第131話


 白ローブ、セレスと分かれたルナたちは城に向かって走る。アルドレッドが前を走っていて、ルナがそれについて行く形だ。途中でトレントに攻撃されるがアルドレッドは全て避け、ルナは避けきれなかった物を剣で切って進む。


 ずっと走って来た甲斐もあり、2人は真昼には森を出ることが出来た。


「ここまで来たらあと少しだ。いけるか?」

「大丈夫。急ご」


 森を出たところで、1度水を飲んでから再度走り始める。

 森の時同様にアルドレッドが前を走る。


 森から城まであと半分となった所でアルドレッドが足を止める。後ろにいるルナも止まる。


「どうしたの?早く行かないと」

「なぁあんた。夜通しでモンスター狩ってたなら、寝なくて良いのか?」


 アルドレッドの真後ろにいたルナは背中に隠れて見えていなかったが、アルドレッドの前に男がいた。ルナはそいつが誰か分からなかったが、アルドレッドは誰か分かる。森に向かってるときに会った男だ。


「いや~。森に忘れ物しちゃったんすよ」

「森に?そうか。なら今は行かない方が良いぞ。問題が起きてるからな」

「問題っすか?」

「あぁ、モンスターが結構大きな集落を作っちまってな。今報告しに行くところだ」


 アルドレッドの言葉を聞き、男の眉が一瞬ピクッと動く、だがあえてアルドレッドはそれを問いたださなかった。そのおかげで相手は油断した。


「そうっすか。集落っすか…。はぁ~、取り行くついでにモンスターを狩ってこようと思ったのになぁ…」

「そうなのか、残念だったな。もしかしてホーンラビットか?俺、ホーンラビットの足を揚げたのが好きなんだよ。ありゃ酒との相性が最高でな」

「そうなんすか!じゃあ俺がちょちょいとホーンラビットを狩ってきやすよ。なんつったても俺はホーンラビットキラーっすから!1日で最高100体は狩ったことがありやす。もうホーンラビットを狩るために生まれたと言っても過言でないっす!」

「お前面白いなぁ!!」


 知らない人とアルドレッドが楽しそうに世間話し始めたことにルナはイライラが溜まる。今は急いでモンスターのことを伝えなければいけない。こんなことをしてる暇はない。


「でもなぁー、モンスターうじゃうじゃいるぞ?1人で大丈夫か?」

「大丈夫っすよ!浅いところにしか行かないっすし、トレントなんて簡単に倒せるんすよ。ゴブリンの集落も俺1人でつぶしちゃうかも?」


 アルドレッドは今日1の声で大きさで笑う。ルナは我慢できなくアルドレッドに話しかけようとしたら、アルドレッドが大剣に手をかけた。


「なぁ、そろそろ吐いてくれよ。あの森で狩りをしてたならホーンラビットがいないこと知ってるはずだよな?」

「何言ってんすか?ホーンラビットたくさんいましたよ?」

「お前が狩りきったのか?ほぉーそりゃすごい。なら確認のためにお前が持ってる袋を見せてくれよ。その中にいるだろ?」

「いや~、もう売っちゃったっすよ」

「ならギルドと帝都中の店を調べるか。がした男が持って来たら印象に残ってるだろ」


 そこまで言ってアルドレッドは完璧に大剣を抜く。それを見て男は下を見る。


「上手く口を割らせることが出来ると思ったが、俺にはできなかったな。だが尋問官は優秀だからな。絶対に吐かせることが出来るぞ」


 アルドレッドが言い切ると、風が吹く。3人には草が揺れる音しか聞こえない。

 少しの沈黙の後、男が喋り出す。


「はぁ~。普段なら話しかけてこない騎士が話しかけて来たから嫌な予感がしたんすよ。ホント困っちゃうっすよ。あ、そうそう、この袋の中身が見たいんすよね?」


 男は袋を取り出し目の前で揺らす。ルナも警戒して剣を抜く。


「そんなに見たいなら見せてあげるっすよ。ほら!」


 男が袋をひっくり返すと、ドサと音を立てて物が落ちる。そしてあたり一面に異臭が漂う。男が落とした物、それは腐敗した人間だった。アルドレッドは嫌そうな顔し、ルナは空いてる手で鼻をつまむ。


