第181話


 森の中を進む中で数多くのポイズンビーを遭遇するがカイ達は安全に確実に倒していく。


 そして後ろからカイ達を追って木から木へと静かに移動している反応を感知する。

 その反応は一定距離を保ったままで、カイ達が止まると同じようにその場で止まる。

 カイが振り返ると、その反応は木の枝を巧みに使いながら接近して来る。

 近づいてきていることを感知したミカが試しに雷を撃ってみるとそれに簡単に当てることが出来た。雷が当たったために動けなくなったそれは木の枝から落ちる。落ちて来たのは猿だった。

 その猿は『クローモンキー』と言われるモンスターで、手の先の見ると少しだけ爪が伸びていた。その爪をよくよく見ると先が黄色になっており、少し湿っていた。クローモンキーの爪には体内で作られた麻痺する液体が浸透しており、掠っただけで数分は動けなくなると言われる強力な毒だった。

 地面に落ちたクローモンキーにルナがすかさず闇を生み出しでぶつける。3人は警戒しながらゆっくり、ジリジリと音を立てながら近づく。

 剣と槍の刃が届く距離まで近づいたが、クローモンキーが動く気配はなく、ずっと痙攣していた。ミカとルナが同時に首に武器を突き刺して絶命させる。


 このクローモンキーなのだが、爪がそれなりの価格でやり取りがされる。その理由がカイ達の持っている解毒薬だ。もちろん治りが良い解毒薬ほど高価になるのだが、クローモンキーの爪を使って作った場合、手軽に手に入る素材だというのに高価の物より少し劣る程度の効果になる。そのため冒険者ギルドは少し高い値段で買い取ってくれる。

 カイは袋の中に入れていた厚い手袋をつけてから丁寧に爪を1本1本綺麗に取っていく。他にもクローモンキーは素材になる部分があるため、カイはアルドレッドから教えてもらいながらはぎ取っていく。その間ミカとルナが周りの警戒をしておく。


 はぎ取りが終わったためカイ達は先程と同じ様に進んでいく。道中ポイズンビーとクローモンキーがたくさん出て来た。魔力感知を使っていたためカイ達に奇襲は聞かず、適格に倒していく。出て来たのがクローモンキーだった場合は爪を回収し、ポイズンビーに関してはその場で燃やしつくして進んだ。


 13階層、14階層は他のダンジョンと同様にポイズンビーとクローモンキーが集団で出てくるが、カイ達は問題なく倒していく。ただ、モンスターとの遭遇率は11、12階層とは比にならないくらい多くなったためクローモンキーの爪を集めることは出来なかった。


 素早く進んでくと15階層に着くことができたため、ここでいったん休憩を挟む。


「解体はアルドレッドさんが教えてくれましたけど、セレスさんもするんですか?」


 ここまで長々歩いてきたため、少なからず疲れていたため全員が水筒で水を飲んでいる。

 急に話しを振られたセレスは水筒から口を離して、ほんの少しだけ恥ずかしそうにしてから話し出す。


「それが元冒険者だったのに知識としてしか解体方法を知らないのよ」


 3人が少なからず驚いているとアルドレッドが笑い出す。全員の視線がアルドレッドの集まると、アルドレッドは自前で持ってきていた携帯食を食べていた。


「モンスターは血の匂いで近づいてくるのがほとんどだろ?俺らは冒険者の時に魔法道具マジックアイテムなんて持ってなかったからな。周りに警戒しながら素材を取って軽くするしかなかったんだよ。そんな時セレスの魔力感知を使えば安全に素材を取れるだろ?だから解体するのは俺の担当だったんだよ」


 2人の話しにカイ達3人が関心していると、存在感がとてもとても薄れていたラウラが話しかける。


「2人で解体すれば早い。どうしてしなかったの?」

「それはな…」

「アルドレッドの解体が完璧だったんですよ。それはもうギルドに称賛されるくらいに。さぁもう休憩は出来たわね。そろそろ行くわよ」


 立ち上がったセレスは全員のことを立たせる。立つ間にカイとミカが視線を合わせる。ミカはただただ頷く。


「セレスさん。私予想よりも疲れたみたいで、もうちょっと休憩したいです…」

「そ、そうかしら?足が疲れてるようだったらマッサージできるわよ?」

「そんなに慌ててどうしたの?こんなに慌てるなんて珍しい」

「そんなこと無いわよ」


 セレスがミカとルナに集中している間にカイはバレないようにアルドレッドの隣に移動する。ラウラも気になったのか知らないうちにカイの隣にいる。


「本当の所はどうなんですか?」

「ん?あー、知識はしっかりあるくせにメチャクチャ下手くそだったんだよ。さっき俺がギルドに称賛されるくらい上手いって言ってたろ?それも本当なんだけどな。セレスに言うなよ。あいつ人に知られたくないみたいだからな」

