第107話
初日の個人戦が終わり、カイ達は医務室に集まっていた。今回は5人では無く、白ローブを含めた6人で。
「お初にお目にかかります。ラクダレスと申します」
「始めまして。あなたが情報屋のラクダレスね」
そう言ってラクダレスと白ローブが握手した。
その後、昼休憩の時のローブ男達との戦闘のことを話した。
「これからはたぶん相手の動きが活発になるはずだよ。皆気をつけてね」
白ローブがそう言うと、カイとミカ、アルドレッド、セレスが頷く。
話し合いが終わって4人が出て行く中、白ローブは医務室に残った。気になりはしたが、白ローブが2人で話したいと言われたため4人は渋々出て行った。
「お久しぶりです、~~~さん」
「久しぶりだね。最初にラクダレスの名前を聞いた時は驚いたよ」
「前に会ったのは10年以上も前ですからねぇ」
「そうだね。はい、これ私の方で情報を掴めたよ」
そう言って白ローブは1つの紙の束をラクダレスに渡す。ラクダレスはさっそく中身を見る。その紙には聖国の情報を王国に売っているの者の一覧だった。
「ありがとうございます。これで依頼を達成できそうです。ホント10年もかかると思いませんでした…」
「技術は低いくせに隠すのは上手いからね」
白ローブが思い出すように言うと、ラクダレスは苦しそうな悔しそうな顔をする。
「すみません。私がミスをしなければもっと早くにこれを手に入れられたというのに。それに私のせいで彼は…」
「それは言わない約束だよ。…あの人もいつでも死ぬ覚悟はしてたよ。あなたのせいじゃない」
「ですが…!」
「割り切れないのは分かるよ。でもいつまでも引きずってちゃダメだよ」
ラクダレスは言われてもなお悔しい思いをしているため手を力いっぱい握る。少しして力が弱まり椅子に深く座り込んで目を閉じる。
「私の中で彼は過去一番の友人です。初めて彼と話した時、王国の人間だとは信じられなかった。…あなたが作った料理を2人で酒を飲みながら食べて話す。あの最高のひと時が未だに忘れられない」
「…そうだね。楽しそうに話す君とあの人を見るのが私も好きだったよ」
いつの間にか椅子に座ってた白ローブがそう言うと、しばらく無言の状態が続いたが椅子から立ち上がった。
「これ以上思い出しても悲しいだけだよ。今は私たちのやるべきことをしないと」
「そうですね…。しばらく開けます。私はあなたから貰ったこれを渡しに行きます」
それを聞いた白ローブは医務室から出て行った。
「一番辛いのは彼女だというのに私は何してるんでしょうね…」
そう言った後ラクダレスは当分動けなかった。
対抗戦2日目となり、今日は2対2の団体戦だ。カイとミカは昨日の内に組むことを連絡していたため問題無かった。たが、他の王国の生徒は負けたことでピリピリしており、誰も組むことが出来ないでいた。メッサーは組みたい相手がいないのか係員に一言言ってカイ達の所に来た。3人で話しているとようやく組み分けが出来たのか係員が招集をかけた。
その後試合が始まった。
試合は昨日と同じような展開になっており、メッサーも仲間が早々にやられたせいで2対1になり負けてしまった。
前回よりも早くやられていく生徒達を見て観客達はどんどん士気が下がる。
最終戦になり、カイとミカの番が来た。最初に王国の生徒が入場することになっており、ミカが入場すると先程の空気が嘘の様に盛り上がる。「勝ってくれー」などの声が観客席から上がる。カイが隣を歩いているはずなのだが、観客にはカイが見えていないようだった。
試合相手はルナと昨日ミカと戦った男子生徒だった。昨日の時点では男子生徒は足を、ルナは腕を怪我していたが、遠目で見ても治っているようだった。
2人は舞台に上がって来たルナを見ると、ルナの目からは絶対に勝つという心意気が感じられた。だが、それでも2人は負けるつもりはなかった。
「ねぇカイ、私がルナの相手をしていい?」
「俺もあの男子生徒と近接戦したいと思ってた」
2人は口角を少し上げて笑い合うと戦闘体勢に入る。相手もどのような作戦で戦うかが決まったのか構える。
審判の開始の合図が出て、カイと男子生徒が前に出る。
「やっぱり邪魔するよね」
「私の相手してもらうね」
ルナがカイに向かって水を飛ばしていたが、ミカはそれを雷で撃ち落とした。舞台の中央あたりでカイ達がぶつかりあい、肉弾戦を始める。男子生徒が殴ると、カイはそれを受け止めカウンターを放つ。彼はそれを避けて再度攻撃する。そのようなやり取りをしている2人の周りで魔法が相殺し続けている。ルナがカイに向かって水を飛ばすと、ミカはそれを雷で落とす。ミカが雷で男子生徒を攻撃しようとすると、ルナが水でそれを受け止めて当たらないようにする。舞台はすぐさま水浸しになったが、カイ達の周りだけは濡れない様になっていた。
試合が始まってしばらく経ってだんだんと男子生徒の動きが悪くなっていく。途中までは避けていた男子生徒だが、時間が経てば経つほどカイが癖を理解して避けられないタイミングで攻撃する。相手はそれを受け止めるが、その一撃がとても重くどんどんダメージが溜まっていた。カイも相手の攻撃をくらってはいるが、それは万全の状態で受け止めたり、受け流したりしているためほとんどダメージが溜まっていなかった。
男子生徒は蹴りを放ってカイが離れた隙にルナの方に下がる。
カイは後ろに下がったのを確認した瞬間カイもミカの方に下がる。男子生徒は追ってくると思っていたため追ってこないことに安心した。ルナ何かあると思い、カイからミカに狙いを変えて、すぐさまミカに向かって水を飛ばす。ミカはルナからの攻撃を防ぐことは無く、男子生徒に向かって雷を飛ばす。男子生徒は雷に向かって岩を出して防ぐ。その岩は砕け地面に落ちるが男子生徒は防げたことに安心していた。その瞬間男子生徒の意識は途絶えた。一撃目の雷を防ぐことが出来たが、二撃目の雷は防ぐことが出来なかった。
ミカはラウラとの特訓で2つまでなら同時に発動することが出来るようになった。2つ発動すると真っすぐにしか飛ばすことが出来ないが、今回はそれで十分だった。
男子生徒を倒したのは良かったが、水の塊がミカに向かって飛んでいっている。ミカは持っている槍で防ごうとするが、間に合いそうに無い。皆が危ないと思ったが、ミカのすぐ近くまで来ていたカイが水の塊を拳で叩き落した。ルナはそれに驚いてしまい一瞬固まってしまうも、その隙にミカが雷を撃って気絶させた。
「最後ナイス」
審判の勝利宣言の後、ルナと男子生徒は担架で運ばれて行くのを見届けた後でミカが話しかける。
「ありがと。それよりも腕大丈夫なの?」
そう言ってミカがカイの右腕を持ち上げると、カイは一瞬痛そうな顔をしたが、すぐにいつも顔になる。だがそれを見落とすミカではない。
「すぐに医務室行こ!」
そう言って、怪我をしていない左腕を引っ張って退場する。
最後、閉会式で出場した生徒達が舞台に上がったが、お互いの国のナンバー1と2がいない状況だったため閉まらない終わりになってしまった。
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