第153話
「あなた達大変だったわね」
馬車に乗り込んできたカイ達に対して、先に乗っていた人が話しかけて来た。
「あいつらに絡まれるなんてな。運が悪かったよ。にしても、あんたらめっちゃ強いな!」
「初対面でなれなれしく話しかけない」
中にいた女性3人組が話しかけて来た。3人ともそれぞれくつろいでいた。
「急にごめんな。私達3人でパーティー組んでんだ。今までアベルトで活動してたんだがよ、帝都に行こうって話になってな」
「ちょっと!!急にごめんなさい。この子いつもこうなの」
今まで話しかけていた女性の頭を下げさせながら違う最初に話しかけて来た女性が謝る。
「良いじゃんか。で、あんた達はなんで帝都に向かってんだ!」
「だから…」
女性がまた止めようとした所でミーチェが話しかける。
「良いですよ。私達実は兵士でして、いつもは国境警備をしてるんです。私の親が帝都にいまして、久々の里帰りなんです。3人にはそれについて来て貰ったんです」
「へぇー。親思いで良いな!久々に会いにいきたいなぁ」
「そうなんですか。でも帝都の生活も楽しみでたまらないんじゃないですか?顔にそう書いてありますよ」
「あ、バレちゃった?」
女性とミーチェが笑っている中、カイ達は驚いて固まっており相手の女性達は顔に手を当てている。
「ごめんなさい。ニコラっていつもこうで…。あ、私はリカです。こっちの無口なのがアンネ」
「どうも」
2人とも同時に頭を下げた。カイ達もつられて頭を下げる。
「さっきまで答えてたあの子はミーチェって言って、この子はカイ君。こっちはミカ。私は…ちょっと名前を言えないから白ローブって呼んで」
2人とも白ローブのことに違和感を感じていたが、納得して頷いた。
「これからちょっとの間だけどよろしくお願いします。無いとは思いますけどモンスターが襲ってきたときは頼りにしてます」
「よろしく。襲われたときは私達も全力で応援するよ」
その後、2人きりで話していたミーチェとニコラが戻って来て7人で話しながら帝都に向かった。
その晩、より仲を深めようと言うことになり、就寝時間ギリギリまで全員で話すこととなった。
「私達はさ、昔村を助けてくれた冒険者達に憧れたんだ」
話すことが好きなのか、ニコラが率先して話してくる。それを4人は時々相槌を打つながら聞いている。
「その冒険者達が『守り人の牙』って言うパーティーでさ。たった2人だってのに、村を襲って来た何十ものモンスターを全て倒しちまったんだ。あの時の姿はわすれられねぇなー」
「そうね。あの2人に憧れて冒険者になろうって決めたのよね」
「うんうん」
3人が懐かしがっている中、カイもミカは知り合いが憧れの存在だと知り嬉しく思っていた。
「そしたら、数年前に冒険者止めたとか聞いてさ。あれはショックだったな」
ニコラはそう言うが、その顔は全く悲しさが無かった。
「あとに分かったんだがよ。騎士になったんだって!すげぇよな!マジやっぱりあの2人はすげぇんだよ!」
途中からカイ達に話しているということを忘れて暑くなっているニコラをリカとアンネが止める。その隙に白ローブはカイとミカに耳打ちする。
「近衛騎士のことは外部に発表されないの。発表されるのは団長と副団長だけ。他は言われないから言っちゃダメだよ」
2人が頷くと、その様子を見ていたニコラが不意に話しかけてくる。
「3人とも何してんだ?こそこそ話したりして」
「前にミーチェさんがその、『守り人の牙』のお2人を見たとか言ってたなぁ~と思って」
「ほ、本当!」
カイが逃げるように嘘を言うと、ニコラが目を輝かせながらミーチェの肩を掴む。ミーチェは助けてもらうためにリカとアンネを見るが、2人ともニコラと同じ目をしていた。
ミーチェはカイに『どうするの!!』と目線をカイは顔の前で手を合わせるばかり。
「み、見ただけっすよ。話したりしてないっすから詳しくは…」
「そ、そうだよな。今どうしてるんだろ。会って話してみたいなぁ~」
上手くかわすことが出来たミーチェは一息つくと、カイのことを睨む。カイは心の中で誠心誠意謝りながら話題を変えに行く。
「み、皆さん帝都に行ったらまずは何するんですか?」
「あ、えーと、私達はまずダンジョンに行ってみるかな。ずっとアベルトで探索してたからどのくらい違うのか知りたいと思って」
「あとは普通に依頼を受けるな。帝都でちょっと面白い依頼があるとか言われてな」
「面白い依頼?どんなのですか」
「それがよ、帝都に行ってからのお楽しみってはぐらかされちまって。ただ、帝都内で出来る依頼ってことしか。是非受けてみたらーって職員さんに言われてな」
「気になりますね…」
「まぁ職員さんが言うんだから変な依頼じゃないだろ。それに受けるも受けないも自由だ。内容をしっかり見てから受ければいい」
その言葉に聞いていたカイは大きく頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます