バザルド帝国編
1章 帝都までの道のり
第145話
王都を脱出してから1ヵ月が経った。
まずは王国の国境を超えるため移動している3人は、予定では今日超えることが出来ることになっていた。
そして運の良いことに今の天候は雨だった。体力は持っていかれるが、この雨のおかげで見つかりずらくなることに3人とも喜んだ。体力に関しては野宿だというのにとてもいい寝床があったため十分に回復されており、カイに関しては王都を出るときよりも調子が良くなっていた。
そんなカイだが、この1ヵ月ずっと魔法を使っていない。最近は治ってきたと思ったため2人の代わりに火起こしをしようしたらミカに怒られていた。もう大丈夫だと言っているが、白ローブにも念のため調べたほうが良いと言われ、使うことを禁止されていた。
移動中もちろんモンスターと戦うことがあるが、そんなときは早く移動をしたいため、どんなモンスターでも3人で戦うようにしていた。そのおかげで3人のコンビネーションが上達した。
ものすごく弱いホーンラビットやゴブリンなどは無視して進むようにしていた。そのためよく戦うのはウォーターベアーくらいだった。たまにオークとも戦うが、どちらも似たような体格なため同じ作戦で倒していた。
移動してる今も魔力感知で前方にウォーターベアーがいることを確認した。
「2人とも」
「分かってます」
「今回は私がサポートするね」
話し終わると白ローブとカイが顔を合わせ頷き合う。すると2人は同時にウォーターベアーに向かって走り出す。出来るだけ音を立てないように、お互いに少しずつ離れながらウォーターベアーに近づく。
勢いよく草むらから出た2人は、勢いをそのままに武器を構えながら近づく。
ウォーターベアーはカイの存在に気づきカイの方を向く。カイは慣れた足取りで向かって行く。ウォーターベアーはカイの頭を飛ばそうと、自慢の伸びた爪をカイの首目掛けて伸ばす。
それをしゃがんで避けたカイは、しゃがんだ勢いを利用してウォーターベアーの顔と同じ高さまで跳ぶ。今度はカイが頭を飛ばすために剣を振る。するとウォーターベアーは空いている手でカイの剣を受ける。カイは着地をすると、深追いはせずにウォーターベアーを通り過ぎる。
すると今まで様子見をしていた白ローブがタイミング良く交代でウォーターベアーに近づく。持っている槍で慣れた手つきで腹を切ると、カイと同じ様に通り過ぎる。
叫び声を上げながらウォーターベアーは振り向きカイと白ローブを交互に見る。カイと白ローブは武器を構えたまま動かない。来ないと理解したウォーターベアーは2人に向かって突進する。それでも2人は動かない。
突進している途中でウォーターベアーが突然震えだし地面に倒れる。
突進の勢いがあったため、地面を滑りながらカイと白ローブに近づいて行く。
丁度目の前で止まったため、2人は協力してウォーターベアーの頭を落とす。
「ナイスタイミング、ミカ」
「そうだね。止まる位置も考えて撃ったの?」
「それはさすがに無理だって。たまたまだよ」
2人に褒められて恥ずかしかったミカは全力で首と手を横に振る。それを見たカイは嬉しそうに頬を緩めながらウォーターベアーを回収するために近づこうとする。
「私が回収するよ。袋貸して!」
「これくらいするって。いつも色々任せちゃってるから」
「でも今は魔力を消費しない方が良いでしょ」
「これくらいだったら大丈夫だって…」
言い合いをしながら離れて行く2人を見て白ローブは聞こえないように笑い呟く。
「頼れる仲間が出来て良かった」
「何か言ったー?」
「何も言ってないよ。言い合いするなら私が回収しようかー?」
離れた場所にいる2人に駆け足で近づいて行く白ローブはとても嬉しそうだった。
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