第119話


この話には過激な部分がございます。


 **********


で印を前後に着けていますので、苦手な方はその部分を避けて読んでください。




「あの女を狙ったのはお前が近くにいたからだ」


 倒れたままドッペルトが話し始めた。ビューンは黙っている。


「あの女を攫えばお前を簡単に殺せると思ったんだ!」


 ドッペルトが言った後でカイはビューンの方を見る。ビューンは合ってる言わんばかりに頷く。カイの表情は真顔になり、2人を見下した目で見る。


「そうですか」


 そう言って剣を構えるカイを見て2人は焦り始める。


「言っただろ!何する気だ!?」

「ほ、ほひゃにもあひゅんだ」


 話せないながらもビューンが何か言おうとしているためカイは止まる。


「あ、ああいひゅのお気に入りってひゅうのが気に入らなかったんだ」


 こんなのはデタラメだったが、ビューンは何か言わなければ殺されると思い言ったのだ。だがそれが逆効果だった。本当はカイは顔の近くに剣を突き刺し「次にちょっかいをかけてきたら、容赦しませんから」と言うつもりだった。だが、己の欲求を満たすためにミカを攫おうとしたと言う理由に怒りが爆発した。


 **********






「…そんなくだらない理由でミカを攫おうとしたのか?もうお前達に聞くことは無い」


 そう言ってカイは目にもとまらぬ速さで先にビューンの右腕を斬り落とす。何が起きたか分からないビューンが悲鳴を上げる前にドッペルトの近くに行く。ドッペルトはビューンの腕が斬り落とされているのを見て「ヒッ!」と悲鳴を上げる。目の前にカイが来たことで這ってでも逃げようとするが、カイが背中を踏みつける。


「逃げるのか?貴族様が?」

「そ、そもそもヒースがお前を殺そうなどと言ったから…」


 カイはここまで聞いて、ビューンとは逆の左腕を斬り落とす。


「うがぁぁぁぁああああああああああ!!!」


 斬られた痛みでドッペルトが騒ぎ出す。カイがビューンの方を見ると、ビューンは限界が来たのか気絶していた。

 うるさいと思ったカイはドッペルトの背中を踏んでいた足をどかし、その足で壁に向かって蹴る。今までの中で一番強く蹴ったため、ドッペルトは衝撃に耐えきれず気絶した。

 2人が生きていることを確認したカイは、それぞれの腕の切り口を氷で覆い止血する。


 **********






 カイは無言で気絶した2人の襟元を掴み、引きずりながら3人の所に行く。


「過激な所を見せてすみません。この2人見ててもらって良いですか?」


 3人の返事も聞かずにカイはバーシィの方に向かう。その時のカイの視線は視線だけで相手を殺せるのではないか?と思うほど鋭かった。




 立ち上がったばかりのバーシィをカイが殴り飛ばす。

 急に頬に衝撃を感じ、次に体中に痛みを感じたバーシィは何が起きたか分からずその場で静止する。そこでようやく状況を理解する。何者かに顔を思い切り殴り飛ばされ、壁に衝突し、今地面に倒れていることに。


「切ってほしいなら俺が切ってあげるよ」


 バーシィがその言葉を理解すると同時に、バーシィは誰かに後頭部を掴まれ無理やり顔を上げられる。持ち上げている者の顔を見た瞬間、怒りをあらわにする。


「無能がぁぁぁぁああああ!私に触るなぁぁぁぁああああ!」


 カイは言われた通り手を離す。だがただでは離さない。

 バーシィの後頭部を掴む手により力を入れ、服の襟元も掴む。再度掴まれたことでバーシィは声を荒げようとしたが出来なかった。カイは掴むとすぐにミカから一番離れた壁の所までバーシィを投げる。


