第129話
4人はまずモンスターを一掃するために動き出した。
森の入り口だったためにいなかったが、少し進んだらたくさん出て来た。
「これは…多いわね…」
「私も多いとしか聞いてなかったからこれは予想外かな」
いち早く見つけたセレスと白ローブが進むのを止め、4人はモンスターにバレないよう草むらに隠れる。そして全員が目の前のゴブリンを見ている。その数は20体を超えている。だが4人が驚いてるのは違うところだった。
全てのゴブリンが、体に最低でも二ヵ所は枝が刺さっており、ピクリとも動いていなかった。
「これ、全部トレントが…?」
「だろうな。少なくとも4体はいるぞ。それで済めばいいが」
ルナがトレントが原因だと思い、アルドレッドが断言したのには理由がある。
全てのゴブリンが血を全く流していないのだ。それは刺さっている枝が血を吸っているからだ。このようなことをするのは帝都近郊にはトレントしかいなかった。
「ここはアル以外で行きましょう。アルはゴブリンの確認。生きてたら倒して」
「分かった。頼んだぞ」
アルドレッドは3人の後ろに下がる。
「ルナはトレント初めてよね?トレントの特徴は覚えてる?」
「しっかり調べて来たよ」
「じゃあ、さっそく倒しに行きましょう。まずは魔力感知を使ってみて」
ルナは分かったと言って、魔力感知を使う。するとゴブリンに刺さっている枝の中に魔力があり、その魔力は木につながっていて、その木も同じ様に内部に魔力があった。同じ様にゴブリンに刺さっている枝から探していると魔力を含んだ木が6本あり、1本だけ刺さっていないのに魔力を保持している木があった。
「魔力が中にある木は何本あった?」
「7本だと思う。3本と4本のグループに分かれてる。」
「ピッタリよ。食事が終わって元に戻した個体も見つけられてるわね」
「よし、じゃあ倒しに行こうか。トレントは根と分けちゃえばいいです。ルナ様は初めて戦うということなので私がお手本で1体倒しますね」
白ローブは話した後でセレスを見る。セレスが頷いたため白ローブは槍を袋から取り出し草むらから跳び出る。見晴らしの悪いこの場で一瞬でも目を離せば見失うくらいの速度で白ローブが走るため、ルナは白ローブのことを凝視する。
白ローブが接近すると3本の木が突然動き出し、白ローブに向かって枝を伸ばす。枝を伸ばした木をよく見ると、先程まで普通の木にしか見えなかったのだが、幹に顔のような模様が浮かぶ。
白ローブはスライディングして枝を全て避けると、またすぐにトレントに向かって走り出す。トレント達は違う枝を白ローブに向けて伸ばす。それを今度はジャンプして避けると、白ローブは真下にあるトレントの枝を足場にして、トレントに向かって一直線に跳んで行く。
ルナが瞬きをすると、白ローブはトレントの後ろに居り槍を振りきった姿で立っていた。白ローブが切ったと思われるトレントを見ると、幹の顔は消えていて倒れそうになっていた。白ローブは倒したトレントが地面に倒れないように支え、素早く音を立てないように地面に寝かせる。
「こんな感じです。トレントが振動に敏感なのを忘れないでくださいね。もし1回で切れなくても私達がフォローするので安心してください」
白ローブはトレントが伸ばしてくる枝を、跳んだりしゃがんだり、横にズレたりして避けながらルナに話しかける。全くトレントのことを見ていないが避けれているのは、それほど魔力感知が優れているという証拠だった。
「セレス、私も行く!」
そう言ってルナは剣を持って白ローブと同じ様に草むらから出て走り出す。
ルナは白ローブを攻撃している片方のトレントに向かって走り出す。それを見た白ローブはルナが攻撃する対象が分かったため、残りの1体に向かって近づこうと動き出す。
