第182話


 16階層に下りたカイ達は周りの状況をしっかりと確認する。

 先程と同じで森の中にいるという部分は一緒なのだが、木々が明らかに大きくなっており、先程からずっとブーンと言う蜂が飛ぶ音が耳に入る。そしてその音はだんだんと大きくなってくる。


 カイ達3人は武器はかまえずに手だけ上に向ける。近づいてくる反応が上にいるのだ。木々をかき分けて現れたそれは、体が黄色と黒色で出来ており、歯を何度も何度もかみ合わせてガチンガチンと音を立てている。先程まで戦っていたポイズンビーと見た目は少し似ていたが、大きさが明らかに大きくなっていた。

 そのモンスターは『デスホーネット』と言う名前で、顎が特徴になっている。一度噛まれれば最後。倒したとしても二度と離れることはなく、引っ張って剥がすしかないという悪魔のモンスターだ。このモンスターのせいで冒険者を続けられなくなった者も少なくない。そして、その強靭な顎でもし武器に噛みつかれでもしたらいくら魔力で纏っていたとしても簡単に砕かれてしまう。そのため3人は武器を仕舞って魔法だけで戦うと決めていた。

 標的が見えた瞬間にカイは青い炎を、ミカとルナはそれぞれ雷と水を同時に撃ちこむが、デスホーネットは素早く飛び回り全て避ける。カイ達は魔法を当てることが出来ていないが、デスホーネットもカイ達の手数の多さに近づけずにいると、デスホーネットの動きが悪くなっていく。カイが掠るように撃っていた青色の炎によって徐々に動きが悪くなっていたのだ。すると、ミカとルナの雷と水が羽に当たりもぐ。

 羽が無くなったことで飛べなくなったデスホーネットは地面を歩きカイ達に突進して来る。だが、普段空を飛んでおり歩くのに慣れていないですホーネットが3人分の魔法を避けられるはずもなく、集中砲火でくらって倒れる。


「お疲れさん、じゃあ解体するか。今回は誰がやんだ?」

「じゃあ、私が…」

「2人ともつかれてるでしょ?私がやるよ」

「いや、危ないから俺がやるって。死んでるけど噛みついてくる危険性はあるし」


 3人で誰が解体をするか言い合いをしていると、ため息を吐きながらセレスが近づく。


「それなら3人で一緒にやったらいいわ。私とラウラさんで周りの警戒はしておくから」

「ん。解体できるようになるのは大事。解体しっかりして」


 2人に言われて、3人はアルドレッドにしっかりと教えてもらいながら

 デスホーネットの素材を回収した。




 その後、予想よりもデスホーネットと遭遇したため、警戒しながら休憩していた。

 そして、カイの残りの魔力量を考えて、次の戦闘で地上に戻ることになった。


「やっぱりドーム作るのはまだ無駄な魔力が大量に出るな…」

「それにデスホーネットは魔法でしか倒してないもんね。仕方ないよ」

「ねぇダンジョンで寝泊まりすることは出来ない?」

「ダメよ。それはダメって学園長に言われてるでしょ」

「ボスと戦いたかったなぁ…」


 帰りの分を考えず、20階層に行ってからテントを使って止まれば良いとルナは考えたが、それは危険と言う理由からシャリアとナキャブに許可はされていないためセレスがダメだと言った。それにルナは拗ねてしまう。


「ルナ、ごめんね」

「カイのせいじゃないよ。カイが在れ作らなかったら熱かったんだから」


 そこから少しやり取りしてから、6人は地上に戻り始める。




 16階層を歩いていると、ブーンと大きな音が聞こえる。そのと音は先程まで戦ってたデスホーネットよりも羽ばたきの音が大きい。それに耳を澄ませば何か液体が気化するような音も聞こえる。


「おいおいおい、マジかよ。運が良いのかわりぃのか」

「アルさん?」

「ルナ、ボスと戦いたいって言ったよな?」

「う、うん…」

「ボスではねぇが、デスホーネットの変位種だ。普通のよりもつえぇぞ」


 そして、現れたデスホーネットは少し紫がかっており、針から毒液を垂らしていた。


 カイ達はデスホーネットの時と同じ様に魔法を撃ちこむ。すると、デスホーネットは避けながら、毒液を飛ばして反撃して来た。

 その毒液をカイがすぐに氷の壁を作って防ぐ。


「俺が防ぐから2人で攻撃して」


 カイに言われ2人は間髪入れず攻撃する。だが、デスホーネットは素早く動き当てることが出来ない。カイが1回1回壁を作り守っていることと、2人が大量に魔法を撃っていることもあり、3人の魔力がだんだんと少なくなっていく。


 そこでルナが声を上げる。


「カイ!守らないで。毒液も液体だから私が水と混ぜて飛ばす!」


 ルナに言われた通りにカイはルナに飛んで行った毒液を守らない。ルナはその毒液に水をぶつけると、毒液と水は地面に落ちてしまう。


 もう一度失敗すると、ルナは3度目で毒液を水で覆うことに成功した。

 そして毒入りの水は速度が遅く、デスホーネットに当たらなかった。


「カイも攻撃して!毒液は私が防ぐから!」


 ルナに言われ、カイも攻撃に加わる。今回も青い炎で動きを鈍らせていく。

 すると、毒入りの水はデスホーネットの顔面にぶつかる。

 すると、デスホーネット苦しんで空をフラフラと飛び回る。前は見えていないのか木にぶつかるが、それでもデスホーネットは飛び続ける。


 カイ達は無駄には攻めず様子を見ていると、デスホーネットは地面に落ちて動かなくなる。


「こんな戦い方もあるんだな…。お前ら大丈夫か?」

「何とか。でもかなり魔力使っちゃったよ…」


 魔力が少なかったため、帰還はアルドレッド達にも協力してもらいながらカイ達は地上に戻った。

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