第140話


「急げー!急いで鎮火させろ!」


 燃え盛る検問所を見て、騎士団長が急ぎ鎮火させようとしている。だが、いくら水や氷を飛ばしても消える気配はない。


「何をやってる!急げ!さっさと消さんか!」


 兵士達はせわしなく動いているが、全く消えない。消えないどころか、余計に燃え広がっている。


「そんなに叫ばなくても皆消そうと頑張ってるじゃん」

「うるさいぞ!お前もさっさと消さんか!」


 団長が怒鳴りながら振り返ると、そこには白ローブがいた。白ローブは団長が振り返ってからゆっくりと槍を取り出す。


「お前、何をしとる。さっさと火を消さんか!」

「火をつけた人が消すわけないでしょ?」

「…あいつを捕まえろぉぉぉおお!」


 抜いた槍を向けるとようやく団長も剣を抜く。そして、団長に言われ、鎮火作業を行っていない兵士達が白ローブに向かって飛びかかる。

 相手は魔法で攻撃してこなかったため白ローブは槍で薙ぎ払いをし飛ばす。飛ばされた兵士は後ろにいた兵士を巻き込んでより飛んでいく。飛んで行った先には未だに炎上している検問所があった。兵士達はその検問所の中に入っていく。

 それを見た兵士達は力の差を感じ足を止める。


「団長さんは捕まえろって言ってたけどいいの?」

「う、うわぁぁぁああああああああああああああ」


 1人の兵士が悲鳴を上げながら白ローブに突進する。より恐怖を与え注目を得るために白ローブはそこから動かない。

 突進をしていた兵士が白ローブのことを手に持っている剣で切ろうとする。すると、兵士は白ローブを通り過ぎる。走る速度はどんどんゆっくりとなっていく。団長を含め、兵士達全員が不気味に感じた。そして兵士は止まると、その場で膝から崩れ落ち頭が落ちた。

 兵士達は何が起きたのか理解が出来なかった。


「もう1回だけ言うけど。早く捕まえなくていいの?」


 皆が恐怖で白ローブから目が離せなくなっていた。それは検問所を鎮火している者達もだった。




 騒ぎが起きたことを確認したカイとミカは路地裏から顔だけ出す。

 2人は検問所が大炎上していることに驚いた。


「…通れなくない?あれも作戦の内…?」

「…えーと、私は聞いてない」


 2人はこれからどうするか考えていると、白ローブが現れて槍を取り出した。


「戦って注目を集めると思うからその隙に抜けよ」

「待って。ローブと仮面は使おう。俺は良いけど、ミカはバレたらマズイ」


 カイが懐から出した袋からミカはローブと仮面を2つずつ出す。そして2人とも急いで着替える。


「あの炎は全部俺が凍らせるよ。それを槍で砕いて」

「待ってよ。魔法が使える体じゃないでしょ」


 今の状態でカイが魔法を使ってしまえば、魔力器官を傷つけることになる。それも今の検問所は大炎上中だ。これを全て凍らせるとなれば魔力器官は大きく傷つく。下手したら魔力を全て使うかもしれない。


「大丈夫。あれくらいなら残ってる魔力でも凍らせられる」

「でも…」

「今は時間が無い。検問所が燃えてるんだから兵士達が集まって来てるはず。一番早いのはこれしかないよ」


 ミカはカイに無理して欲しくないため渋る。だが、今はゆっくりしてる場合ではない。


「俺は絶対にやるから」


 そう言ってカイはミカから離れて検問所に向かおうとする。だが足に力が入らずフラフラになり、3歩目で倒れてしまう。それでもカイは起き上がり検問所に向かおうとする。再度倒れそうになったところでミカが支える。


「分かったよ…。けど、それ以外しちゃダメだよ。それに凍らせるのは全部じゃなくても良いからね」

「分かった」


 そのころ、白ローブが1人の兵士の首を斬り落としていた。


「…ミカはあれできる?」

「さすがに無理だよ。あんな速度で振れないよ」

「結局何者なんだろ白ローブさん」

「それは後にしよ。今は早く逃げないと」


 2人はゆっくりバレないよう、物陰に隠れながらに検問所に近づく。

 そして、最後の隠れられる物陰の所まで来た。

 その間白ローブは動かずにどんどん兵士を倒している。

 兵士達は接近戦だけでなく、魔法も打ち込むが白ローブは全て避ける。途中焦りすぎた兵士が他の兵士に魔法を当てるなどが起きていた。そこから白ローブは魔法を避けるのではなく、兵士を壁にして戦い始めた。結果魔法を撃っていた兵士達も近接戦をしなければいけなくなり、前に出始めていた。そのためカイ達の方が手薄になっていた。


「ここからは一気に行こう。走れそう?」

「…ごめん。走るのはさすがにきつい」


 未だに検問所の前には兵士がいる。先程まで手が止まっていたが、鎮火させようと魔法を撃っている。そのためその兵士達をかいくぐる必要がある。


「カイはここにいて。兵士達は私が何とかする」


 そう言うと、ミカは高速移動を使い姿を消す。




「早く消すぞ!加勢に行くんだ!」

「そんなん分かってる!」

「話してないで急いで!」


 検問所の前では怒声が響いている。加勢に行けないことと鎮火できないことに皆がイラついていた。


 すると、突然ドサッと何かが崩れる音がする。だが作業をしている兵士達は気にせず魔法を撃ち続ける。

 テンポよく崩れる音が続く、そして1人の兵士が異変に気付く。


「おい!お前ら早く撃て…」


 兵士の言葉は詰まった。横を見ると、同僚が全員倒れていたのだ。そして、その近くにローブを着て、槍を持っている物がいた。


「お前なんな…」


 兵士が言い終わるよりも早くミカが近づき、気絶させる。そして兵士全員を倒したことを確認する。




 座って休んでいたカイの下に、兵士を全員倒し終わったミカが戻ってくる。


「終わったよ」

「分かった。急ごう」


 そう言ってカイは達上がろうとするが、力が入らない。ミカが手助けをしてようやく立ち上がる。


「ねぇ、本当に大丈夫なの…?絶対に魔力を使いきらないでね」

「…大丈夫」


 気になる間があったが、ミカはカイを信じることにした。


 白ローブが注意を引きつけてくれているおかげで、カイ達は安全に検問所に近づくことが出来た。

 カイはさっそく炎を凍らせようと手を近づける。


「お前達!何をしている!兵士では無いな!」


 いつまでも検問所が燃えていたため、団長が様子見をしに来てしまったのだ。


「私に任せて。炎だけに集中してて」


 ミカはカイを座らせて、槍を構えながら団長の方を向く。


「何をしていると聞いてるんだ!!」

「邪魔しないで、おじさん!」


 ミカが団長に向かって突進する。

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