第149話
固まっている2人を置いて、白ローブとミーチェが話し始める。
「逃げて来たなら時間ありましたよね。話さなかったんですか?」
「…話した気になってたの。それに話そうとした時に邪魔が入って来たし」
やらかしてしまったと思い仮面に手を当てる白ローブ、それを見てより一層笑うミーチェ。門の前は混沌と化していた。
数分経って全員が元に戻る。未だにミーチェは腹を抱えているが、話せる状態にはなっていた。
「それで君は存在のしない罪で捕まったと。王国で何したの」
「あー、貴族に楯突いたからですかね?」
「それだけで国1つが敵になるってことは上級貴族かな?それとも」
「ちょっと待ちなさい」
思考の海の潜ろうとしたが白ローブが止める。
「とにかく王国に追われたところを3人で逃げて来たの。私がこの2人の身元は保証するなら問題ないでしょ?」
「そうっすね。先輩が保証人になるということなら問題ないです。念のためこっちで書類を書いてください」
白ローブはミーチェと一緒に中に入っていくためカイ達もついて行こうとしたが、止められる。
「2人はここにいて、書き終わったら呼ぶから。それまでゆっくりしててよ」
「良いんですか、先輩?中の方がゆっくりできると思いますけど」
「ちょっと中で話しがあるのよ」
「そう言うことなら分かりました。2人ともすぐ終わらせるようにするからね」
そう言って2人は中に入っていく。カイ達は言われたためおとなしくその場で待つ。
だが、このままでは暇なためカイはミカに話しかける。
「ここまで来たからもう戻れないけどさ、王都に心残りとかある?」
「私?うーん、近所の人達にもう会えないのは悲しいかな。でもこれで良かったとも思ってるよ。カイと一緒にいたら色々起きるじゃん。楽しいことも辛いこともあるけど、毎日が楽しくて私は嬉しいよ」
「そっか」
話し終わると2人とも眉間にしわが寄っていた。カイはフラージュと離れ離れにしてしまったことに罪悪感を抱いていた。そしてミカは…。
「話しって何すか?」
「話しって程ではないけどね、一応。2人の前で私の名前を呼ばないでくれてありがとね」
白ローブはミーチェから書類を受け取り慣れた手つきで書いて行く。自分の名前の部分をとばして。
「やっぱり隠してるんですか。帰ってくるならいいじゃないですか」
「いいの。私にも考えがあるんだから」
最後に自分の名前を書き、白ローブはミーチェに渡す。ミーチェは不備がないか見ると目を見開く。
「こ、これって」
「間違いじゃないよ。驚いた?さっきの仕返し」
「…ここ数年で一番驚きましたよ」
問題が無かったためミーチェは後で判子を押すために軽く笑いながら仕舞う。
「にしても、王都はどうでした?」
「魔法の文化は帝国の方が数段上だよ。でも昔栄えてただけあって、何か隠されてると思う。それが何かは分からなかったけど」
「そうっすか」
「それより、戻るの?近衛騎士団」
「…分からないです。先輩が戻って来たら戻るって団長に伝えましたけど、正直ここを離れるのは気が引けます」
「そうなんだ。ねぇ、一緒に行かない?皆の驚いた顔見たいでしょ。数日だったら問題ないと思うけど?」
「それは良いっすね。皆の驚いた顔を拝んでやりましょう。離れられるかちょっと話してきますね」
そう言ってミーチェはどこかに行ってしまった。
白ローブは1人カイ達の所に戻る。
「そろそろだね。楽しみ」
その一言が検問所の中で響くが誰も聞こえていなかった。
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