第113話
バーシィ達も学園に向かわなくてはならない時間になったため、3人同時に部屋から出る。
「良い話を聞いちゃったな~」
部屋には誰もいないのにそんな声がすると、突然白ローブが現れる。
実は白ローブは取り巻きが出て行ったタイミングで部屋に入って来ていたのだ。
白ローブは何をするでもなくバーシィの部屋で待っていると突然部屋の扉が開けられた。
「こ、これでよかったでしょうか…?」
入って来たのは先程バーシィに命令されて出て行った取り巻きだった。
「うん。完璧だよ!ありがとうね」
「い、いえ。こ、これで彼女を解放してくれるんですよね!?」
そう言った取り巻きに白ローブは一瞬で後ろに周り縛り上げる。
「解放するけど、まだしないよ。今日の夜までには解放するから辛抱してね?その時に君も解放するから」
そう言って白ローブは布を取り巻きの口に当てて眠らせる。その取り巻きを白ローブは拘束して部屋から出る。
白ローブは昨日ビューンとドッペルトがミカを襲おうとしたことをカイに手を出すなと言われたからと言って別に許したわけではない。そのため白ローブなりに手を回したのだ。
まず白ローブは2人の身元を詮索した。そして2人とも学園で有名だったためすぐに誰か分かった。白ローブは次に、寮のビューンの部屋を遠くから隠れて見ていると出入りする者達がいたため、そのうちの1人を捕まえ脅して聞いた。その者は首に槍を当てるとペラペラと話し出したため、他のビューンの取り巻きとドッペルトの取り巻き達、バーシィの取り巻き、そして今日行う作戦の概要が簡単に分かった。その後白ローブは話した奴を気絶させて、そいつを担いだ状態で先程聞いた取り巻きの内の1人の所に向かう。取り巻き達は全員寮生だったため、それぞれの寮室に監禁することが出来た。
最後に白ローブは最後に取り巻き達の内で連絡を担当している者達を集めた。ビューンの連絡係は取り巻き仲間に彼女がいたため簡単に白ローブの言うことを聞いた。ドッペルトの取り巻きは地位欲しさに近づいたため、首元にナイフを当てるだけで言うことを聞いた。最後のビューンの連絡係だけは言うことを聞かなかったため、使わず気絶させ監禁した。
バーシィの連絡係には今日の朝の話し合いで取り巻き達に連絡がつかないと言わせ、ドッペルトの連絡係にはドッペルトに取り巻き達が殺されたと連絡させた。
そうすることでビューンとバーシィの取り巻き達も殺されたと錯覚させたのだ。
唯一3人が取り巻き達の死を確認しないか不安だったが、取り巻き達をそこまで大事だと思っていなかったのか確認することは無かった。
「早くに決着がつけば良いと思ってたけど、今日になるとは思わなかったな」
白ローブがこのような行動をしたのは、早くにカイに片付けてほしいと思ったからだった。
カイとミカは魔力感知を使いながら一緒に学園に向かっていた。今日から冒険者体験の授業があるため2人は楽しみにしていた。
そんな2人を追っている影があることに2人とも気づいている。
その反応は1つで白ローブの物だった。白ローブが屋根から路地裏に下りたため、カイ達もそこに向かう。
路地裏に着くと、白ローブが真っすぐこちらを見ていた。
「2人とも来てくれてありがとうね」
「それは良いんですけど、何かありました?」
「うん、連絡だけ。今日仕掛けてくるよ」
白ローブは誰がとは言わなかったが、2人はすぐに誰か分かった。
「後はお願いね?」
そう言って白ローブは消える。
白ローブが消えた後なんとも言えない空気になったが、カイとミカは学園に着き、冒険者体験を受ける教室に来ていた。その間のカイの顔はずっと眉間に皺が寄っていた。
「始めるぞー」
そう言ってアルドレッドが入ってきたため、生徒達は席に座る。アルドレッドに続いてセレスも入ってくる。
「初日だが、今日は急遽ダンジョンに入ることになった。この後数時間取るからその間に準備をしてくれ」
生徒達は驚くが、ダンジョンに入れることに歓喜する。
「最後に今回のダンジョン探索には俺ら以外に同行する者達がいるから紹介しておく。入ってこい」
そうアルドレッドが言うと、教室の扉が開かれ1人入ってくる。
これまでの間カイはずっと下を向いており、前を見ていなかったが周りの生徒が驚いた声を聞いて前を向く。
そこにはルナがいた。
「始めまして。帝国の学園に通っているルナです。しばらくの間、一緒に授業を受けることになりました。よろしくお願いします」
そう言ってルナはお辞儀をする。お辞儀をした後でカイとルナの方を見ると、笑顔になり口パクで「よろしくね」と言って来た。
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