「ちょっと、アル何話してるの」


 アルドレッドとカイが密談をしていたことがバレてしまい、アルドレッドは顔は涼しくしているが内心慌てだす。ミカとルナは注意を引きつけられなかったため、セレスの後ろで慌てだす。


「ギルドに褒められるくらいだったんでコツとか聞いてたんです。最初に大き目に切り取った後に削ぐようにすると良いって教えてもらいました」

「そうなのね。ミカも大丈夫になったみたいだし、もう行きましょ」


 カイが咄嗟にごまかしたおかげで切り抜けられたため、アルドレッドはカイだけに聞こえるようにお礼を言う。それを聞いたカイは頷いてから扉に近づく。




 カイ達が扉を開け、アルドレッド達はそれに続いて中に入る。

 部屋は先程までの森とは違い、いつものボス部屋の様に洞窟に変わる。そして部屋に入った瞬間に気にするのはブーンブーンという音だった。

 音だけでそれが何か分かったが、カイ達は一斉に音の方に目線を向ける。そこには大量のポイズンビーがいた。

 ポイズンビーたちは何か守るようにして集まっており、その姿はデカい球体の様になってい居た。


 その球体の周りを飛んでいた数匹のポイズンビーがカイ達に気づき一斉に襲ってくる。

 カイ達はそれをそれぞれ魔法で撃ち落としていく。

 すると、それに気づいた球体になっている方が一斉に飛び出しカイ達を包み込むようにして飛び始める。

 その一瞬カイ達は奥に他よりも一回りも二回りも太っているポイズンビーを視認する。

 だがそれも一瞬ですぐにポイズンビー達に包囲されて見えなくなる。その中にはアルドレッド達もいた。


「ちょっと待った」

「何で!?」

「いいから」


 ポイズンビー達が撃ち落とそうとした所でラウラが待ったをかける。カイが反対したが、ラウラが力強く止めてきたため3人は魔法を撃つのを止める。


「なんで止めたの。蒸し殺されちゃうんだけど!?」

「カイ、特訓。カイが上手く出来なかったら熱いし寒い思いする。炎のドームを私達を覆うようにして作って。寒いくらいで」


 ラウラがそう言うことにはミツバチはドームを作り動かなくなっており、ドンドン暑くなっていく。

 カイは急いで言われた通りに自分達を覆うドームを作る。

 作ったは良いが寒くなり全員が震えだす。カイは赤い氷を作る時のイメージを少しだけ混ぜて寒いくらいに調節させる。数秒間苦戦したが、何とかうまくいきカイは一息つく。


「ん。よく出来てる」

「無茶言わないでよ…」


 ラウラは聞きながら杖を構える。するとカイの作ったドームを吹き飛ばす勢いで風を自分を中心として全方位に生み出す。カイ達が飛ばない程度の強風だったが、ポイズンビー達は飛んでいき包囲が崩れる。

 飛んで行ったためにカイ達3人とラウラがポイズンビー達を撃ち落としていく。


「ラウラ先生は休んでて大丈夫ですよ」

「包囲されたのは私が言ったから。少しは手伝う」

「そうは言っても、カイが上手く行かなくても倒せてましたよね」


 ラウラが参戦したために今まで以上に楽になったからか、ミカもルナも話す余裕がある。

 ポイズンビーを全て倒すと、先程見た大きな蜂が出てくる。

 その蜂もポイズンビーも同じポイズンビーなのだが、他の個体よりも強力な毒を持っているために女王して扱われていた。

 ミカとルナが同時に魔法を撃ち続ける。その間にカイが腕に赤い氷を纏う。

 大量に撃っていた一発が辺り、連鎖する様にどんどん当たっていく。10発も当たると女王は地面に落ちる。その瞬間カイが氷の腕を伸ばして氷で覆いつくす。


 すると16階層につながる階段への扉が開き始めた。

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