第130話
「にしてもこんなにモンスターがいんのはやっぱおかしいな」
最初のトレントと戦ってから既に6時間が経っており、トレントは既に3桁近く倒していて、ゴブリンは数えきれないほどになっていた。
予定では既に森の奥までついているはずだったが、戦闘が多かったためまだ浅いところにいる。そして今は休憩を挟んでいた。
「それにホーンラビットとスライムの2体をここまで1回も見てないのも気になるわ」
普段帝国の近くの森では、スライム、ホーンラビット、ゴブリン、トレントをよく見る。その上、1番数が少ないとされているトレントを2番目に多く討伐している。
「あんなにゴブリンがいたってことはたぶんスライムもホーンラビットもゴブリンに食べられてるよ。その増えたゴブリンをトレントは食して、増えてるってことじゃないかな?」
「基本的に奥に生息してるトレントがここまで来てるってことは、何かあったのは間違いないか」
「でも長い間調査してたでしょ?私たちがこのまま奥に言って調べても、他の騎士達と同じじゃないの?」
「そうね…」
「じゃーん!ここに最新の報告書がありまーす」
白ローブがテンションを高くして、袋から取り出したのは紙の束だった。
「1人分しかないから、みんなでシェアして読む?それとも誰かが代表して読む?」
「そうね…。警戒もしてた方が良いから私が読むわ。3人は周りを警戒してもらって良いかしら?」
それぞれ、セレスに返答してから周りを警戒しながら休憩する。セレスは急ぎながらもしっかりと報告書を読んでいく。
「読み終わったわ」
そうセレスが言ったのは、読み始めてから30分程経った頃だった。
「この報告書には、大まかに言うと森の奥でモンスターが集落を作ったから壊したって書いてあるわ。その時からゴブリンが多いみたい」
「じゃあ、集落をつぶし切れてないってことか?」
「しっかり魔力感知も使って、残党がいないか調べたそうよ。それでもモンスターの増加は減らせてないって書いてあるわ。それに調査を開始してからつぶした集落は1つじゃなくて、合計5つもあるわ」
それを聞いて3人は驚いた顔になる。
「ただどれも小規模の集落だったみたい。後はその時の状況とか、出来るだけ詳しく書いてあったわ。見る?」
セレスの問いに誰も「見る」と言わなかったため、白ローブに返す。
「ってことは、森の奥でゴブリンが集落作ってる可能性が高いってことか?」
「そうね。このまま進んだら確実にあると思うわ」
「小規模ってことは、率いてたのはファイター?メイジ?」
「その時々で違ったって書いてあったわ。でもボスはその2体みたいよ」
4人で話していると、アルドレッドを除く3人の魔力感知に反応があった。
「アル!」
セレスが何も言わなくても意図が分かったアルドレッドは大剣を抜き、3人が見ている方を見る。
「1つだよ。かなり弱ってる」
白ローブが状況を補足する。弱っていることもあり4人はその反応に気づかれないように近づく。
近づいて行くと、草むらが擦れる音がしてくる。その音は近づくたびに大きくなっていく。
そして、近づいた4人は隠れて、その存在を見る。
「!?セレス、あれって」
「そうね、ゴブリンファイターだわ」
4人の目には体中に傷を作り、足を引きずっているゴブリンファイターが写っていた。
セレスの顔は先程から変わっていないが、声は焦っていた。
「ファイターが1人でいるってことは集落がつぶれたって考えるのが、1番嬉しい考えだが…」
「そんなに甘くないよ。ちょっとこれはマズイね…」
白ローブがマズイと言う理由を3人とも気づく。
1つは、今まで何度も集落を作られているということは今もある可能性が高く、その統率者がゴブリンファイターより上位の存在だということ。
もう1つは、あのゴブリンファイターが傷ついているということは倒すことが出来るモンスター、もしくは同じ強さを持ったモンスターがいること。
「これは1回戻って報告した方が良いかしら…」
「…まずはあのゴブリンファイターを追いかけよう。集落があるかどうかを確かめてから戻った方が良いと思う」
白ローブの提案に全員が頷く。
音を殺して、3人がゴブリンファイターの後を追っていると、簡易だが木でできた策が見えた。
皆が暗い顔になる。
「…これは確実だな。俺たちだけじゃ対処できない。戻るぞ」
4人は最初は静かに、ゴブリンの集落から離れた瞬間に走って森を抜けるために移動を開始する。
森の中を走っていると、1つの魔力反応を感知する。
「弱ってるモンスターの魔力を感知したわ。たぶんそれがゴブリンファイターを傷つけたんだだと思うわ」
「どうする?私は倒した方が良いと思うけど、ゴブリンのことを早く伝えないと…」
4人で走りながら少しの間で考える。
「セレスと白ローブで倒してくれ。俺とルナが城に戻る」
「私は大丈夫だよ」
「分かったわ。倒したら急いで城に向かうわ」
そう言って4人は2人ずつ分かれた。
モンスターの所に向かって白ローブとセレスは走りながら、どう動くか確認する。
「私が前衛で、セレスさんが後衛で援護で良い?」
「分かったわ」
そこからモンスターまで2人とも話すことは無かった。
モンスターに近づいたことで、前を走っていた白ローブが遠目で標的を確認することが出来た。
「…オークがいるね」
「オーク!?」
白ローブが言いずらそうしたのと、セレスが驚いたのには訳がある。セレス達は冒険者を始める前からこの森のことを知っているが、オークがこの森に出るとは聞いたことが無い。それは白ローブも同様だった。
遠くてよく見えないが、オークは地面に顔を近づけて何かしていた。
「何あれ…」
「とにかく倒してくるね」
普段のオークでも白ローブは簡単に倒せるためボロボロで弱ったオークなど敵ではなかった。
足に力を入れて加速し、オークの背後に行き首を斬り落とす。
「…セレスさん、これ見て」
倒した白ローブはセレスを呼ぶ。呼ばれたセレスは走ったまま白ローブに近づく。すると、落としたオークの首の横には何か大きな肉の塊があった。被りついた後があったため、先程までオークが食べていたのだと容易に予想が出来た。
「…これが何の肉か分からないけど、この森に肉付きが良いモンスターっていたっけ?」
「奥に行けばいるけど、オークもゴブリンファイターも倒せるようなモンスターじゃないわ…」
「たぶん、これオークだよ」
セレスも薄々そうではないかと思ったため、納得してしまった。
「…急いで戻るよ」
白ローブはオークと何か分からない肉の塊を袋に仕舞って、セレスと一緒に城に向かって走り始めた。
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