第111話


 住人の証言と現場の状況を見て襲って来た5人が悪いのだが、念のためにとカイ達は3人で一緒に事情聴取を受けていた。ただ聞かれた内容はあの5人に襲われる思い当たりがあるかどうかだった。ミカとルナは5人の中で誰とも会ったことが無かったため、心当たりなんて微塵の無い。そしてカイはバイトのことを知っていた。


「たぶん俺が狙いだと思います」

「その根拠は?」

「あの中の内の1人を知ってますし、2人を逃がした時に2人には魔法が撃たれなかったんです。つまり俺が狙いなんだと思います。狙う理由は、たぶん平民なのに口答えをしたからだと思います」


 そう言うと兵士の顔は苦い物になる。


「分かった。とりあえずもう帰って大丈夫だ。協力感謝する」


 最後の感謝すると言っていたが、その言葉には感謝なんて物はちっとも感じられなかった。




 ルナとミカは次の目的地に着くまでの間に、3人で戦わずに兵士を呼んでほしいと頼んだ理由を聞く。


「前にも襲って来た人達がいたんだけど、倒して兵士を呼んだらいなくなってたんだよ」

「逃げられたってこと?」

「うん。ただ全員しっかり気絶させてから離れたんだよ。離れた時間は5分くらいだから意識が戻ることは無いはず。だから協力者が逃がしたんだと思う」 


 そうカイが言うと、ミカはその協力者の予想が出来たため厳しい顔になる。


「確証はないけど、俺とミカが追ってる奴らが刺客を送って来てるのかもしれない。本当は捕まえたいけど、口を割らせることが出来ても出来なくても俺だけじゃ上手く処理できないから兵士に渡すしかないんだ」


 そう言って苦笑いになるカイ。そしてルナは先程の言葉で「俺だけじゃ」と言う部分が引っかかり、前から疑ってたことを聞く。


「ねぇカイ達と戦った時に思ったんだけど、やっぱりカイ達がアル達の協力者なの?」


 ルナはアルドレッドよりも強い者と言うのを信じていなかったが、カイと戦い思った。もしかしたらカイがアルドレッドよりも強いのではないかと。そしてその者はアルドレッド達の協力者だと言うことは本人達から聞いていた。王都にアルドレッド達よりも強い者がゴロゴロいるとは思わなかったため、カイがその人だと思った。ただカイの口から確信を得たかったためここで切り出した。


「そうだよ。ルナ様」


 このことにはミカもルナも驚いた。ルナは安全上、王国に来てから自分が皇女と言うことは誰にも言っていない。同級生にも貴族などが集まるときでも学園にいるときと同じ態度でいてくれと言ってある。それなのにカイが自分の正体を知っていることに驚いた。だがすぐにアルドレッド達に聞いたのだと

 そしてミカはカイがルナのことを様付けで呼んだことに驚いた。


「さっきアルさん達と同じ立場の人達に頼み事されたんだよ」


 そう言われてルナは再度驚く。カイ達が白ローブとすでに会っていると言うことは知らなかったためだ。そしてミカは白ローブに頼まれたのだと分かり「あー」と声を出す。


「その人が様をつけるってことはルナはそう言う立場ってことでしょう?」

「はぁ~、そうだよ。たぶん予想は合ってるけど、カイ達が帝国に来た時に改めて自己紹介するね」


 笑顔で言うルナを見てカイもミカも分かったと一言言ってこの話は終わった。




 ルナとの観光が終わり、数日してカイとミカは学園に来ていた。今日から学園が再開するためだ。

 学園に来た瞬間に周りの者達は様々な視線を向ける。あの化け物たちに勝った正真正銘の化け物。勝ったことは嬉しいが、もう1人が無能ということが納得いかない。など色々な目線を向ける。

 そんな視線を向けるだけで誰も関わろうとしなかったが、怒りすぎて顔が真っ赤になった状態で関わってくる者がいた。


「おい無能。楽しんでるのも今の内にしとけ。俺が終わらせてやる」

「ミカさん、待っていてください。私があなたを助け出します」


 それはバーシィだった。ミカに話しかけた瞬間、先程までの怒りはどこに行ったのか、笑顔になり優しい目で見る。そしてミカの手を握ろうとする。そんなバーシィを見てミカは気持ち悪くて固まったが、自分に手を向けているのを見てカイの後ろに隠れる。


「…待っていてください。無能、お前には生きてきたことを後悔させてやる」


 最後にカイのことを睨んだ後でバーシィは立ち去った。


「大丈夫?」

「ちょっと大丈夫じゃない」


 そう言ったミカはとても震えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る