第154話


 帝都まで後約2日と言ったところで、馬車はある街に止まり7人は全員で宿を取りに向かう。

 宿が見つかり、自由行動をしている中、そろそろ分かれようとしたところでリカが話しかけてくる。


「ちょっと待って。あなた達に言い忘れてたわ。アベルトを出た時にあなた達に絡んできた冒険者、あいつらなんだけどあまりいい噂を聞かない奴らなのよ。裏のヤバイ組織とつながってるって。今度アベルトに行く時は気を付けて」

「それって、自分達は言ってるだけじゃないの?やっつける寸前にそんなこと言ってたけど…」

「違う。裏組織の人と話してたって。他の冒険者が言ってた。でもそれが本当かは不明」

「じゃあ、あながちあいつらが言ってたことは間違ってなかったってこと…」

「まぁとにかく、次アベルトに行く時は気を付けてくれ」


 言うことを言うと3人は街中に消えて行く。4人は移動しながらこれからどうするか考えながら先程のことを考える。


「ミーチェ、アベルトで活動してる裏組織って」

「聞いたこと無いっす。国境警備だからって言うのもあるっすけど、噂ですらそんな話し聞いてないっすね。招集かけられない限りアベルトは通らないっすから」

「でも、そんな組織があるって冒険者が言ってるなら兵士達も調べてるんじゃ…」

「ミカさんの言う通りっすね。兵士達もそこまで無能じゃないっす。たぶんあの人達が捕まったことで追い込みに行けると思うっす」

「それだと良いんですけどね。なんか王都にいた時と同じで面倒ことに巻き込まれる気がすごいします。アベルトにはまた行きたいと思ってたんで」


 ミカはカイの言葉に頷き、ミーチェは苦笑いしていた。カイは内心面倒なことが起きないように強く願った。




 翌朝、通常通りに帝都に向かうために馬車が進んでいく。ここ数日で仲良くなった7人はいつも通りに話しているとカイ、ミカ、白ローブ、アンネが突然静かになる。


「少なくとも30。たぶんもっと。進行方向左前方の森から」


 アンネがそう言うと、ミーチェとニコラ、リカが警戒しだす。カイはいつでも迎撃できるようにと腰に下げていた剣に触れ、ミカは袋から槍を取り出す。白ローブはモンスターが近づいてきことを言おうとしたが、アンネが代わりに行ってくれたため御者に馬車と止めているように言う。


「そう言えば、私達戦い方とかは言ってなかったな。こっちは私が前衛、リカが中衛、アンネが後衛だ。リカもアンネも基本的にほとんど魔法だ。それにこんだけ人数がいんなら、機動力が低い私は後衛の護衛をしてた方が良いかもな」


 止まった馬車から、しゃがめば子供1人は隠せるのではないかと思うくらい大きな盾をおろしながらニコラが、仲間の構成を言ってくる。カイ達も答えなければモンスターの迎撃で支障が出る可能性があるために話し出す。


