第148話
盗賊達と兵士を検問所の中に運んだカイ達は検問所を抜け、国境に向かって平野を歩いていた。
「あの、走らなくて良いですか?」
ここまで急いでいたのに、とたんにゆっくりになったことに戸惑っているカイが白ローブに聞く。すると白ローブは後ろ向きに歩きながら話し始める。
「大丈夫だよ。国境を警備してる兵士が問題だったけど、全員気絶させてきた大丈夫だし、王国からの追手もいないんだから。それにここまでずっと急ぎだったからね。ゆっくり行こうよ」
それを聞いてもまだ警戒が解けないでいるカイは横にいるミカを見る。するとミカは白ローブと同じ様にゆっくり散歩をするように歩いていた。
「ミカは凄く落ち着いてるね」
「そうかな?でも白ローブさんが大丈夫だって言うから大丈夫だと思って。カイもゆっくりしようよ。ここから帝都まではまだ長いって言ってたし」
ミカがそう言うが、カイの警戒は解けない。それを見たミカは一息吐いた後でカイに話しかける。
「体の調子はどう?体内で魔力を動かしたら違和感とかある?」
「全然ないよ。今は早く魔法を使いたくてウズウズしてるくらい。ねぇ使っちゃダメ?」
「ダメだよ。いくら治ったと思っても実際は治ってないかもなんだから」
「私もダメだと思うよ。ボロボロの状態で使ったらより酷くなるんでしょ?完治してるか確認できるまでは禁止」
項垂れるカイをつれて歩いていると前から先程と同じような壁が遠くの方に見えてくる。
「2人ともそろそろ帝国に入るよ。ここを超えたら絶対に追われることは無いから安心してね」
それを聞いたカイは警戒を解き、リラックスした様子で歩いて行く。
王都の時とは違い隠れることなくゆっくりと落ち着いて歩いて行くが、カイとミカは壁に近づいて行くにつれ緊張していた。白ローブから少しばかり笑うと、2人に声をかける。
「あそこには私の知り合いがいるから大丈夫だよ」
それでも落ち着かない2人。白ローブは諦めて壁まで歩いて行く。2人は白ローブに置いて行かれないように急いでついて行く。
「とりあえず、身分証を出せって言われるはずだけど気にしないで。そこは私がどうにかするから。それと注意なんだけど、2人とも帝都に着くまでは仮面を取らないようにしてね。ローブは大丈夫だけど、仮面1つでいると怪しいからローブは着とくことをおすすめするよ」
それからも白ローブがちょっとした注意事項を言っていると、門の前に到着した。
白ローブは門の前で待機していた女性の兵士に話しかける。
「王国から亡命ですか?身分証を見せてください」
「ごめんね。隊長さんをつれて来て貰って良いかな。白が来たって言ったら来るはずだから」
「あなた誰ですか?不審ですね。あなたのような怪しい方を帝国に入れることは出来ません。そして隊長は今不在にしております」
カイとミカが後ろで困ったようにしてると、白ローブは気にした様子は無く話し出す。
「冗談はやめて。ここの兵士だったら隊長がいないことを言うはずがないでしょ。それに
すると白ローブは女性の手を持ち上げる。兵士の手には小さな杖が隠されていた。
「先輩が相手だから少しいじっただけじゃないですか。そんなに怒らないで下さいよ」
「いつまでも遊び心を忘れない所は好きだけど、緊急時もふざけるところは直しなさいよ」
女兵は諦めたのか、使っていた魔法を解く。すると、先程とは髪の色も顔つきも変わる。
「2人ともごめんね。このバカは私の後輩のミーチェ。ここで隊長をしてるの」
「先輩の知り合いですよね。こんにちは、ミーチェです。先輩には昔お世話になったんだ。よろしくね」
握手を求めてきたため、2人とも握手する。
「それよりもどうしたんですか?緊急以外ではここによらないって言ってましたよね?」
「私は本格的に帰って来たから。この2人は王国から亡命。検査はしなくて大丈夫。私が保証するよ」
ミーチェはとても驚いた顔になる。
「先輩帰ってくるんですか!じゃあ今度パシフィズムに戻りますね!なんかおごってくださいね!」
「こうゆうときってあなたがおごるんじゃないの?」
いたずらっ子の様に笑うと、ミーチェはカイ達の方を見る。
「先輩が大丈夫って言ったけど、一応聞くね。2人はどうして逃げて来たの」
カイが「帝国の皇子を誘拐した疑惑をかけられたから」とは言えないでいると先にミカが答えた。
「私は隣の人の付き添いです」
ミーチェはひとしきりミカのことを見ると頷く。
「あなたは大丈夫そうだね。君はどうして?」
「えーと…」
カイが助けるように白ローブを見るが白ローブは知らん顔する。カイは諦めていうしかなかった。
「王国で帝国の皇子を誘拐した罪で捕まったんです。それで逃亡してきました」
ミーチェは最初何を言ってるのか分からないように固まっていた。それを見たカイは不安になるが、今度はカイが固まることになる。なんとミーチェは大声で笑い出したのだ。それは先程白ローブに対して笑った時とは比較にならないくらい楽しそうだった。カイからミカの顔は見えていないが、ミカは怒ってるようだった。
カイが困ったように白ローブを見ると、白ローブは仮面に手を当てていた。
少し待ってミーチェが過呼吸気味に答え始めた。
「君も大丈夫みたいだね。通って良いよ」
「え、良いんですか?」
「いいのいいの。そもそも皇族の方が王国で誘拐されたなんて連絡来てないしね。それに」
そこまで言うと再度笑い出した。
我慢できなくなったミカが怒鳴り出す。
「何か面白いことありましたか!!」
「い、いや~。ここまで笑ったのは久々だよ」
息を整えたミーチェはカイのことを見て話し始めた。
「帝国に皇子はいないよ」
カイもミカも言葉の意味が理解できずに固まってしまった。
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