第173話
「怪我は無いし、骨も折れてないよー」
少し気の抜けた声で診察を終えたリングが言う。それを聞いてミカとルナはようやく安心する。
「にしても、シャリアさんがグリーヴだけじゃなくてガントレットも使うなんてねー」
「リングさんもシャリアさんの
「知ってるよ。言って良いのかなー」
リングがそれとなくフラージュのことを見るとフラージュは首をゆっくり横に振った。
「
「段階、ですか?」
「そうそう。まず生身の状態。次にグリーヴだけ。その次がガントレットも装備した状態。最後に髪留め。つまり今回のシャリアさんは出せる最大限を使ってカイ君を相手にしたんだよ」
「でも髪留めは…」
「髪留めは本当に危険な時しかつけないですから。さすがに模擬戦では使えないですよ」
リングは2人の質問に答えながら診断書を書いて行く。シャリアについて答えているためか後ろにいるアルドレッドとセレスも興味ありげに聞いており、がんばって興味なさそうにしているがバレバレだった。
「にしてもとっても興味があるねー。もっと聞きたい?」
「聞きたいで…」
「俺は聞かないです」
突然声が聞こえたため一瞬皆驚き声がした方を見ると、カイが診察台から体を起こしていた。
「気分はどう?」
「…問題無いです。体も普通に動かせます」
「本当に大丈夫みたいだねー。それとカイ君、回復薬は短期間に飲みすぎないでね。効きが悪くなるから」
カイの様子を聞いてから診断書に何か書くと、リングはフラージュに渡す。それを見たフラージュは驚いた顔をする。何かフラージュが言おうとしたがリングはそれを無視してミカに話しかける。
「まぁ本人に聞いた方が教えてもらえると思うよ。それに聞きたく無い人もいるしね。ほら学園に戻った戻った」
リングはフラージュの背中を押して部屋から追い出す。フラージュを追い出すと、扉を開けた状態で待っているため出て行く。
治療院を出たルナはフラージュに話しかける。
「どうしてさっき驚いてたんですか?」
「…診断書にこれもつけられてたんです」
フラージュは出した紙には『診断料、今回は無しにしとくけどもうそろそろ倍にしますよってシャリアさんに言っておいて』って書いてあった。
「…リング先生も大変なんですね」
ルナは見なかったことにしてフラージュに紙を返した。
学園長につくと、来た時と同じ様にシャリアが机に伏せておりラウラは優雅に紅茶を飲んでいた。
「おー、やっと来たの。待っとったぞ」
「学園長、リンからです」
入ってすぐにフラージュが先程の紙を私に行くと、シャリアのだらけきった顔が絶望一色に塗り固められる。その間にカイとミカとルナはラウラのいるソファーに座る。
「なっ私に戦うなと言うのか?!死ねと言ってるのと同義じゃぞ!」
「私に言わないで下さいよ。リンに言ってください」
「あなたが強すぎて毎回誰も敵わないんですから。あんな毎回治療院に送られてたらそりゃ先生から文句来ますよ。ったくボコボコにされるこっちの気持ちも考えてほしいわ」
アルドレッドは始めの部分は聞こえるようにしっかり言っていたが、最後に部分は小さな声でシャリアに聞こえないように言っていた。目の前にいる3人と隣のセレスには聞こえていたため全員が苦笑いになる。その間に紅茶を入れたラウラが全員に渡していく。
「アル、聞こえて追ったぞ。今度また行くからの」
「なっ!勘弁しろよ!」
「嫌じゃ!そもそも弱いお前らが悪いじゃろ!今度みっちり鍛えてやる」
今度はアルドレッドは絶望しているとラウラが手を叩く。音が響き誰もが喋るのを溜める。
「何の話しをしに来たのか分からなくなってる。リア」
「そうじゃの。さてカイの入学じゃがの」
しっかりと椅子に座ったシャリアがここで息をのむ。そのせいでミカとルナが緊張しだす。カイは横目でラウラのことを見ると、涼しい顔して紅茶を飲んでいた。
シャリアはニヤッと笑い喋り出す。
「入学を許可する。学園生活を楽しむと良い」
「やったねカイ!一緒に通えるよ!」
「これからもっと楽しくなりそう!よろしくね2人とも!」
ただ、カイはずっと考えていることがあるのか喜ばすに真っすぐシャリアのことを見る。
「シャリアさん、俺は数日前にラウラから保護者になったって聞いてました。俺が学園長と戦う理由ってちゃんとした保護者がいないからでしたよね?もしかしてラウラはしっかりした保護者じゃない?」
カイの言葉にラウラの眉がピクッと動き、シャリアはすぐに話し出す。
「ラ、ラウラはしっかりした保護者じゃろ。お主が一番分かっておるじゃろ」
「そうですよね。じゃあなんで俺と戦ったんですか?」
他の者はカイから出るオーラによって黙って見守ることしかできない。シャリアもどうしようかと焦り出す。
「もしかして自分が戦いたいから戦ったんですか?」
シャリアは「うっ」と声を出す。
カイもシャリアが戦いたいから戦ったことに気づいていた。だが自分の願いをかなえてもらうためにもこれを声にだして認めさせる必要があった。
「そ、そうじゃの。私はお主と戦いたかったから戦ったの」
「言いましたね?」
途端にカイから出ていたオーラは無くなり皆が「へ?」と力の抜けた声を出す。カイは企みが上手くいき、悪戯が成功した子供の様な笑顔になる。
「戦いたくて戦ったなら、俺が戦いたいときに挑んでも問題無いんですよね?」
この言葉でカイが言わんとしてることが分かってシャリアは挑発的な笑顔を浮かべる。周り者も分かり、呆れたような顔になりながらもカイらしいと笑顔になる。
「あぁ、問題無いの」
「ならまた今度戦ってください。その時は今よりも強くなって必ず勝ちますから」
「楽しみにしておるの」
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