第161話
「お2人とも今は言い争いをしている時では無いですぞ」
チェンが2人に話しかけたことで、言い争いを止める。
「シャリア様が来たところで、先程のカイ様の罪状についてでございます。フラージュ殿、先程のことは誠でございますか?」
「本当です。正直私達の方ではほとんどの情報を得ておりません。私はカイ君が王都に帰還した当日の朝、ワケの分からないデタラメな罪をかけられていると知り動いたのですが間に合いませんでした」
「問題は王国がそんなデタラメを使ってカイ君を捕まえようとした理由ですね。何をしようと…」
「パッと浮かぶのは2つ。1つはカイが対抗戦で平民なのに貴族に勝ったうえに、誰もかなわなかった帝国の生徒に勝ったうちの1人だったから。貴族に平民は敵わないんだと見せしめにするために捕まえて処刑しようとした」
考えを述べたラウラに視線が集まる。ラウラは全員の視線が集まったのを確認した後でもう片方の可能性話し出す。
「もう1つはただの王家の気分かもしれない」
「気分!?どうゆうことですか」
ルナが予想外すぎることに声を荒げる。かなり大きな声で言ったためうるさい物だったが、誰もがそんなことを気にすることなく、ルナと同じ様に驚いていた。そんな中でフラージュとシャリアが苦虫をつぶしたような顔になっており、シャリアは今にでも怒りが爆発しそうな雰囲気だった。
「あなた達が考えている以上に王国は汚い。特に王族は」
ラウラが言い切ると木が折れる音が聞こえる。皆が驚いて音がする方を見ると、シャリアが木製の机を叩き割っていた。
「すまない。少し席を外す。私に聞きたいことはラウラに聞いてほしい」
それだけ言ってシャリアは勢いよく部屋から出て行った。皆が驚いて固まっている中でラウラだけは悲しそうな顔をしていた。
「今は静かにさせた方が良い。話し戻すと、可能性は0ではないと思ってる。王族は昔から変わってないはず。悪い意味で」
「…それの確証はありますかな?」
「…リアには絶対に言わないで。リアは王都にある有名な貴族の娘だった」
シャリアの出生など聞いたことが無いため、全員驚く。そこには皇帝と皇后を含まれていた。
「陛下も知らなかったのですか?」
「父上から彼女は信用できると聞かされてな。その上、彼女は私が小さい頃から面倒を見てくれた。それからも信用してたから聞かなかったのだ。だが、王国関係では暴走する可能性があるから気を配れと言われてはいたが…まさかそんな過去があったとはな」
「リアはそのことを話したがらないから仕方ない。リアは冒険者になってからも家の仕事を手伝ってた。その時は私もリアも王国は良い国で役に立つことは積極的にやろうって思ってた。けど、仲間が出来て、私達を慕ってくれる冒険者が出来て、そのおかげで私達が知らなかった王国って言う物が見えて来た。でもそんなのは一部で、まだましな部分だった。私達は貴族だけが横暴で野蛮なんだと思ってた。けど、違った。根本は王族だった」
ラウラも過去に事を思い出してか、手と声にだんだんと力が入っていく。
「ある日、貴族の護送中に参加してた後輩が誰かに暗殺された。その子は私達を1番慕ってくれてた。だから徹底的に調べた。そしたら、護送中の貴族は王家に反旗を翻そうとしてて、後輩はそれに巻き込まれて死んだって分かった。私達は最初その貴族を恨んだ。だから押しかけた。そしたら王家が今までしてきた汚いことの証拠を見せて来た。それを見なかったら私達は今でも心のどこかで王家のことを信じてたかもしれなかった。そこには私達が予想もしなかった汚いことをしてた証拠がたくさんあった。…その中にはリアの家がかなりヤバイことをしてる証拠もあった」
皆が驚いた顔で固まっていてもラウラは話し続ける。
「私達は王国って言う物を信じられなくなった。貴族が悪いと思ってたら王家の方が汚くて悪いことをしてて、正直何を信じたら良いのか分からなくなった」
「…もう、それ以上は、大丈夫です。そのお話とシャリア様の態度を見れば一目瞭然です」
少しの静寂が生まれた後で、ラウラが意を消して話し出す。
「ともかく、カイが捕まったのは王家の誰かの気分のせいで殺されそうになった可能性がある。カイ、思い当たる?」
「そう言えば、王子が捕まってる俺を見て笑ってた、と思う」
「確定。カイは王子の気まぐれで殺されそうになった」
再度静かになりそうになったところでカイはフラージュに話しを振る。
「フラージュさん。俺のことは話さなくていいんですか?」
「え?話さないとだけど、今はそれどころじゃ…」
「確定したから問題ない。今回のことから王国の対処方法を考える方が良い。それは後で私達だけで話せばいい。今カイ達がいる間に聞くことがあるならそっちを聞いた方が良い」
「…わかりました。リン、持って来てるでしょ?」
「はいはーい。今出すよ」
リングは空いている場所に治療院でカイに使った
見たことのない色に先程治療院にいなかった者達が驚く。
「このことについて、カイ君からはラウラさんしか話せないと言っておりました。お教えいただけますか?帝国に危機があるかもしれない状態は見過ごすことは出来ません」
「…陛下。話してもいい?」
「あぁ、皆ここで話したことは他言無用だ。先程のこともだ。分かったな」
陛下のひと言で全員が頭を下げる。
ラウラは袋から例の紙を取り出す。
「カイの魔力が紫なのはこの
それからラウラは紙の能力を全員に話す。
「そ、そんな物が…。やはりダンジョンにはまだ分からない物がたくさんあるのですね…」
「もし、悪人に使われたら何人死人が出るか…」
全員が恐怖で固まっていると、ラウラはまた話し出す。
「カイに私は氷の魔力を渡した。元あった炎の魔力と氷の魔力が反発したから私は何とかして大丈夫な状態にした。その大丈夫な状態が2つの魔力を混ぜること。だからカイの魔力は紫色になった」
「…実はここに来るまでにカイ君は普通の氷と炎を出せなくなったんです。何か分かったりしますか?」
「私が魔力を見た時よりも色が濃くなってる。カイ、不調はある?」
「無いよ。前よりも動かしやすいくらい」
「…たぶん体に魔力がなじんだ?ちょっと分からない。調べたら言う」
「お願いします。カイ君、色々疑ったり、危険人物認定してごめんね」
「大丈夫ですよ。フラージュさんの立場だったら仕方のないことですから」
「じゃあ、カイ君のことが分かったから、今度はミカちゃんのことだよね。姉さん私にも教えてくれてなかったんだから!教えてもらうよ!」
「それは夜に話すって。カイ君も今日は家に来て貰って良い?今まで秘密にしてたことも話すから」
その後はフラージュから王都について調べたことと、今王都にいる者達からの報告書を読むことで今回の会議は終了となった。
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