ルナが接近してきていることに気づいたトレントは標的をルナに変えて、枝を上から下ろしてつぶそうとする。ルナは走りながら横にズレてそれを避ける。ルナは振動で離れている4体が動き出さないために、枝の下の地面に水を生み出してから、枝を真っ二つに切る。
するとトレントが幹の部分を揺らす。そのためあたりには葉と葉が擦れる音がする。その姿は痛みを感じてるようだった。
トレントが悶えている間もルナは接近し続ける。そして接近したルナは幹と根を分断させる。
ルナは倒したトレントを倒れないように急いで支える。支えながら白ローブの方を見ると、既に倒し終わっており地面にトレントだった物を倒していた。
「ルナ、ゆっくり倒しましょう」
ルナのすぐ近くまで来ていたセレスが協力してトレントを地面に寝かせる。
「お見事でした、ルナ様」
褒められたルナは笑みをこぼす。そのころ、アルドレッドは2人が倒したことで落ちたゴブリンがしっかり死んでいるか確認していた。
「次は魔法で倒すわよ。デタラメに狙っても逆上するだけだから、しっかり弱点を狙うわよ。ただどこが弱点だって言っても面白くないでしょ?だからルナが弱点だと思う場所を魔法で貫通させて」
セレスに言われ、ルナは残っているトレントの内の1体を見る。だが、どこからどう見ても普通の木にしか見えない。木のことを詳しく知らない自分が見ただけで弱点を見つけるのは不可能だと思っていると、全てのゴブリンが死んでいることを確認し終えたアルドレッドが近づく。
「俺にはできないことをするんだ」
「アル君ヒントはダメだよ。これはルナ様が自分で気づくことに意味があるんだから」
アルドレッドに出来なくて自分に出来ることと言えば魔力感知しかないと思い、ルナは魔力感知を集中して使う。どこもおかしな所が見つからないと思っていたが、1ヵ所だけ魔力が多い所を見つけた。
「アルもルナに少し甘いわね…。ルナ、弱点を見つけたら、貫通させるのを忘れないで」
ルナは頷いてから、狙いをしっかり定める。魔力が集まってる所は小さいため、ルナは右手を前に出し左手で支えてブレないようにする。貫通力を重視して水の塊を生み出す。小さな塊で、よく見ると先がとがった形になっていた。ルナは生み出した水を自分が今出せる最速で発射させる。
木を何かが貫いた音は全くしなかったが、遠目で木をよく見てみるとしっかりと貫通していた。
ルナは魔力感知を使い、自分が貫通させたトレントを感知する。すると魔力が無くなっていた。
「倒せたよ!」
「しっかり魔力感知で魔力が多い所を見つけられたわね。けど…」
セレスがそこまで言うと、残りの3体のトレントが周りに枝を無作為に伸ばして暴れ始めた。
「撃ったのが地面に当たっちゃったわね」
セレスがそう言う終わるときには、トレントが動き出した時に走り始めた白ローブとアルドレッドが1体ずつトレントに近づいており、横に真っ二つにしていた。
「ルナ、これは力技だけどこうするのも有りだわ」
そう言ってセレスはトレントに向かって魔法を撃つ。セレスが飛ばした氷は、横の長さはトレントの横幅より少し大きくなっており、弧を描いた形になっていて当たる部分が鋭くなっていた。
魔法が当たったトレントは、白ローブとアルドレッドによって切られた時同様に、根と幹が分かれる。
今回は近くに誰も居らず、魔力感知でトレントが近くにいないことを確認できていたため、3体のトレントは支えずそのまま倒す。そのためあたり一面に轟音が響く。
「地面に当たったのはミスだったけど、それ以外はしっかりできてたわ」
「うん。次から気を付ける。3人ともありがとう」
「おう、まぁ初めてであそこまで出来てるんだ。次上手く出来るはずだ」
セレスが持っている袋にトレントと、倒されていたゴブリンを回収して4人は森の奥に向かって歩き出した。
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