第144話
寝ていたカイは軽く倦怠感を感じながら目を開ける。
まだ意識がもうろうとしており、ここがどこか理解が出来ない状態ながらも上半身を起き上がらせる。
「…イ、カ…イ、だ…いじょ…、大丈夫!?」
隣から声をかけられたためにようやく意識がはっきりして来る。カイが声がした方を見ると、そこにはミカと白ローブがいた。
「だ、大丈夫。ちょっとしんどいけど大丈夫だよ」
ミカに答えた後でカイは周りを見る。
そこは見慣れたテントの中でカイはどうしてここにいるのか思い出す。
「ここって俺が持ってたテントだよね。ってことは逃げられたってこと?」
「そうだよ。ついでに言うと追手は今の所いないよ」
驚いた顔になり、どうしてか聞こうとする前に白ローブが理由を話す。
「カイ君は知らないかもだけど、中には王家に反乱を起こしたいと思ってる集団があるんだよ。王国は私たちが検問所でしたことをその集団が起こしたと思ってるみたい。それに魔法が使えないカイ君が逃げられるわけないと思ってるみたいで、王都でしか捜索してないんだよ。一応各都市で探すように通達したみたいだけど、王都以外はあんまり本格的な捜索をしてないみたいだよ」
それを聞き、カイは安心する一方王国の警備体勢に不安に思う。それはミカも同じようで、先に聞いていたためか苦笑いする。
「あと今はどうか分からないけど、カイ君が凍らせた検問所だけどまだ凍ってたよ。壊すことも出来ないみたい」
「熱で溶けますよね?炎でも近づければいいはずじゃ…」
「なぜか分からないけど氷が赤かったんだよ。それにすごく熱かったんだよ。私もあれ砕くとき大変だったよ。熱いし硬いし。これが無かったら火傷してたよ」
白ローブはローブをヒラヒラさせる。
それを聞いたカイは赤い氷で凍らせてしまったのだと知り、やらかしたと感じる。
「温度は炎で、見た目は氷って不思議だったね。なんでああなったんだろ?」
今の発言から白ローブはカイが炎を使えることを知らないと分かったため、カイはどう答えれば良いのか悩んでしまう。
「…何か隠してるのは私もだから安心して。無理に聞かないから」
「ありがとうございます。でも大丈夫です。これが原因なんです」
軽い気持ちでカイが手から炎を出そうとすると、炎が出なかった。
ミカと白ローブは止めようと焦っていたようで、炎が出なかったことで安心する。
「カイ、しばらく魔法は使っちゃダメ!この前無理したんだから!」
「焦ったよ。この前無理して使ったから気絶したんだから。でも、魔法が使えなかったってことは深刻だね…」
白ローブは重い空気になる。ミカも叱ろうとしていたが、マズイと言う理由が分からず白ローブの方を見る。
「魔法が使えないってことは、体が無意識に魔力が魔法器官を通ることを止めてるってこと。道がズタズタすぎるから。それくらい今カイ君の魔力器官は傷ついてるってことだよ。たぶん治るのに月単位でかかるよ」
カイは驚いた顔になり、ミカは眉間に皺が寄る。
「まぁ、帝国だったら魔力器官が正常か調べることが出来るからそこで調べてもらおう。カイ君は帝国に着くまで絶対に魔法を使わないでね。無理に使おうと思えば魔法使えちゃうから気を付けてね」
「はい。治るまでは剣で戦うようにします」
白ローブからの忠告をカイは潔く聞き頷く。それを聞いたミカは安心したような顔になる。白ローブも顔は見えないが安心しているようだった。
「じゃあ、カイ君が起きたことだし、明日からどうやって帝国に行くか説明するね」
白ローブは自分が持ってる袋から地図を取り出し2人に説明し始める。
「…帝国出るまではこれで野営するとして、人目がつかないように行かないといけないからモンスターともそれなりに戦うからね。2人とも楽しみにしててね」
「分かった。…帝国の方がモンスター強いのかな?やっぱり国が違えば、全部が全部違うのかな?楽しみだな~」
カイは楽しみしているミカを見て自分もワクワクする一方、ミカとフラージュを離れ離れにさせるきっかけを作ったことに罪悪感を強く感じていた。
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