「こっちはカイ君が前衛。ミーチェが中衛からサポート。ミカはどうする?」

「後衛する。多対1だと邪魔になっちゃうから」

「ミカが後衛に回るんだったら私は前衛に回る。サポートできるよね?」

「もちろんっす。任せてください」

「じゃあ、役職ごとでどう動くか決めるわよ」

「急ごう。あと少しで来る」


 カイと白ローブは急いでニコラの所に向かう。ニコラが大盾を持っていて動きずらいだろうと思ったからだ。


「私はさっき言ったように後衛の護衛をしてた方が良いかもな」

「うん。私達で前はどうにかするよ。カイ君、今回はいざとなったら魔法を使って。緊急時だけだからね」

「わかりました。でも俺が魔法を使えば早く倒せるかも…」

「自惚れないで。実際にそうかもしれない。けど、君の魔力器官は完治してないかもしれないんだから。今は剣で我慢して」


 白ローブにそう言われカイが何も言えなくなったところで、後衛組が近づいてくる。


「ニコラ、どうするの」

「私は2人の護衛をする。安心してバンバン魔法を撃ってくれ」

「はい。実は最初に私達で大きなのを撃ち込もうって話になったんです。この数なんで先に少なくした方が良いと思って」

「それでお願い。私達はそれが終わってから前に出るよ」

「中衛組は2人の後ろをついて行くっす。カイ君のサポートはリカさんがしてくれるっす」

「よろしく。基本的に君の死角から攻撃してこようとするのを闇で麻痺にさせるから」

「こちらこそよろしくお願いします」

「魔力器官が傷ついてるのよね?魔法を使わないようにサポートするから」

「それは頼もしいです。けど、しばらく魔法を使ってウズウズしてるんですよ」

「じゃあ、手が滑って使っちゃうかもしれないわね」

「もう来るよ。数は…50はいる。奥に3体魔力が多いのがいるからね。とにかく怪我しないようにね」


 カイとリカがクスリと笑ったところで白ローブが全員に聞こえるようにモンスターの数を言う。全員が警戒体勢に入り、ミカとアンネは魔法を撃つ準備に入る。


 すると、森からたくさんのゴブリンが急いで出てくる。ミカは槍を模した雷を作る。アンネは大きな炎の塊を作りいつでも飛ばせるようにしている。

 アンネが炎を飛ばした後で、ミカも雷槍を飛ばす。雷の方が先に着弾して、ゴブリン達は感電して死んでいく。炎の塊はゴブリンの死骸を超えて奥の方に着弾する。

 すると、森が燃えてしまうがゴブリンも多く倒していく。


 魔法が撃たれたことを確認した4人はゴブリンに向かって走り出す。


「あれだけ燃えてたら、森の中じゃ戦えないです!俺が氷で鎮火させましょうか?」

「…分かったけど、魔力がヤバイと思ったらすぐに鎮火を止めてよ」


 カイは白ローブに魔法を使って良い許可を貰いながら走っていく。

 先程の2人の攻撃のおかげで大量のゴブリンが倒され、感知で確認できる数は10に減っていた。森が燃えているおかげか、残ったのもカイ達が近づく前になくなっていく。

 カイ達が燃えている森の前に到着したころには、残っているのは最初に感知した時に魔力が多かった3体だけだった。

 そして、その3体は皮膚を火傷させながらも、森から出ようとカイ達に向かって一歩一歩近づいて来ていた。


「今から鎮火させますけど、あれってオーガですね。どうしますか?俺達が2体でも良いっすけど」

「私はそれでも良いわよ。1体も2体も私がすることは変わらないから」

「ここは私達に顔を立たせてよ。オーガ2体なんてすぐだよ」

「じゃあ早い者勝ちで!」


 焼けている木をうっとうしそうにしているオーガ達の横を通るようにして森に向かって氷を飛ばす。こんな燃えている状況で戦うのは不可能だからだ。


 カイは普通の氷を飛ばすことで鎮火させようとしたが、カイが飛ばしたのは赤い氷だった。


 驚きながらカイは再度氷を飛ばす。今度こそは普通の氷を出すと強く念じる。だが、飛んで行ったのは赤い氷だった。どういうことが起きているのか分からない状態で混乱したためか、カイは炎を飛ばしてみる。すると手からは青い炎が飛んで行き、普通の炎に当たると、普通の炎を飲み込み青い炎に変わっていく。森は熱く赤く燃えていたはずだというのに、徐々に凍える青い世界に変わる。


「カイ!どうなってるの?!」

「わ、分かりません。普通の氷が出せないんです」

「どう言うこと?!」


 カイと白ローブが話している間に森は青く変わってしまい、オーガは森の中で青い炎に飲み込まれて動かなくなっていた。


 目の前には森が青い炎で燃えている異様な状態が起きていた。

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