6章 閑話 カイが去った王都は
(あ、ありえません。あ、あの子はこんなこと…)
今朝、久々に発行された号外を見ている1人の教師が見出しを見て酷く動揺している。
この教師の名はウィーク。仲の良い友人や生徒からは「教師の鏡」「授業は分かりやすいし、親身に話を聞いてくれる良い先生」と言われているが、とても気が弱いのが玉に瑕だった。
そんな彼は1年くらい前に、腕を買われのか学園に入学したばかりの1年生の初めてのダンジョン探索に同行した。
そのダンジョン探索とは、カイが初めてローブ男と遭遇した時のダンジョン探索で、この教師こそがその時の引率をした教員だった。
(『大罪人 カイ=クノス 兵士を負傷させ逃亡』カ、カイ=クノスってカイ君ですよね!?カ、カイ君が犯罪を起こして逃亡?!彼はそんなことをする生徒では…)
ウィーク自身、結構長く教師をしてきた。そんな中でカイの様に学友を守るために殿を務めたりする生徒は見たことが無かった。その上、魔法を使えないはずなのにオークファイターを1人で倒したのだ。印象に残らないわけがない。そして、自分達が敵の魔法のせいで危険になった時には身を挺して守ってくれた。そのことにウィークはとても強い恩を感じていた。
そのため、学園に報告したオークファイターのことや、ローブ男のことを1ヵ月に5回は副学園長に聞きに行っていた。ここ8ヵ月は煙たがられている態度を取られていたが、それでも粘り強く聞きに行っていた。
中々情報を得られずいたため独自に情報を集めようとした所、このような号外が出て、今ウィークは困惑でいっぱいな顔をしており、号外を持っている手は震えており握りしめられている。
振るえる中、号外を読み進める。
『昨日、罪人カイ=クノスを検問所にて確保。数日後に処刑をすることが決定していたが、同日深夜 罪人カイの協力者が城の侵入。大量の負傷者を出しながら逃亡。なお、王都内に罪人とその協力者は怪我を負っているためまだ王都に潜伏していると思われる。見つけ次第通報する様に…』
まだまだ、書かれていたが教師はここまでしか見れなかった。
「あ、ありえません。こ、こんなの間違いだ!彼はそんなことする生徒じゃない!」
ウィークは目の前にあった机をドンッ!と力強く叩く。そして、持っていた号外にまた張り付くように見る。
「そ、そうだ。ざ、罪状は?」
最初は流し読みで呼んでいく。だがどこにも罪状について書かれた部分が無い。次はじっくり読んでいく。だがそれでも見つけられなかったためビリビリに破り捨てる。
「こ、こんなのでたらめだ!ありえない!」
再度机を叩くと、今度は机が真ん中で折れる。机が壊れる音がしているがウィークは気にせずに力なく椅子に座る。
(罪状が無いのはおかしすぎる。これは急いで調べないと…。それに早くカイ君を早く助けないと。さっきの記事が本当なら彼は今怪我をしてるはずです。治せるように医療道具を医務室に貰いに行きましょう。その後で急いで探しましょう)
先程は力なく椅子に座ったはずなのに素早く立ちあがり、壊れた机を放置したままウィークはまず医務室に向かい始めた。
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