第172話
蹴り飛ばしたシャリアは足を蹴り上げた状態で固まっていたが、すぐに状況を理解して足を元に戻して急いでカイの所に駆け寄る。
そんなシャリアよりも先にラウラが既にカイの隣にいた。
「やりすぎ。ここまでやること無い」
「しょうがないじゃろ。手加減が出来んかったのじゃ。そもそもこれを使うのも久々なのじゃぞ?無理に決まっとろう」
シャリアがガントレットとグリーヴをユラユラとさせるとラウラは大きくため息を吐く。
「それほどカイが強かったのは分かった。それでもやりすぎ」
ラウラは自前の袋から回復薬を取り出し、カイが怪我をしている部分にかけて行く。すると火傷と霜が降りていた皮膚は見る見るうちに治っていく。
「にしても、結界を力づくで破るとは…。直してもらうからの」
「リアも手伝って。私だけのせいじゃない」
「私は戦ってヘロヘロじゃ」
「ほとんど魔力使ってないんだから大丈夫でしょ」
2人が言い合いをしていると、観戦席から駆け付けた5人がようやく到着する。
「シャリアさん、ラウラさん、カイは大丈夫なんですか」
「大丈夫。傷は治した。骨も大丈夫」
「それでも念のために運んだ方がいいだろ。俺が運ぶぞ」
アルドレッドは横になっているカイを担ぐと、リングのいる治療院に行くために歩き出す。
「そうじゃな。私もついて行こうかの」
「師匠はダメじゃないかしら?ラウラさんと一緒に結界を直さないと」
セレスに言われシャリアは苦い顔になりながらもアルドレッドを追いかけようと走り出す。だが、素早くラウラがシャリアに跳びつき抑え込む。
「離せーラウラ!我もカイの様子を見に行くのじゃ!」
「ダメ。結界が先。それより私じゃなくなってる」
シャリアが騒いでいる中、ミカとルナはセレスとフラージュに行こうと言われ演習場から出て行く。
アルドレッドを先頭に全員が演習場を出たのを見て、ラウラはシャリアを解放する。2人は力なく演習場に座り込む。
「何で行かせてくれなかったのじゃ…」
「どうだった?」
「カイのことか?これが無かったら危なかったじゃろうな」
そう言うとシャリアはガントレットとグリーヴを脱ぎだす。
シャリアが使っていた物はもちろん両方とも
ガントレットは魔法を吸収することが出来、それを任意で放出することが出来た。ただし、1度に吸収することが出来る属性は1つだけと言う欠点があった。
そしてグリーヴだが、単純に筋力を上げる物になっていた。そのためシャリアは常人では出せない動きと威力のパンチとキックを出せていた。だがこれにも欠点があり、
「髪留めをする程じゃなかった?」
「あれはあんまり使いたくないんじゃ。ラウラも分かっておるだろ。この後何かあったら対応できん」
脱ぎ終わるとシャリアは取り出した布で
「なんじゃ。1人だけ先に行こうとしてるのか?」
「結界を直しに行くだけ」
結界に魔力を送りながら直しているラウラの顔は、カイの成長を知れたことに嬉しく思い笑っていた。
「リアも早く手伝って」
演習場を出た5人は普通に街中を歩いていた。通りを歩いている人はどうしたことかと見るが、担いでいるのが騎士と知ると誰もが安心したように元に戻って行く。
そんな中、カイのことを心配そうに見る者が2人いた。
「ミカもルナも大丈夫よ。師匠とラウラさんが大丈夫って言ってたんだから」
「そうだよ。そんな顔しないの」
「まぁだがやっぱりカイはすげぇな。俺はあんな黒色のガントレット見たこと無かったぞ」
アルドレッドが言ったことに驚いた2人はその先の言葉に期待してしまう。
「私は見たことがあったわ。修業を付けてもらってた時にね。ただあれで戦ってる所は見たこと無かったわね」
「あれは団長、学園長の奥の手みたいのだよ」
この中では一番詳しそうなフラージュに視線が集まる。フラージュは1度咳払いをしてから話し出す。
「学園長には『三種の神器』って言われる秘密兵器があるんだよ。その内の2つがさっき見せたガントレットとグリーヴ。ミカに言っとくと全属性の中で光だけは戦うのに向いてないの」
「回復が主な役割だから?」
「それもあるけど、目つぶしとかくらいしかないの。もちろんライトボールとかあるけど、あれって威力ないでしょ?だから光属性の人達は戦うってなったら基本的に魔法じゃなくて武器で戦うんだよ」
ミカが思い返してみると、光属性の人はフラージュとリングしか知らないため特に言えることが無くなってしまう。
「学園長も光属性でその上魔力が少なめなんだよ」
魔力が少ないと言う事実はフラージュしか知らなかったため全員が驚く。
「でもあれって
「それは言えないよ。学園長に直に聞いて。でも本気の時以外は使わないって言ってたよ」
「つまりシャリアさんはカイのことを強者だと認めたからあれを使ったってこと?」
「そう言うことになるな。団長相手にも使ってなかったから、カイは団長よりも強いって判断されたんだろうな」
ミカとルナがすごいと思いキラキラした目でカイのことを見ていると、気づいたら治療院についていた。
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