするスケルトンがいたことを確認していたルナはバク転を2度続けてすると、自分の前に矢が着弾する。

 着地したルナはすぐさま片手だけで盾を持った個体に攻撃を仕掛ける。先程と同じ様に盾で防がれるが、ルナは防いだ盾の横で手をスケルトンに向けており、手には闇があった。剣で斬りつけようとしているスケルトンはその闇に気づかず、至近距離で闇をくらう。すると、動きが鈍くなる。ルナはスケルトンの剣を叩き落すと、首の骨と骨の間に綺麗に剣を入れ、首を落とす。

 ルナは首を落とすとすぐさま弓で攻撃して来たスケルトンの所に走る。

 スケルトンは近づいてくるルナに向かって矢を何度も放つが、ルナはしっかり見て避けるか、矢を剣で叩き落していく。

 スケルトンに近づくことが出来たためルナは闇をぶつける。すると動きが遅くなったためルナは先程のスケルトンと同じ様に斬り落とす。


 ミカはカイの様に魔法を撃つでも無く、ルナの様に攻撃を仕掛けるでもなくその場でスケルトンが来るのを待つ。そしてスケルトンとの距離が2m程になった瞬間に高速移動でスケルトンの真後ろに移動する。見失ったスケルトンが辺りをキョロキョロと見渡す頃には、ミカはスケルトンの頭を柄で殴って落としていく。倒したのを確認するより前にミカ次のスケルトンの頭を突きで落としていく。




 スケルトンの集団を倒し切った3人は素材を回収してからアルドレッド達の所に戻る。


「お前ら、1人ずつの方が早く倒せんじゃねぇか?」

「そうね。スケルトン1体倒すよりも早かったわよ?」

「確かに弱いモンスターだったら1人の方が早いかもしれないですね。でもボスだったら3人の方が早いですよ」

「ボスもカイだったら凍らせて終わり」

「それはボスの中でも弱めの奴だけだって。強いのは無理ってラウラも知ってるでしょ?」


 ラウラが軽く悪戯っぽく言うとカイは困ったように返事をする。するとラウラは視線を逸らして先に行こうとする。5人はそれについて行く。


 その後数度スケルトンの集団に遭遇したが、カイ達は戦うたびに倒すのが早くなっていった。

 そして3階層に下りた。




 3階層に下りて、耳を澄ませば鎧を着て歩いた時の様にカシャンカシャンと言うような音が小さく聞こえる。


「ここにいるのはカイとミカは会ったことがあるモンスターね」

「あの時はセレスさんが全部倒してくれましたけどね。私が魔力切れて大変だったんですよね」


 軽く話しながら進んでいくと、先程から聞こえていた足音が大きくなる。

 カイ達が魔力感知でモンスターの場所が分かっているカイ達が止まったためアルドレッドも止まる。


「どうする?距離があるから魔法で倒せるけど」

「ここはたぶん1人ずつの方が早いから、俺・ミカ・ルナの順番で回さない?」

「賛成ー。私はそれでいいけど?ルナは?」

「私1人で倒せると思う?」

「倒せるよ。危なくなったら俺とミカが入るし」

「分かった。順番に回そ」


 話しがつくと、角からその足音を出している者が姿を現す。アンデッドナイトだ。

 以前会った時と同じで頭は無く、全身が甲冑で包まれていた。


 頭が無いため目が無いはずなのだが、アンデッドナイトはカイ達の方向に体を向け突進してきた。先程カイが言ったように、このアンデッドナイトはカイが担当することになったためカイが前に出る。

 カイは以前セレスが倒したアンデッドナイトを見たことがあるため、弱点が胸だと分かっている。そのため氷を鋭くしてアンデッドナイトの胸目掛けて撃つ。

 アンデッドナイトは避けることはせず、吸い寄せられるように氷に当たると、氷は鎧を貫通する。その瞬間、鎧がばらけ地面に音を立てて落ちる。


「早すぎない?」

「弱点は分かったけど…。私倒せるかな?」


 数歩後ろにいた2人が言っているが、カイは聞こえないふりをしてアンデッドナイトに近づいて回収する。




 奥に進んでいると、またアンデッドナイトの足音が聞こえたため今度はミカが前に出る。

 アンデッドナイトがミカを認識して突進してきたため、ルナも同じ様に走り出す。

 近づいた2人は武器をぶつける。つばぜり合いが起きると、ミカは全力で押す。するとアンデッドナイトは力負けしてよろける。よろけたためミカは一番隙が出来ている

 足を切りつける。斬り落とすことは出来なかったが、深く傷をつけることが出来、そのためアンデッドナイトは立てなくなり地面に膝をつく。


 ミカは今度は腕を重点的に攻撃すると、動けなくなったアンデッドナイトの腕の渦中はどんどんと傷ついて行く。少しすると限界が来たため武器が持てなくなり腕が動かなくなったところで、ミカは槍で胸を貫く。


「あんまり人のこと言えないじゃん」

「本当にそれね」


 後ろでそんな話しをしている2人の声はミカには届かなかった。




 そしてまた進んでいるとまた歩いてくる音が聞こえたため、今度はルナが前に出る。ルナの顔は少しだけ緊張に包まれており、剣を握る手も力が無駄に入っているようだった。


「落ち着いて。カイのはさておき、私のは参考になるはずだから」

「そうだね。頑張ってくる!」


 隣でカイが何か言おうとしたが、ルナの笑った顔を見てなにも言わなかった。


 アンデッドナイトは突進してきたため、ルナもアンデッドナイトに向かって走る。だがミカの時とは違いルナは水の塊も撃って行く。アンデッドナイトはどれを真正面から受ける。威力はそれなりにあったが、体勢を崩しそうになりながらアンデッドナイトはルナに向かって走り続ける。

 多少時間稼ぎが出来たため、ルナは闇を作り、手のひらに維持していつでも撃てる様にする。

 アンデッドナイトは剣を振り下ろしてきたためルナは受け流すようにして剣をぶつける。すると、アンデッドナイトの剣が地面にぶつける。そのせいで、地面が小さくくぼむが、ルナはそんなこと無視して闇をぶつける。実態が鎧しかないアンデッドナイトもそれは闇はくらうのか、動きが鈍る。先程のスケルトンよりも効きが良く、手に持っていた剣を落とす。

 腕を何とか動かして胸を守ろうとするがそれは間に合わず、ルナが剣で胸を貫く。


「全然心配ないじゃん」

「私よりも早く倒してない?」


 2人がそう言っていると、ルナは倒したことが嬉しかったためカイとミカの方に笑顔で走ってくる。それを見た2人は唇を綻ばせる。

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