第141話


 袋から槍を取り出し急いで構える。それを見たことで団長の怒声が響き渡る。


「その仮面!あいつの仲間だな!お前達こいつらも捕まえろ!」


 そう叫ぶが兵士達は誰も来ない。誰も来ないことに不審に思った団長は振り返る。すると、検問所の方に来ようとしている全ての兵士が白ローブの手でやられている最中だった。


「こ、こうなっては…」


 団長は苦痛な表情を浮かべながら剣を抜く。


「私の剣の錆にしてやる!!」


 剣を抜いた団長はミカに向かって一直線に走る。ミカは白ローブの真似をしてその場から動かない。

 そして同じように槍を振るが、白ローブと違い首を落とすことは出来なかった。

 ただ、団長は槍を不完全に受け止めたため、頬に切り傷が出来、剣は半分に綺麗に折れてしまった。

 折れてしまった剣を呆然と見ている団長を、ミカは石突の方で突きをして吹き飛ばす。


 飛んで行った団長が民家の壁にぶつかると同時に、カイが検問所を凍らせた。

 ミカは急いでカイの下に向かう。たくさんいた兵士を全て倒し終わったため白ローブもカイの所に向かう。

 すると、炎を凍らせるために四つん這いになっていたカイがうつ伏せに倒れる。


「魔力は残ってる?!」

「待って。そんなに急かさないで」


 魔力感知を使えば分かることだったが、ミカは焦りすぎてそのことを忘れていた。

 白ローブは焦るミカの肩に手を置き落ち着かせる。


「落ち着きなさい。魔力感知使えば分かるでしょ」

「あ、…しっかり残ってるけど、ほとんど無い」

「たぶん魔力器官はボロボロになってると思うから、しばらく魔法を使わせないように見てて」

「分かってる」

「よし、じゃあこの真っ赤な氷を壊していきたいけど…」


 カイの魔力の性質のせいなのか、今検問所は赤い氷で包まれており温度は炎が燃えている時と変わらない物になっていた。

 そして、遠くから鎧の関節部が干渉するガシャガシャという音がたくさん近づいてくる。


「私が倒してくるからミカは急いで氷を砕いて」

「…待って。突きの速度は私の方が遅いから私が兵士達と戦う」


 地面に置いていた槍を掴んで民家の方に行き槍を構える。白ローブはそれを後ろから見てため息をつく。


「分かったけど、こっちに魔法を飛ばさせないように気を付けてね」

「分かってるって」


 ミカの返事を聞き、白ローブもおいていた槍を拾い、急いで氷を砕いていく。




 ミカは槍を構えたまま、息を大きく吐く。

 前から先程よりも多い兵士達が走ってくる。一番前にいる隊長格だと思われる女が大声でミカに話しかけて来た。


「そこで何をしているの!兵士なら検問所の様子を教えなさい!」


 ミカは返答はせずに後ろにいる兵士に向かって雷を飛ばす。

 後ろから倒れた音がしたため、隊長は振り向く。

 次の瞬間、ミカのことをものすごい形相で睨む。


「全員、目の前の敵を打ち倒しなさい!」


 隊長の合図を皮切りに兵士達がミカに向かって突進し始める。

 ミカは手当たり次第に兵士に向かって雷を撃って良く。

 兵士はバンバン倒されていく。兵士によっては倒れている仲間を踏み台にしてミカに突進を仕掛ける。


「魔法部隊、撃てぇぇえ!!」


 先程の隊長の声が響くと、魔法の詠唱がいくつも聞こえ、たくさんの魔法が飛んでくる。その中には矢も紛れていた。

 ミカが大きく後ろに跳ぶと、辺りに砂埃が舞う。


「風の魔法を使える者は急いで吹き飛ばしなさい!」


 先程白ローブと戦った兵士よりは統率が取れているのか、兵士達が素早く動く。

 だが、兵士達が砂埃をはらす前にミカが飛び出した。

 予想外の行動に兵士達の動きが止まる。

 ミカは近くにいた兵士から槍で殴りどんどん無力化させていく。


「何をしてるの!応戦しなさい!」


 隊長に言われたことで、兵士達は急いで斬りかかる。ミカは全ての敵を突きで素早く倒していく。時々、同時に攻撃して来ることがあったため、回し蹴りも使い倒していく。


「終わったよ。もう通れる」


 兵士の相手をしていると、後ろから白ローブが大声で伝えてくる。

 ミカは雷で槍を作ってから、白ローブのいる方に大きく跳ぶ。跳んでいる途中で雷の槍を兵士達に向かって投げる。投げた槍は兵士達に当たらず、兵士達の目の前に落ち、砂埃が舞う。


「急いで風で吹き飛ばしなさい!逃げられるわよ!」


 まだ倒れていない風の魔法を使える兵士達が砂埃をはらすと、そこにはもうミカの姿は無かった。


「検問所に向かったはずよ!追いかけなさい!」


 負傷していない兵士達は検問所に向かって走り始めた。




 雷の槍を投げたミカは急いで白ローブと合流する。


「カイは?」

「寝たまま。誰も近くにいないことは確認済み」


 走っていた2人はカイの下にたどり着く。

 ミカが検問所を見ると、ちょうど3人が横一直線に並んで歩いてもあたらないくらいの大きさだった。


「見てないで急ぐよ」


 視線をカイの方に戻すと、白ローブがカイのことを背負っていた。


 2人が王都を出ようとすると、兵士達が走ってくる音が聞こえる。


「ねぇ、少しやらないといけないことあるから近くの森まで行ったら2人で向かって」

「やることってあの魔力?」

「そう。あんなに膨大な魔力を溜めとくこと基本無いから。何に使う予定か調べてくる」

「分かった。カイが歩けるようになったら急ぎめに向かう。でも早く合流してね?王国でたらどこ行けばいいか分からないから」

「人に聞けば帝都くらい行けるって」


 話していたら既に2人は検問所を走り抜けていた。

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