新しい環境と学園生活再び
第157話
森での出来事から数日が経ち、ようやくカイ達は帝都『パシフィズム』に来ること出来た。昼間に着くことが出来たため門の前には商人や冒険者で出来た列があった。遠目で見ても1人1人しっかりと検査しているようだった。
「2人とも仮面外すように言われると思うけど、外さなくて良いからね。私が何とかする。それとまずはカイ君の検査。その後でちょっと行くところがあるから」
白ローブにこれから何をするか、2人に言ったところでちょうどカイ達が検査をする番になった。
「すみませんが。身分を確認できる物を見せてもらって良いですか?」
「あぁ、これでどうだ?」
検査をしていたいのは、初老の兵士で手慣れている感じだった。
兵士に言われニコラ、リカ、アンネが冒険者カードを見せ、ミーチェが冒険者カードと同じ大きさの何かを見せる。
「残りの3人はどうしました?何か身分を証明できる物は?」
「ちょっと良いかな?」
そう声をかける白ローブは馬車を下りて行く。そして、馬車の裏でその兵士と話し出す。中にいた全員は聞き耳を立てる。
「私のこと忘れちゃった?ルーさん」
「お、おめぇは!?生きてたのか?!」
「ちょっと嵌められちゃってさ。ただ、嵌めて来たのも末端だったみたいで、誰が黒幕か分からなかったから正体を暴くために調査してたんだ。時間はかかったけど相手が油断してくれたおかげで捕まえられたよ。ちょっと前に兵士と騎士が数人捕まったでしょ?」
「ありゃお前の仕業ってことか。相変わらず無茶苦茶するな。…にしても生きててよかった。本当に良かった」
「ちょっと、泣くほど?」
しばらく鳴き声が聞こえていたが、また会話し始めた。
「すまんな、落ち着いた。それで?残り2人は何だ?場合によっては入れられねぇぞ」
「ここでは言えないかな。さっきまでの会話も全部中に聞かれてるから。ね?」
白ローブのそう言われた瞬間に全員の肩がピクッと動く。
「ただ問題無いよ。2人の安全は私が保証する」
「お前がそう言うんだ。まぁ良いぞ。特別に通してやる。ただし後日連れて来い。その様子だと色々と書かねぇといけねぇもんがあるんだろ」
「ありがとルーさん」
「それと近衛騎士団に招集があるって聞いたが、お前か?」
「良く分かってるじゃん」
「ったく。やりすぎんなよ」
「分かってますルー隊長」
「昔のことを出してくんな。おら、さっさと行け」
ルーと言われた人がそう言うと白ローブが戻って来た。戻ると同時に馬車が動き出す。
「盗み聞きは良くないぞー」
「何の事っすか?私達は何も聞いてないっすよ。ね?」
「私達も何も聞いてないぞ?楽しく全員で話してたぞ」
とぼける2人を置いて、白ローブはミカの目の前に座ると手をローブから出す。
「本当は?」
「へぇいいんひいへまひた」
白ローブはミカの頬を引っ張りながら聞く。するとミカは簡単に自白した。
「ちょっとミカ!?」
「聞こえる所で話してるのが悪い」
「白ローブさんはあの人とどうゆう関係なんですか?」
皆がバレないようにしながら、カイは話を逸らすために話しかける。
「まぁ良いや。あの人は私が騎士の時に上司だった人。1年だけだったけどね。ワケあって色々情報が回されてるんだよ」
白ローブの言葉に驚いていると、馬車が止まって、御者が目的地に着いたと言って来た。
馬車から下りて、しばらく歩いた7人はここで分かれることとなった。
「やっとここまで来たわね。一緒に乗ってたのがあなた達で良かったわ。ありがとう」
「そう言ってくれて嬉しいっす。私達も楽しい旅が出来たんで良かったっす」
「また会おう」
「かなり長い間ここにいる予定だから何か用があったらギルドで私達のこと聞いて」
そう言うとリカとアンネとニコラは離れて行った。
「私達も行くっすよ。カイ君の体を検査するんすよね?先輩どこ行くんすか?」
「それはもちろん私達行きつけの治療院だよ」
それだけ言って白ローブは歩き出す。カイとミカは動かないミーチェを見ると、少しばかり恐怖を感じているような顔で固まっていた。
「あ、あそこに行くんすか…。カイ君、死なないでくださいっすよ」
少しフラフラになりながらミーチェは白ローブの後について行く。あそこまで怖がると言うことに恐怖したカイはその場で固まり、行きたくなくなる。だが無慈悲にも向かうことになる。
「調べてもらわないといけないからね。行こう。大丈夫。私がずっとついてるから」
固まっているカイを引きずるようにしてミカも白ローブについて行く。
しばらく歩いて行くと、大きな建物に白ローブが入っていく。この建物に来る中でカイはずっと引きずられていたため周りから稀有な目で見られていたが、そんなことに反応できる精神状態じゃなかった。
白ローブに続いてミーチェとミカも建物に入っていく。
建物に入るとすぐに受付があり、白ローブに気づき話しかけてくる。
「お客様申し訳ありません。本日は予約が入ってまして…。急患や重体、重症のお客様以外はお断りさせていただいてるんです」
「そのお客様の名前ってナキャブ団長で合ってるよね?」
「もしかしてお客様が騎士団長の言われていた…」
「そうだよ。だから通して貰って良いかな?もう少ししたらナキャブ団長が来るから」
「わ、分かりました。今院長を呼んでまいります」
急ぎ受付の人は裏に走って行った。
裏に行くと、すぐに治療院の入り口が開かれた。
「遅れてすみません。もうついてましたか。予定よりも早かったですね」
「大変なのは分かってるから大丈夫ですよ」
「お久しぶりです、団長」
「ミーチェさん!来てたんですね。ってことは…」
「それは後にしましょう。それよりも」
ミーチェが視線をカイとミカに向ける。
「初めまして、カイと言います。今回ワケ合って亡命してきました」
「ミカです。私はカイについてきました」
「あなた達がカイ君とミカさんですか。私は近衛騎士団長を務めているナキャブです。これから良く会うことがあると思いますから、覚えていただけると嬉しいです」
挨拶がし終わると、タイミングよく奥から扉が開けられた。
「今日はどんな患者が来てんのー、キャブ」
少し髪をぼさぼさになりながら1人の女性が奥から出てくる。
女性がこちらを見ると、気づいたら白ローブに抱き着いていた。
「姉さん!帰って来たの!お帰り!」
「リング!力強いって!折れる折れる!」
とても強い力で抱き着いているのか、白ローブがとても苦しそうに声を上げる。声を聞いて、抱き着くのを止めはしないが力は緩める。
「もう10年も会って無いんだよ?仕方ないって」
「もうこっちにいるから安心して。それよりも先にこの子を見てあげてくれない?」
白ローブがカイのことを指さすと、リングはカイを見る。そして隣にいるミカを見て、白ローブから離れて話し出す。
「あなたが今回の患者ね。私はリング。ここで院長してるの。怪我したらいつでも来て。緊急の用事が無かったら絶対に診るから」
カイと握手した後で、リングはミカと握手をする。だが、リングはしばらくミカの手を離さなかった。
「えっと。どうしたんですか?」
「…手がすべすべで気持ちいいと思って。ごめん」
名残惜しそうにミカの手を離したリングは全員のことを見る。
「さて、世間話をしたいところだけど仕事をしないと。全員奥に来て」
リングに連れられ、全員奥に進んでいく。
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