「…遺体を入れとくなんて趣味が悪いな」

「さすがの俺でもそんな趣味は無いっすよ。これはっすよ!」


 男がそう言うと、遺体がフラフラしながらひとりでに立ちあがる。


「グールは俺がやる!あいつを逃がすな!」

「うん!」


 アルドレッド達と男には距離があったため、男は振り返って逃げ始める。アルドレッドもルナも追いかける。間にグールがいたが、アルドレッドが大剣で殴り飛ばす。その隙にルナが抜け、男を追いかける。




 飛ばしたグールは再度倒れて、先程と同じ様に立ち上がろうとする。アルドレッドは近づいて頭を斬り落とす。腐敗して脆くなっていたのか人間の首を斬るよりも簡単に斬れる。だがグールの動きは止まらず体を起こそうとする。


「さて、今回はどこに核があるんだ?早めに見つかってくれよ!」


 グールの一番簡単な倒し方は魔法で核を壊すことだ。炎ならば燃やしてすぐなのだが、アルドレッドの属性である緑は捕まえることに特化しているためグールの核をつぶすのには向いていない。そのためアルドレッドは核を見つけて剣でつぶすしかない。この核をつぶさない限りグールは動き続ける。

 そんなグールだが厄介な特徴がある。

 1つは先程言った核をつぶさない限り動き続けること。

 だが、問題はもう1つだった。グールの肉を食った物はグールになるのだ。

 2つ目の理由があるためアルドレッドは「ツタで捕まえて放置」と言うことが出来なくなっていた。


「早くあいつ捕まえないとな。これ以上グールを外に出されたらやばすぎる!」


 グールはこのような特徴のためなのか、ダンジョンでしか生息していない。そのグールを外に出した。それに対してアルドレッドはとても焦っていた。


 アルドレッドはグールの両腕と両足を斬り落とし動けなくする。すると胴体は動かなくなり、右足だけが動いている。

 アルドレッドが右足を切り付けると、何か引っかかる手ごたえがしたため切るのを止める。核をつぶすことが出来たのだ。


「よし。ってこれどうするんだよ…」

「アル君!何してるの?!早く城に戻るよ!」


 グールの残骸をどうしようか考えてると、森から出て来た白ローブとセレスが見えた。


「話しは後だ。2人ともこれを仕舞ってくれ!急いでルナを追いかけるぞ!」


 セレナと白ローブが手分けして急いでグールの残骸を片付けると、急いでルナを追いかけ始める。




 アルドレッドがグールと戦っている頃、ルナは必死に男を追いかけていた。


「クソッ!足止めされててほしかったすよ」


 いつまでもルナが追いかけてくるため、男は止まり振り返る。

 男が岩を飛ばしてきたため、ルナは水で応戦する。真正面からぶつかった魔法は空中で両方とも破裂する。


「しつこいっすよ!」

「そう思うなら捕まってよ!」


 男はルナのことを子供だと思い油断していた。そのため振り返り様に撃った魔法を応戦されると思ってなかった。


「あなたにはたくさん聞くことがあるんだから!」


 ルナは先程と変わらない威力で水の塊を飛ばす。男は急いで岩を作り防ぐ。


「俺は話すことなんてないっすよ!」

「もう!時間無いんだってば!」


 そう言ってルナは、再度水を撃つ。男も応戦するために岩を作る。

 するとルナは剣を男に向かって投げる。

 水と岩が破裂した瞬間に、男は視界に剣を捉えることが出来た。男は慌ててしゃがんで剣を避ける。


「なにすんすか!殺す気すか?!」

「捕まえるの!」


 敵わないと思った男は岩を地面に撃って砂埃を上げようとする。その隙に逃げようと思ったのだ。だが体が動かなかった。


「な、にした、ん、すか」

「うるさい!今急いでるの!」


 ルナは剣を投げた後で闇の塊に麻痺を付与して撃っていたのだ。


 ルナは剣を回収した後で男の足を持って、男を引きずりながらアルドレッドの所に走って戻る。

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