「グハッ!」


 受け身も何もすること無くぶつかったバーシィはその場で動かなくなる。

 カイがバーシィを投げたのを確認したミカはカイに近づきながら話しかける。


「私がやるって言ったのに」

「ごめん。でも色々言われたりしたから」

「む、無能がぁあ」


 弱々しく声を発したバーシィを2人が見る。その目には殺気込められていたが、カイは臆することなくバーシィに近づく。


「お前が俺を殺す計画を立てたの?」

「そうだ!お前を殺せば全てが上手く行く!お前がいなければミカさんは洗脳されることも、私を攻撃すると言う苦しい思いをすることは無かった!お前がいるから!」


 怒りに支配されたバーシィ気力だけで立ち上がり、カイに向かってフレイムキャノンを撃つ。バーシィは残り魔力のほとんどをこのフレイムキャノンに込めたため、うつ伏せに倒れる。魔法がどうなったかも見ないで歓喜の声を上げる。


「やっと、やっと殺せたぞ!」


 そう言って笑っているバーシィをカイは無視して、フレイムキャノンの対処をする。手に炎を纏わせ、フレイムキャノンに手を伸ばす。カイが炎の手でフレイムキャノンを叩く様に動かすと、フレイムキャノンは地面に落ちて熱風が地面を伝う。

 カイは魔法を解除させ、バーシィに接近する。バーシィは熱風が来たことに混乱している。もう寝返りをうつことも、首を動かすことも出来ず、カイの方に顔を向けられない。


「殺せてないけど?」


 カイは蹴ってバーシィを仰向けにさせる。


「何で!何故なんだ!」


 喚き散らすバーシィを全員が冷たい目で見る。ミカもそのような視線になっていることに気づいたのかバーシィはミカに向かって暴言を吐く。


「お前もお前だ!なぜ私の女にならない!大事にしてやろうとしたのに!なぜだ!女なんて私に媚びを売っていれば良いと言うのに!媚を売ることしかできないと言うのに!」


 それを聞いたミカとルナ、セレスは殺気を込めた目でバーシィのことを睨み、アルドレッドはゴミ以下の存在を見るような目になる。


「すべての人間は私の言うことを聞くべきなんだ!平民も!貴族も!王族も!全員私よりも下の存在だと言うのに!なぜ私に歯向かう!」


 カイはバーシィにゆっくり近づく。


「なぜだ!私は選ばれた者だと言うのに!」

「黙れ」


 そう言ってカイは容赦なく首を斬り落とそうとする。


「無能がぁぁぁぁぁあああああああああああ!!」


 剣を見たバーシィは叫びながら真っすぐカイのことを見る。






 金属と金属が激しくぶつかる音が聞こえる。

 殺されると思っていたバーシィはカイの剣を止めている者を見る。


「ミカさん!!!」


 カイの剣を止めたのはミカだった。


「やはりあなたは洗脳されてたんですね!私の女になるのがあなたの宿命なんです!さぁ、今まであなたを苦しめていた無能を殺してください!」


 色々言っているがカイもミカも無視したまま、武器を動かさない。


「何で止めたの」

「カイ、こんな奴をカイが殺す必要は無いよ」


 そう言ったミカは槍をどかす。


 **********






 ミカはどかした槍を戻すことなく、そのまま振った。その動きは速すぎてバーシィだけは見えなかった。


「え?」


 バーシィの間抜けな声が聞こえた。カイもこれには驚いた。


 ミカがバーシィの両足を斬り落としたのだ。


「あ、あぁぁ、あああぁぁぁぁあああああ!!」

「こんなのはの手で殺す必要は無いよ」


 それだけで意図が伝わったのかカイも剣を振る。

 今度は腕が無くなった。


「あぁぁあああああ!」


 バーシィは痛みで叫び声をあげる。


「いったん止血させよ」

「うん」


 カイは斬り落とした場所だけを凍らせる。


「こ、こんなことして、ゆ、許されるはずないぞ!」

「黙れって言ったよね?」


 何とか喋れるようになり、状況を理解したバーシィは2人を怒鳴る。うるさいと思ったカイは口を氷で塞ぐ。それでも騒ぐバーシィの首根っこをカイが掴み引きずる。


「ちょっと行ってきます」

「…俺も行こう」

「私も行くわ。詳しく知らないけど、それはしっかり処理した方が良いわ」

「…私も行く。1人だけ仲間外れは嫌だよ」


 そう言って、5人で移動し始める。カイとアルドレッドとセレスがそれぞれ3人を運びながら移動する。


 **********











 30分後、カイ達は5で地上に戻って来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る