3章 アベルトと9つダンジョン
第177話
新しい学生生活が始まってから1ヵ月が経つ頃にはカイもミカも今の生活に慣れており、クラスに馴染むことが出来るようになっていた。
教室内で2人にルナが話しかけていたというのもあるが、一番の要因はカイと戦ったあの男子生徒だった。彼がカイは悪い奴ではないと言ったために、最初カイを疑っていた者達も安心してカイと話せるようになっていた。
そして今日もいつもと同じ様に始まると思っていたカイとミカは面食らった顔になる。
「さて、皆さんは知ってると思いましたが、自由期間まであと1週間です。何をするか決めといてください」
自由期間と言う知らない単語が出てきたため、カイとミカの頭の中はハテナで埋め尽くされる。その後は授業が行われたため、一度忘れることにして集中して授業を受けた。
休み時間になったためカイとミカはすぐにルナの所に行く。ルナも話すのを忘れていたと思っていたのか2人の所に来ようとしていたが、カイ達の方が先についた。
「朝、先生が言ってた自由期間って何?」
「ごめんね、言い忘れちゃって。自由期間は1ヵ月設けられてて、その間授業は無いの。その代わりに自分達で考えた何かを達成する、もしくは何か成果を上げるように努力する期間って感じかな」
「何かを達成…。本当に何しても良いの?」
「うん。なんでも、何かの研究をしましたとか」
「何しようか…。俺達研究って言われても特にそう言うのに詳しいわけじゃないしね」
「やっぱり初めてで分からないでしょ?だからさ私と一緒に行動しない?」
ルナの提案が魅力的で即決で良いと言いそうになったが、さすがに何をやるのか気になったためにその言葉を飲み込む。
「ルナは何をしようとしてたの?」
そう聞いてくるのを待っていたのか、ルナは笑顔になる堂々としだす。
「詳しい所はまだ決めてないけど、私はアベルトにある9つダンジョンを一定階層まで探索したいって思ってる」
ダンジョン探索でも良いとゆうことを知り、カイもミカの内心テンションが上がる。
「どう?2人も一緒にやらない?」
ルナの言葉に2人はすぐに頷いた。
期間中に何をやるか決まったが、基本的には帝都内での活動が主なため許可を貰うためにカイ達は学園長室に来ていた。
「うむ。アベルトの9つのダンジョンかの…。私も行きたいのー」
「ダメです。いつも以上に仕事があるんです。学園長に抜けられたら困ります」
キラキラ輝く瞳でサリーに懇願したが、すぐに却下されてシャリアは肩を落とす。すると、いつものように机に突っ伏してしまう。
「帝都外での活動ですので、こちらにサインをしてください」
サリーに渡された紙に名前を書いているとサリーは続いて話してくる。
「次にルナ様ですが、陛下には許可を取られておりますか?」
「はい、取ってきました。これがそれです」
持っていたカバンから丸められた紙を取り出すと、サリーは広げて読んでいく。
「分かりました。護衛にはアルドレッドさんとセレスさんでよろしいですね」
問題無いためルナが頷くと、シャリアは自分の席に戻り、何か探し始める。そして紙を見つけた後ですぐに戻ってくる。
「当日には学園から活動を確認する教員もつきますので、初日は学園に来てください。自由期間中アベルトでの活動を許可します。お三方でしたら問題無いと思いますが、問題を起こさないように気を付けてくださいね」
サリーが普段は見せない笑顔で言ってきたため、カイ達は一斉に返事をして学園長室を出た。
カイ達が部屋を出てもシャリアは机に突っ伏したままだった。
自由期間初日、始まるまでにしっかりと準備をしたカイ達は言われた通りに学園に来ていた。
門の前で待っているとルナが現れ、後ろにはアルドレッドとセレスもいた。2人は騎士でいるときの格好では無く、王国で活動していた時の格好になっていた。
5人で学園長室に入ると、そこにはシャリアとサリーの他にフラージュとラウラもいた。
「来たの。学園から出す教員は全員知ってる、この2人じゃ。ただ、2人ともこの期間にやることがあるからの。半月ずつじゃ。先にラウラ、残りをフラージュ、となった分かったの?」
「よろしく」
「よろしくね」
2人が同行するという驚きを感じながら、3人は9つものダンジョンに挑むためにアベルトに向かう。
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